企業が事業活動を行う際は、支出・収入に伴うお金の流れを管理します。お金の流れを管理し、健全な経営を続ける上で欠かせないものが「資金繰り」です。
資金繰りという言葉に聞き覚えがあっても、資金繰りとは何かを知らない方は多いでしょう。資金繰りは悪化すると倒産につながる可能性もあるため、経営者の方は資金繰りの意味を理解することが重要です。
この記事では資金繰りの基礎知識を説明した上で、資金繰りの悪化原因と改善方法、資金繰りの悪化による黒字倒産の危険性についても解説します。
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目次
1.資金繰りとは?
「資金繰り」とは、企業の支出と収入を管理して、資金に不足が出ないよう調整することです。
そもそも企業の「資金」とは、現金・普通預金・当座預金などの「必要なときにすぐ支払に利用できるもの」を指します。これらの使いやすい性質の資金に対して、売掛金・上場株式・不動産などの「現金化するまでに時間がかかるもの」は資金ではありません。
企業がビジネスを行う上では、取引先からの入金や仕入先への支払など、さまざまなお金の流れが発生しています。お金の流れが止まると、支払に必要な資金が確保できないなどの事態が発生し、最悪の場合は倒産を招く可能性もあります。よく言われる「資金繰りの悪化」とは、お金の流れが滞ったり、将来的に止まったりする状態のことです。
また、経営者の方は「資金」と「利益」は異なるものである点を理解しましょう。
利益とは、事業の売上から経費を差し引いた金額のことです。企業は事業によって利益をあげると、資金の元となる収入を獲得できます。
しかし、ビジネスでは利益の発生から入金までに数か月程度のタイムラグが発生することは珍しくありません。入金に至っていない利益はあくまでも帳簿上の数字であり、手元にすぐ使える「資金」が存在しているわけではない点に注意してください。
1-1.キャッシュフローと資金繰りの違い
資金繰りと混同しやすいものに「キャッシュフロー」があります。
キャッシュフローとは、一定期間に支出と収入がいくら発生したかなどの「過去におけるお金の流れ」を表す言葉です。キャッシュフローを把握する際は、貸借対照表や損益計算書を基に分析を行い、キャッシュフロー計算書を作成します。
資金繰りも、お金の流れを考える点ではキャッシュフローと同じです。
しかし、資金繰りが考える対象は、来月の支出と収入がどの程度になるかなどの「将来におけるお金の流れ」です。資金繰り表を作成して、将来に発生するお金の流れを把握・管理します。
なお、資金繰り表とキャッシュフロー計算書については、下記のリンク記事で詳しく解説しております。
1-2.資金繰りを管理する「資金繰り表」
資金繰りを管理する方法にはさまざまなものが存在し、企業の中には「資金繰り表」を作成して資金繰りを管理するところもあります。
一方で、資金繰りが厳しい中小企業では資金繰り表を作成していなかったり、資金繰り表自体を知らなかったりするケースもあるでしょう。
資金繰り表とは、一定期間に発生する支出や収入の情報を分類・集計した表です。将来におけるお金の流れを視覚化する資金繰り表は、資金繰り計画を立てる際に役立ちます。
資金繰り表には作成方法やフォーマットの決まりはありません。主な項目となる下記の5点を押さえて、資金繰りの管理に活用しやすい資金繰り表を作成しましょう。
前月繰越金額 | 前月から繰り越された現金の残高を記入する |
---|---|
経常収入 | 事業の主な収入を記入する |
経常支出 | 事業の主な支出を記入する |
財務収支 | 融資などの財務収入と、借入金返済などの財務支出を記入する |
次月繰越金額 | 前月繰越金額と今月の収支を合計し、次月に繰り越す現金の残高を記入する |
なお、資金繰り表については、下記のリンク記事で詳しく解説しております。
2.資金繰りの悪化が招く「黒字倒産」
企業経営において資金繰りが重要視される理由としては「黒字倒産」のリスクが挙げられます。
黒字倒産とは、帳簿上は収入が支出を上回る黒字状態であるにもかかわらず起こる倒産のことです。倒産は一般的に赤字状態のときに起こるものの、黒字状態で起こるケースもあります。
黒字倒産が起こる原因は、手元資金に余裕がなくなり、取引先への支払や従業員への給与支払が滞ってしまうためです。
たとえば4月の支出が200万円、収入が800万円の場合、帳簿上4月は600万円の利益が発生しています。しかし、入金が3か月後と設定されていれば、800万円の収入は7月にならなければ入ってきません。
