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経営計画とは?経営計画を立てる目的と必要なタイミングを解説

2022.12.08

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企業が将来的に到達したい目標を実現するためには、経営理念や販売計画といった項目を細かく策定していく経営計画の作成が重要です。経営計画はプロジェクトを立てる際の指針となる工程表であり、社員一人ひとりが目標達成までの工程をイメージしやすくなります。

当記事では、経営計画の種類と目的を詳しく解説します。計画を作成する最適なタイミングも具体的に紹介しているので、経営計画の必要性やメリットを押さえて経営に取り入れたいという人はぜひご一読ください。

目次

1.経営計画とは?

経営計画とは、自社が将来到達すべき企業の姿を明らかにし、それを実現するための経営戦略や行動計画を具体的に定めたロードマップです。

経営者の夢・理想・アイデアをもとに、現状を把握・分析した上で従業員や周囲とのディスカッションを重ね、未来の自社があるべき姿を定めます。そして目標とする姿へ至るために必要な「経営理念」「利益計画」「販売計画」「経営基本方針」といった項目を詳細に策定するのが、経営計画です。

【自社が目標とする姿の例】

  • 業界のリーダーシップをとる企業になる
  • 地域の振興や福祉に貢献する
  • 従業員の生産性を◯◯%UPさせる
  • 従業員の業績を正当に評価するシステムを確立する

経営計画がなくても企業を運営することはできますが、より効率的に成長し業界で長く生き残るためには欠かせない戦略と言えるでしょう。

出所:中小企業庁「経営計画策定支援」

1-1.経営計画の種類

経営計画には、大きく分けて「短期」「中期」「長期」の3種類があります。計画期間の長さによる計画内容のおおまかな差は、下記の通りです。

短期計画
期間 1年以下
内容
  • 年度内の経営目標
  • 年度内の経営戦略
  • 年度内の経営方針
  • 詳細な業務計画
  • 予算、数値計画
標記 詳細
作成 ボトムアップ
中期計画
期間 3~5年
内容
  • 中期経営目標
  • 中期経営戦略
  • 経営戦略実行計画
  • 具体的な数値計画
標記 概略
作成 トップダウン・ボトムアップ
長期計画
期間 5~10年
内容
  • 長期経営戦略
  • 企業理念
  • 経営方針
  • 経営ビジョン
  • 長期的な経営戦略
  • 経営戦略の展開計画
標記 概要
作成 トップダウン

経営計画を立てる際は「長期」「中期」「短期」の順に行います。最初に長期計画で全体の構想を明確にし、中期計画・短期計画でそれぞれの期間内に実現可能な行動指針を、詳細に策定する方法が一般的です。

資金繰り表とキャッシュフロー計算書の違い・作り方

中期経営計画は必要?目的と策定のポイントを解説

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2.経営計画を立てる目的は?

中小企業庁委託の調査(複数回答あり)によると「経営計画を作成した背景や動機」の回答は下記の結果となりました。

補助金申請で必要となったから 59.1%
業績を向上させたいから 58.1%
経営状態を正しく知りたかったから 49.9%
自社の強みや弱みを知りたいから 46.8%
融資を受けるために必要となったから 31.6%

調査への回答を見ても分かるように、経営計画を立てる目的は大きく分けて下記の3つです。

  • 経営者のビジョンを具現化するため
  • 経営を管理するため
  • 資金提供者への説明資料にするため

ここでは、経営計画を立てる3つの目的とメリットを解説します。

出所:中小企業庁「経営計画の策定状況等について」

2-1.経営者のビジョンを具現化するため

経営計画があることによって、従業員は「企業がどこに向かっているか」「目標を達成する理由は何か」「具体的に何をすればよいか」を理解しやすくなります。経営計画は、経営者がどのような将来を描いているか、従業員に対して明確に示すための手段です。

経営者は、わざわざ経営計画を策定しなくても自社の経営方針を理解できます。しかし、どれほど素晴らしい未来像を描いていても、従業員がそのビジョンやミッションを理解していなければ企業の活性化や発展にはつながりません。経営者と従業員が同じ方向を向いて仕事をするためには、経営理念やビジョンの共有が不可欠です。

2-2.経営を管理するため

経営計画を立てることで、現在の企業がどのような状況にあるか内部環境を正しく把握し、課題を整理できます。経営計画の策定・推進には「生産管理」「販売管理」「人事管理」「労務管理」「財務管理」といった経営管理が必須です。

例えば「抱えている業務がいくつあるか」「納期はいつか」「在庫はどのくらいあるのか」「人員に対して業務量は適正か」といったことを正確な数値として算出します。

短期・中期で立てた計画通りに推移していない場合、数字を比較検討することでどこに原因があるか究明しやすくなるでしょう。また明確な数値として示されることで、対策を講じる際にも情報を共有しやすくなります。

