経営理念やビジョンにもとづいて策定される経営計画は、企業の目標や方向性を定めるために必要なものです。中小企業庁の調査によると、多くの中小企業、小規模事業者が経営企画等を策定し、さまざまな効果を実感しています。
今回は、そもそも経営計画を策定したほうがよいのかという疑問に答えながら、経営計画を策定する流れや策定するポイントに至るまで詳しく解説します。経営計画を策定しようか迷っている経営者の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
1.経営計画は策定したほうがよい?
そもそも経営計画とは、経営理念・ビジョンにもとづく経営目標を達成するための行動計画です。計画に沿った企業活動が行えるようになるため、経営計画は大企業はもちろん中小企業も策定したほうがよいと言えます。
実際に、経営計画を策定している中小企業の数は少なくありません。
中小企業庁が公表しているデータによると、中規模企業の約7割、小規模事業者の約5割が経営計画等を策定しています。中小企業においても、経営計画を策定する必要性は高まっている状況です。
出典:中小企業庁「第3部 中小企業・小規模事業者と支援機関」
経営計画を策定することは、企業にさまざまな効果をもたらします。
中小企業庁が行った調査によると、経営計画の策定によって中小企業が得られた効果は主に下記の5つです。
- 経営方針と目標の明確化
- 自社が持つ強み・弱みの認識
- 販路開拓のきっかけ作り
- 資金繰りの状況把握
- 金融機関からの信用獲得
特に「経営方針と目標の明確化」「自社が持つ強み・弱みの認識」の2つは、どちらも約7割の企業が効果を得られたと回答していました。経営計画を策定することで、自社の現状を詳細に把握し、経営において目指すべき方向性を明確に定められるでしょう。
また、経営計画を策定したことがある中小企業は、経営計画を策定したことがない中小企業に比べて、売上高が増加しやすい傾向が見られます。業績アップが見込める点も、経営計画を策定することで得られる重要な効果の1つです。
経営計画の効果や企業にとってのメリットは、リンクページでより詳しく解説しています。
2.経営計画の策定するときの流れ
経営計画を策定・実行するときは、全体の流れを理解した上で進めましょう。
経営計画はいきなり策定できるわけではなく、会社の方針や現状を把握しておく必要があります。実行後のモニタリング体制を整えることも重要です。
以下では経営計画を策定するときの流れを解説します。
2-1.経営理念と経営基本方針を確認する
最初に、自社の経営理念と経営基本方針を確認します。経営理念・経営基本方針が明確に設定されていない場合や、内容が自社の現状に合っていない場合は、新しく設定しましょう。
経営理念とは、会社経営において基準となる考え方のことです。経営理念を作成する際は、経営者自身が考える「将来実現したい会社の理想像」を分かりやすくまとめて、明文化します。経営理念は会社全体で共有するものであるため、従業員も実現に向けて努力できる内容で作成しましょう。
経営理念の完成後に、経営基本方針を設定します。
経営基本方針とは、経営理念を実現するための姿勢や経営ビジョンを示すものです。会社はどのような立ち位置を目指すか、商品・サービス提供を通してどのような価値を顧客に提供するかなど、経営の目的を定めます。経営基本方針は企業活動の方向性や目標設定にかかわるため、具体的に設定することが重要です。
2-2.経営計画を立てる
経営理念と経営基本方針の実現を目標として、経営計画を立てます。経営計画を立てる主な手順は下記の3ステップです。
(1)分析する
自社の内外を分析し、現状を詳細に把握します。分析で行う内容は、自社について分析する「内部環境分析」と、自社を取り巻く外部環境について分析する「外部環境分析」の2つです。
(2)経営戦略を立てる
分析結果を整理し、経営戦略を組み立てます。分析結果の整理では、SWOT分析のように分析結果の俯瞰や情報の掛け合わせがしやすいフレームワークを用いましょう。自社の強みを伸ばしたり、弱みの改善につなげたりできる経営戦略を立てることが重要です。