一方で200万円の支出を5月中に支払う設定であれば、支払用の銀行口座に200万円の預金が必要です。口座に十分な預金がないと、取引先が手形の決済ができず「不渡り」となります。6か月以内に2度の不渡りが発生すれば取引停止処分となり、事実上の倒産です。
黒字倒産を防ぐためには、資金繰りを行って支出と収入の流れを把握することが重要となります。
3.資金繰りの悪化原因と改善方法
資金繰りの悪化原因はさまざまなものがあり、代表的な原因としては下記の2つが挙げられます。
(1)赤字状態の継続
赤字とは、支出が収入を上回る状態です。赤字状態が継続すると支出が収入を常に上回るため、保有する資金が流出し続けて資金繰りが悪化します。資金流出が続けば取引先への支払が困難となり、倒産する可能性も高まるでしょう。
(2)急激な売上増加
急激な売上増加は、黒字倒産を発生させる主な原因です。売上増加によって多額の利益が発生しても、支払から回収までに大きなタイムラグがあれば、入金前に手元資金が尽きる可能性があります。特に製造業や建設業などの業種は受注から商品の引き渡しまでに時間がかかるため、急激な売上増加に注意すべきです。
資金繰りの悪化原因については、ここでは紹介していない他の原因も含めて、下記のリンク記事でさらに詳しく解説しております。
資金繰りの悪化原因を把握した後は、資金繰りの改善方法も押さえましょう。資金繰りの改善方法として代表的な3つの対策を解説します。
3-1.決算書を読めるようにする
まずは経営者自身が決算書を読めるようになりましょう。
決算書とは、事業年度ごとに企業の支出と収入を計算し、企業の財務状態や経営成績をまとめた書類です。正式には「財務諸表」や「計算書類」と呼びます。
決算書には、さまざまな書類が含まれています。中でも重要な書類が下記の「財務三表」です。
- 貸借対照表
- 損益計算書
- キャッシュフロー計算書
貸借対照表は「企業の資産状況」、損益計算書は「企業の業績」、キャッシュフロー計算書は「一定期間における資金の流れ」を示す書類です。
決算書の読み方については、下記のリンク記事で詳しく解説しております。
決算書の読み方を押さえると、自社の資金繰りが理解できるようになります。
3-2.経費削減に取り組む
資金繰りの悪化は、基本的に支出が企業の保有資金を圧迫することで発生します。毎月の支出を抑えるために、経費削減に取り組みましょう。
経費削減に取り組む際は、損益計算書で経費の分析を行います。損益計算書には「販売費および一般管理費」や「営業外費用」といった項目があり、経費がいくらかかったかを詳細に把握することが可能です。
損益計算書の分析により経費を把握できたら、業務で無駄な経費が発生していないかを洗い出して、削減可能な経費を削減します。
経費削減を進めることで支出額が抑えられて、資金繰りの改善が可能です。
3-3.「支払は遅く・回収は早く」を意識する
資金繰りを改善する上では「支払は遅く、回収は早く」を意識しましょう。
反対の「支払は早く、回収は遅く」なる場合は、収入を回収する前に支出がかさむ財務状態となり、黒字倒産のリスクが高まります。支払から回収までの期間が開きすぎないように「支払は遅く、回収は早く」を意識して、十分な手元資金を確保することが重要です。
ただし、支払・回収の条件を決める際は取引先との交渉が必要となります。自社の都合を一方的に押し付けることはせず、取引先も納得できる条件で交渉を行いましょう。
資金繰りの改善方法については、上記で記載しなかった方法も含めて、下記のリンク記事でさらに詳しく解説しております。
まとめ
企業の支出と収入を管理する資金繰りは、安定した経営を続ける上で重要です。資金繰りを行う際は資金繰り表を作成して、将来におけるお金の流れを把握・調整します。
主な資金繰りの悪化原因には「赤字状態の継続」や「急激な売上増加」があります。特に急激な売上増加は資金不足を招き、黒字倒産になる可能性がある点に注意してください。
資金繰りの改善方法には、経営者自身が決算書を確認して、経費削減への取り組みや「支払は遅く・回収は早く」を意識することが挙げられます。資金繰りの改善で手元に十分な資金を確保し、企業の財務体質を健全にしましょう。
- なぜ資金が増えないのかわからない。
- 追加融資・借り換えを繰り返しており、借入金が一向に減らない、むしろ増えている。
- ゼロゼロ融資の返済目途が立たない。
(令和2年度第3次補正事業再構築補助金により作成)
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