手元資金とは、経費などの支払後に手元に残るお金の合計額を指します。現金や預貯金だけではなく、株式などの有価証券も手元資金に含まれます。手元資金が豊富にあると、もし急に業績が悪化した場合でも、経営の危機を回避することが可能です。中小企業においては、できる限り潤沢な手元資金を確保することが、安定的な経営の鍵となります。
この記事では、手元資金の概要や計算方法について、詳しく解説します。また、手元資金の計算に用いる限界利益の意味や、手元資金を確保する方法についても取り上げるため、ぜひ参考にしてください。
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目次
1.手元資金とは?
手元資金とは、税金や経費などの支払後に手元に残るお金の合計額を指します。現金残高だけでなく、すぐに売却できる株式などの有価証券も流動資産に含まれます。手元資金は、いつでも自由に使える資金であることが特徴です。
手元資金が豊富だと業績悪化にも耐えられ財務の安全性も高まるため、中小企業においては手元資金の比率を高めておくことが重要なポイントと言えます。現在資金繰りに困っていない企業でも、急に業績が悪化する場合もあります。急激な業績悪化などの事態が起きても、手元資金が豊富にあり債務の返済能力が高ければ、資金繰りがしやすくなるでしょう。手元資金にゆとりを持たせておくことで、経営の安全性確保が可能です。
2.適正な手元資金の計算方法
適正な手元資金を計算するには、売上高を単純に用いるのではなく、限界利益を用いた計算方法が推奨されています。
売上高は商品やサービスの総売上額を表し、商品やサービスの生産・販売に必要なさまざまな費用が含まれています。例えば、生産費や広告費、管理費などです。業種やビジネスモデルによって売上高の内訳が異なるため、売上高を手元資金の計算に用いるのは適切ではありません。
売上高は企業全体の規模やシェアを表す指標としても利用されますが、大企業でも利益や手元資金が豊富であるとは限りません。反対に規模が小さい企業でも、利益や手元資金が潤沢な場合もあります。
そのため、売上高ではなく利益を手元資金の計算に用いれば、業種の違いによる売上高の内訳や規模の大小に左右されず、適正な手元資金の目安の計算が可能です。手元資金の目安を計算するのに適切な利益額のことを「限界利益」と呼びます。売上高を基準とするのではなく、限界利益を用いて計算しましょう。
2-1.最低限の手元資金の目安
最低限の手元資金の目安は「平均限界利益の3か月分」です。平均限界利益の3か月分があれば、売上高がゼロになってしまったとしても3か月間は固定費の支払ができる程度の手元資金にはなります。
企業には機械の故障や自然災害などの予期せぬ出費が発生する恐れもあります。平均限界利益の3か月分の手元資金を持っていることで、予期せぬ出費に対応できるだけの余裕を持てるでしょう。
また、金融市場の変動や信用力の低下などが原因で、企業が必要な資金を調達できなくなることもあります。銀行などの金融機関からの融資には1〜2か月ほどかかる場合もあるため、平均限界利益の3か月分の手元資金があれば資金調達のリスクにも対応できます。
2-2.理想的な手元資金の目安
理想的な手元資金の目安は「平均限界利益の6か月分」です。平均限界利益の6か月分以上の手元資金が用意できていれば、資金繰りへの不安は少なくなり、倒産リスクも抑えられます。
また、手元資金が豊富にあることで、仕入れ先への支払や社員への給与の支払、税金の納付など、企業活動に必要な支出を安定させられます。
手元資金を平均限界利益の6か月分にするには、手元資金の重要性を深く理解した上での計画的な行動が非常に重要です。企業にとって安定した経営をするためにも、手元資金を十分に確保するようにしましょう。
3.手元資金の計算に用いる「限界利益」とは
限界利益とは、商品やサービスを販売した際に直接得られる利益を指し、貢献利益と呼ばれることもあります。売上高から仕入原価などの変動費を引いたもので、下記の計算式を用いて算出します。
【限界利益の計算式】
