経営計画書は、作成することで経営理念を実現するための目的や手段が明確になります。さまざまなメリットがある経営計画書ですが、事前の知識を持たずに作成すると計画倒れになる可能性も否定できません。
今回は、経営計画書に記載する項目や、経営計画書を書くときのポイントを解説します。経営計画書は、日々の経営でも使用する重要な道具です。これから経営計画書を作成する方はもちろん、経営計画書の見直しを図りたい方もぜひご覧ください。
目次
1.経営計画書に記載する項目の書き方は?
経営計画書とは、会社の理念や基本方針、数値目標などを示した経営のあり方に関する計画書です。企業で掲げられている経営理念を実現するための行動指針を明確にし、1年ほどの短期目標から3〜5年間の中期、5〜10年間の長期的な目標をそれぞれ記載します。
経営計画書の作成は、義務ではありません。しかし、経営計画書を作成することで企業の状況や今後の課題を明確にできるほか、経営責任者の成長を促せたり、社内の統率を図れたりと多くのメリットがあります。
ここでは、経営計画書にどのような項目を記載するのかを具体的に解説します。
1-1.経営理念
経営理念とは、企業としての考え方や価値観、経営者や創業者の思いを明文化したものです。経営理念は社内外に広く公表し、企業としての方向性を示すことで社員の意識を統一したり、周りからの信頼を得たりする役割があります。
経営理念を考える際には、同業他者などの経営理念を参考にするとイメージしやすいでしょう。企業として将来的にどのようなことを実現させたいかを考え、その中で社会づくりに貢献できることがあるかを擦り合わせていきます。
経営理念は社内外の人に見られるため、簡潔で誰でも分かりやすい言葉選びを意識しましょう。たとえば、企業を象徴するようなキーワードを入れるのもおすすめです。いくつか作成した原案は、人に見せ、意見をもらいながら推敲を重ねて完成させます。
1-2.基本方針
基本方針とは、経営理念を達成するための方向性を示したもので、経営基本方針とも呼ばれます。経営理念と混同されることもありますが、経営理念が上位の概念で、経営理念をどう実現するかを示したものが基本方針です。
企業に合った基本方針を決めるために、まずは自社の現状の課題を把握する必要があります。売上などの財務状況を分析し、事業の長所と短所を把握しましょう。また、業務フローや人材配置にも目を向け、社員の能力や生産性も確認しておくと、現状の課題をより把握できます。
自社の課題を把握できたら、各項目ごとに方針を設定しましょう。方針を具体的に数値化すると、立場の違う経営者と社員の認識のギャップを埋めることができます。また、社員一人ひとりが共通の認識を持って仕事に取り組めます。
1-3.行動指針
行動指針とは、経営理念を実現するために、社員や企業としてどのような行動をするべきかを定めたものです。行動指針を定めると、社員のやるべき取り組みを言語化でき、社員の行動に基準が生まれます。業務が言語化されているため、自分の行動を振り返って改善できたり、他者と擦り合わせができたりと大きなメリットがあります。
行動指針を策定する際には、自社の経営理念を実現するために必要な行動と、自社が「やらないこと」のリストアップが必要です。リストアップした項目の中で残すべき内容を決め、「自社の価値観を示す項目」と「実際の行動を示す項目」に分けて精査します。精査した内容を言語化し、短い文章に書き出すことで行動指針が完成します。
1-4.経営戦略
経営戦略とは、経営理念に基づいて、自社が進むべき方向性を具体的に記載したものです。企業が生き残るためには、自社の特性や強みを把握し、社会に何を求められているかという視点を持って優先順位を付けることが重要です。そのため、社会の変化を見据えて策定される経営戦略は、経営計画書を作成する上で重要な役割を果たします。
経営戦略を策定する際には、会社を取り巻く外部環境の分析と、自社でコントロールしている内部環境の分析が必要です。環境分析を行うことで、企業が成功するための成功要因を導き出せます。成功要因をもとに、自社の経営戦略に落とし込んでいきましょう。
1-5.収支計画
収支計画とは、収入と支出のバランスおよび借り入れや返済額を計算し、結果的に残るお金がどれぐらいあるのかを示した計画です。収支計画を作成すると企業のお金の流れを把握でき、将来的に資金繰りに苦労しないように計画を立てることができます。
収支計画には、以下のような内容を取り入れます。
- 人件費などの固定費
- 借入金と利息額
- 平均的な原価率と粗利益率
- 最低限必要な売上高
収支計画は、さまざまな変化に対応するためにも、最低でも3年先までの予測を立てておくとよいでしょう。
1-6.行動計画
行動計画とは、経営理念の達成のために、「誰が」「いつまでに」「どのような行動をとるのか」を明文化したものです。会社や部門、個人によって目標達成に必要な行動が異なるため、行動計画は「会社」「部門」「個人」の3つに分けて策定します。
行動計画を策定する際には、まずはコストの削減やWEBサイトからの流入といった戦略目標を立てることが必要です。次に、戦略目標を達成するために売上や期日などの数値目標と、行動目標を決めていきます。行動目標を決める際には、誰か、いつ、どのようにするのかを分かるように記載することが大切です。
2.経営計画書を書くときのポイント
経営計画書を書くとき、多くの方針を取り入れてしまうと計画倒れになる恐れがあります。経営計画書を書くときには多くの内容を詰め込まず、ポイントを絞って作成しましょう。
以下では、経営計画書を書くときのポイントを3つ紹介します。
テンプレートを活用する |
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既存のテンプレートを使うことで、伝わりやすい経営計画書を作成することができます。しかし、テンプレートには自社の目標達成に必要のない項目が入っている場合もあるため注意が必要です。不必要なものを削ったり必要なものを付け加えたりして、自社ならではの経営理念を反映させた経営計画書を作成しましょう。 |
具体的で一貫性のある内容にする |
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経営計画書はいくつかの項目に分かれており、それぞれが経営理念を軸として作られます。経営理念を軸にして経営計画書を策定していれば、一貫性が生まれます。一貫性がない経営計画書になった場合は、経営理念をもう一度熟考しましょう。一貫性のある経営計画書を作ることで、社員に納得感を持って行動してもらえます。 また、経営計画書は実際に何をしたらいいのかを具体的に書く必要があります。経営計画書は、全社員の日々の仕事の中で実際に使用し、目標とするものです。社員が当事者意識を持って仕事に取り組むためにも、具体的に書かれている経営計画書が必要です。経営計画書を作成する際には、社員一人ひとりのやるべきことが分かるように心がけましょう。 |
シンプルな構成にする |
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経営計画書は、誰が読んでも理解できる内容にする必要があります。そのため、多くの方針や内容を盛り込みすぎないように注意しましょう。複雑な経営計画書を作成すると、重要な情報が分からず、社員が戸惑ってしまう恐れがあります。 また、情報が多すぎると経営計画書の字数が多くなるため、内容が全社員に浸透しないことも考えられます。社員が1つの目標に向かって一丸となって努力できるよう、目的や目標、数字や手段がシンプルに分かる構成にすることが大切です。 |
まとめ
経営計画書と一口に言っても、記載する項目は経営理念や基本方針、行動指針など多岐にわたります。企業の方針に沿った内容にするために、各項目の目的と書き方を理解しておきましょう。また、経営計画書を作成する際は短期・中期・後期の3つに分けることで現状とのギャップも埋めやすくなります。
経営計画書はただ作って終わりではなく、会社を成長させるために必要なものです。経営計画書は社内外の関係者にも見られるため、できる限りシンプルで一貫性のある内容を意識しましょう。
(令和2年度第3次補正事業再構築補助金により作成)
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