(3)数値目標・行動方針を決める
組み立てた経営戦略にもとづき、具体的な数値目標・行動方針を決めます。経営戦略に沿った事業活動では、どのくらいの期間でどのくらいの数値を達成すればよいかを明確にしましょう。
経営計画の立て方については、リンクページでより詳しく解説しています。
2-3.計画のモニタリングを行う
経営計画を立てた後は、計画を実行しながらモニタリングを行います。
計画のモニタリングは単なる確認だけで終わらせず、改善へとつなげることが大切です。経営計画を成功させるためには、意識的にPDCAサイクルを回しましょう。
計画のモニタリングでは、設定した数値目標・行動方針に沿って経営計画が進行しているかを見ます。進捗状況を把握して、期限までに目標達成ができるか、人材配置や労働体制に問題が生じていないかを確認してください。
数値目標・行動方針と進捗状況に大幅なズレがある場合は、経営計画に課題が存在しています。課題を認識できた場合は、何が原因であるかを分析して対処し、計画の見直しを図りましょう。
計画のモニタリングとPDCAサイクルを回すことが、経営計画を成功させるためのコツです。
3.経営計画を策定する際のポイント
経営計画は策定するだけで満足せず、目標を達成するための実行を伴わなければなりません。従業員の評価制度や計画の進捗管理など、実行時に役立つ施策を導入して、経営計画を成功へと導きましょう。
以下では、経営計画を策定・実行した後に、企業の業績アップにつなげるためのポイントを解説します。
3-1.従業員の評価制度に反映させる
経営計画は全社的な取り組みで進める必要があるため、経営計画を従業員の評価制度に反映させることが重要です。
従業員の評価制度に反映させる際は、経営計画の成功に必要な業務を従業員の目標として設定し、従業員個人の評価項目を作成します。評価項目の各項目は点数配分を行い、会社が重視したい項目には点数を高く設定しましょう。
設定された目標を達成すると点数が加算され、評価や報酬を得られる制度を作ることで、従業員も高いモチベーションで経営計画にかかわりを持てます。
3-2.進捗管理を頻繁に行う
経営計画の実行中は進捗管理を頻繁に行いましょう。進捗管理の方法は、従業員レベルと経営層・管理職レベルで異なります。
従業員レベルの進捗管理は「行動進捗シート」を作成して行うのがおすすめです。行動進捗シートは、達成目標・取り組む課題と行動・スケジュール・進捗状況などを一覧できる表です。行動進捗シートを利用することで、従業員が経営計画の全体像を把握でき、進捗管理をスムーズに行えます。
経営層・管理職レベルの進捗管理は、定期的な「進捗会議」の開催が必要です。進捗会議には経営者・役員・部門長などが参加し、売上高などの数値にもとづく進捗状況の報告や課題・改善点の検討、部門評価などを行います。
3-3.短期経営計画を作成する
経営計画は一般的に中長期的な視点で作成するため、短期経営計画の作成も必要となります。短期経営計画は、計画期間を1年間に設定した具体的な行動計画です。
短期経営計画では、売上高・利益率の目標設定や販売計画などを主なテーマとします。経営計画を業績アップにつなげるためには、短期経営計画で利益を上げる仕組みを構築することが重要です。
短期経営計画も月1回を目安に進捗管理を行い、計画と進捗状況の差異を分析して改善に努めましょう。
まとめ
経営計画は、企業が目標を達成するために必要な計画と言えます。実際に中小企業の約7割は経営計画を策定しており、策定することで業績アップが見込めるのもメリットの1つです。
ただし、経営計画は立てて終わりではありません。経営理念と経営基本方針にもとづいて経営計画を策定・実行した後は、計画のモニタリングおよび進捗管理を行うことで目標を達成しやすくなります。
また、経営計画の策定後は短期経営計画を作成し、より具体的な行動計画を設定しましょう。
(令和2年度第3次補正事業再構築補助金により作成)
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