限界利益=売上高-変動費
限界利益は、企業が商品やサービスを提供することで得られる利益の増加額を把握するための非常に重要な指標です。1個100円の製品を製造するために60円の材料が必要となる場合、材料費以外の変動費が発生していないとすれば、製品1個あたりの限界利益は40円となります。
3-1.限界利益と営業利益との違い
限界利益と営業利益は両者とも企業の利益を表す指標ですが、計算方法や意味合いが異なります。
営業利益とは、企業が営業活動によって得た利益から、営業活動に必要なすべての費用を差し引いた利益を指します。限界利益との違いは、売上高から変動費に加えて固定費も差し引くところです。
【営業利益の計算式】
営業利益=売上高-全経費(変動費+固定費)
営業利益は企業外部(株主や債権者など)への報告を目的としています。一方で限界利益は、自社の経営判断をする際に使用する指標です。
営業利益が赤字でも、限界利益が黒字であれば売上を伸ばしたり固定費を削減したりすることで、営業利益を黒字にできる可能性があります。
3-2.固定費と変動費の違い
固定費と変動費は、企業における費用の分類方法の1つです。固定費とは、売上の増減とは関係なく常に一定の金額が発生する費用のことです。具体的には下記のようなものが挙げられます。
- 人件費
- 家賃
- 水道光熱費
- 管理費
変動費は、直接売上に関係する費用のことです。具体的には下記のようなものが挙げられます。
- 原材料費
- 仕入原価
- 売上手数料
- 外注加工費
売上がなければ変動費は発生しませんが、何も売っていなくても企業が存続する限り固定費は発生します。一時的に売上がなくなっても耐えられるよう、固定費支払分の手元資金を用意しておくことが重要です。
4.手元資金を確保する5つの方法
手元資金を確保したり増やしたりする方法には、さまざまなものがあります。ここでは、主な方法をいくつか解説します。
(1)利益を上げる
手元資金を確保するには、事業で利益を上げて収益を増やすことが重要です。営業利益を増やすために、商品の価格を上げたり、販売量を増加させられるようなマーケティング施策を行ったりすれば、利益を増やせるでしょう。そして、得られた利益を現預金として置いておくことが大切です。
(2)支払サイトを調整する
売掛金の回収よりも買掛金の支払が先ならば、売上が伸びたとしても手元資金は減ってしまいます。支払サイトを調整し回収サイクルを短縮することにより手元資金の確保が可能です。
(3)余剰在庫を減らす
在庫を抱えてしまうとその在庫分の保管費が発生し、手元資金が減少します。余剰在庫を減らすには、セールやキャンペーンをするなどして在庫の早期売却が重要です。適正な在庫量を意識し、在庫縮小を検討しましょう。
(4)返済額を減らす
手元金を確保するには、返済額を減らすことも必要です。返済額を減らす方法としては、返済期間の延長や、返済額の見直しが挙げられます。ただし、返済期間を長くすることにより総返済額が増える可能性があるため注意が必要です。
(5)融資を受ける
手元資金が足りない場合、融資を受けることも検討しましょう。融資を受けることで、事業拡大のための設備投資なども可能になります。
まとめ
手元資金の適正な金額を計算するためには、単純に売上高を使用するのではなく、限界利益を用いる必要があります。限界利益とは、売上高から変動費を引いたものです。限界利益を用いることで、売上高の内訳や規模の大小に左右されない、適正な金額を求められます。
手元資金を確保するためには、利益を増やしたり、支払サイトを調整したりする方法があります。自社に合った方法を上手に選択して、適正な金額の手元資金の確保を図りましょう。
- なぜ資金が増えないのかわからない。
- 追加融資・借り換えを繰り返しており、借入金が一向に減らない、むしろ増えている。
- ゼロゼロ融資の返済目途が立たない。
(令和2年度第3次補正事業再構築補助金により作成)
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