2-3.資金提供者への説明資料にするため

金融機関などへ融資を申し込む際に重視されるのは、決算書の内容だけではありません。融資審査では多くの場合、経営計画を基に作られた試算表や月次資金繰り表、事業計画書(経営計画書)などの提出を資金提供者から求められます。

資金提供者は「貸したお金がどのような目的や事業に使われるのか」「確実な返済を見込めるのか」といった要素をチェックするのが一般的です。そのため、決算書の内容があまりよくなくても、経営計画で企業の将来性を納得させられれば、審査で有利に働くことがあります。

3.経営計画が必要となるタイミングは?

経営計画は「必ずこの時期に立てなければならない」という決まりはありません。経営者が「必要だ」と思ったり「今のうちにやっておこう」と思ったのであれば、いつでも実行に移してよいものです。

しかし、いつ計画を立ててよいか迷った場合は、下記のタイミングで行うとよいでしょう。

  • 融資や補助金を受けたいとき
  • 新しい事業を始めるとき
  • 経営状況を改善させたいとき
  • 事業継承を行うとき

ここでは、上記のタイミングで経営計画を作成すべき理由と重要性について解説します。

3-1.融資や補助金を受けたいとき

金融機関からの融資を受ける際には、必ず審査が行われます。経営計画が堅実であり、事業計画や返済計画に実現性があると判断されれば、現在の業績や資金状態が悪くても企業の信頼性を示すことが可能です。

また、国や地方公共団体が提供する補助金の申請に当たっては、運営状況の開示を求められることが珍しくありません。企業の安定した存続や成長には、補助金の積極的な活用が有効です。補助金の申請を視野に入れている場合は、国が定める様式に沿った経営計画を立てておくとよいでしょう。

3-2.新しい事業を始めるとき

新しい商品の開発やサービスの提供など、新規事業を開拓する際にも経営計画は必要です。具体的な計画を立てないまま思いつきや勢いだけで突き進んでしまうと、どれほどよいアイデアであっても失敗する可能性が高くなります。

新しい事業を成功に導くためには、市場動向の調査や分析、事業計画の作成が欠かせません。外部環境の変化を予測した上での柔軟な対策・修正案や、投資・資金繰りに関する計画も綿密に立てる必要があります。

3-3.経営状況を改善させたいとき

経営状況が悪化しているときほど、正確なデータをもとに現状を把握しなければなりません。経営計画が立てられていれば、見込まれる損益や資金繰りの状態などが今度どの程度企業へ影響を与えるか、予測することが可能です。

現状を打破するために必要な施策が人材育成なのか、あるいはコスト削減や意識改革なのかなど、経営課題を具体的に見出すこともできます。想定外のトラブルや危機が訪れたときにも、改善すべき点を数値として確認できることも経営計画のメリットです。

また、405事業(経営改善計画策定支援事業)を活用する方法もあります。405事業は認定経営革新等支援機関が経営改善計画の策定をサポートしてくれる事業であり、審査に通ると借入条件の変更や新規融資といった金融機関による支援が受けられます。

出所:中小企業庁「経営改善計画策定支援」

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3-4.事業継承を行うとき

社内・親族・第三者など、誰に継承される場合でも、経営計画の策定は円滑な事業継承に不可欠です。経営者が交代することで、企業の方向性が大きく変わることは珍しくありません。

そのため、事業継承に伴って「企業の経営体制がどうなるか」「既存事業の継続性はあるのか」といったことに、従業員や顧客の多くが関心を寄せます。これまで通りに事業を行っていくにせよ、あるいはまったく異なる体制を築くにせよ、新しい社長の描く今後のビジョンを経営計画で明確に示すことが大切です。

まとめ

経営計画とは、企業が将来的に到達すべき姿を明確にし、実現するための行動計画や経営戦略を定めたロードマップのことです。一般的に経営計画を立てる際は「長期」「中期」「短期」の順で行い、長期計画で全体像を明らかにした後、中期・短期計画で実現可能な行動指針を策定します。

経営計画を立てる目的には「経営者のビジョンを具現化するため」「経営を管理するため」といった理由があり、経営者が必要と判断すればいつでも実行に移してよいものです。しかし「融資や補助金を受けたいとき」「新しい事業を始めるとき」などのタイミングで経営計画を堅実かつ綿密に立てることで、信頼性の裏付けや事業の成功につなげられるでしょう。

(令和2年度第3次補正事業再構築補助金により作成)

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NBCPlusオンライン編集部

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