企業経営の安定化を図るためには、資金の流れを適切に管理することが欠かせません。資金の流れを視覚化するツールとしては「資金繰り表」と「キャッシュフロー計算書」があります。いずれも経営の安定化・資金ショートのリスク軽減には欠かせない資料です。
そこで当記事では、資金繰り表とキャッシュフロー計算書の違いについて解説します。さらに、資金繰り表とキャッシュフロー計算書の作り方も紹介するため、資金繰りやキャッシュフローの管理・改善に取り組みたい経営者の方は、ぜひご覧ください。
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目次
1.資金繰り表とキャッシュフロー計算書の違い
企業経営における資金の流れを表すものには「資金繰り表」と「キャッシュフロー計算書」の2つが存在します。資金繰り表とキャッシュフロー計算書を混同していたり、意味の違いが曖昧になっていたりする方が多くいます。いずれも資金の流れを把握するためのツールであることは共通していますが、異なっている部分も少なくありません。
ここでは、両者の違いをそれぞれの意味を踏まえて詳しく解説します。
1-1.資金繰り表とは?
「資金繰り表」とは、一定期間における収入と支出を分類・集計した管理表のことです。資金繰り表を作成することで、自社の資金状況を理解したり、資金不足・黒字倒産の対策を行ったりできます。
資金繰り表の特徴は、将来的な資金の流れを管理できる点です。資金繰り表は「経過月の収支」と「将来を予測した収支」の両方を作成するため、現在から将来までの資金の流れを分かりやすい表形式で把握できます。
資金繰り表のより詳しい解説・具体的な作り方は、下記のリンク記事で紹介しています。
1-2.キャッシュフロー計算書とは?
「キャッシュフロー計算書」とは、会計期間中に発生した資金の流れを表した会計書類のことです。キャッシュフロー計算書を作成することで、どのような理由で、いくらのお金が出入りしたかが明確に示せます。
キャッシュフロー計算書の特徴は、過去に発生した資金の流れや金額の大小が分かりやすい点です。「企業活動のどのような項目でいくらの収入・支出が発生したか」「全体の資金増加・減少はいくらか」が分かり、経営の分析や財務体質の健全化に活用できます。
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1-3.資金繰り表とキャッシュフロー計算書の違い
資金繰り表とキャッシュフロー計算書の大きな違いとしては「現在の視点から過去・未来のどちらにおける資金の流れを見ているか」が挙げられます。
◆未来を予測するもの(資金繰り表)
資金繰り表は、数か月先に予定している資金の流れを視覚化できるものであり「現在の視点から未来における資金の流れを見る」表です。未来における資金の流れは、将来的な企業の資金状況に直結する情報であり、設備投資や資金調達といった経営判断を下す際の材料に活用できます。
未来における自社の資金状況を適切に把握したいときや、資金不足の防止・対策をしたいときは、資金繰り表を作成しましょう。
◆過去の実績を分析するもの(キャッシュフロー計算書)
キャッシュフロー計算書は、過去に発生した資金の流れを視覚化したものであり「現在の視点から過去における資金の流れを見る」会計書類です。過去に発生した資金の流れは、実際に行われた企業活動の成果そのものであり、経営改善や株主への説明に役立てられます。
過去の経営実績や現在の財務状態を詳細に把握するためには、キャッシュフロー計算書の作成が必要です。
◆財務諸表に含まれるかどうか
資金繰り表とキャッシュフロー計算書の違いには、資金繰り表は財務諸表には含まれず、キャッシュフロー計算書は財務諸表に含まれる点も挙げられます。
財務諸表とは、金融商品取引法にもとづく「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」において規定されている特定の書類です。
財務諸表に関する一般的な用語としては、貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書の3つを指す「財務三表」が有名です。財務諸表については、下記のリンク記事で詳しく解説しております。
金融商品取引法の規制を受ける上場企業等では、財務諸表であるキャッシュフロー計算書の作成義務があります。
一方で資金繰り表は財務諸表ではなく、主に社内で利用される資料であるため、作成・公開が義務づけられているわけではありません。社外向けに利用されるケースもあるものの、根拠となる法律も特に存在せず、資金繰り表の作成・公開は任意となっています。
2.資金繰り表の作り方
ここでは、資金繰り表の作り方を、4つのステップに分けて解説します。
(1)必要な資料を用意する
最初に、資金繰り表の作成に必要な資料を手元に用意します。主な資料は下記の5つです。
- 月次試算表
- 現金出納帳
- 預金出納帳(もしくは預金通帳)
- 手形帳
- 借入金返済明細書
月次試算表は、貸借対照表・損益計算書の金額を1か月ごとの期間で区切って作成したレポートです。現金出納帳と預金出納帳は、現金・預金の動きを明らかにするために必要となります。自社が手形取引を行っている場合は手形帳を、借り入れがある場合は借入金返済明細書を用意しましょう。
(2)表計算ソフトでレイアウトを作成する
Excelなどの表計算ソフトで資金繰り表のレイアウトを作成します。資金繰り表に記載する項目(行)は企業によって異なる場合がありますが、下記の8項目はほとんどの企業で共通しています。
- 前月繰越
- 営業収入
- 営業支出
- 営業収支
- 財務収入
- 財務支出
- 財務収支
- 次月繰越
また、レイアウトには将来予測値を記入する「予算」列と、実績値を記入する「実績」列の2列を各月に用意してください。
(3)項目ごとの金額を算出して入力する
用意した資料にもとづいて、項目ごとの金額を算出して表計算ソフトに入力します。予算の列には見積もりの金額を、実績の列には実際の成果である金額を記入してください。合計額を入力する営業収支と財務収支の部分は加算・減算の関数を設定すると、入力の手間を短縮できます。
(4)正しい内容かをチェックする
最後に、項目・計算式・金額が正しいかをチェックします。誤りがなければ資金繰り表は完成です。
資金繰り表の具体的な作り方・より詳しいフォーマットは、以下の記事で解説しているため、ぜひ参考にしてください。
3.キャッシュフロー計算書の作り方
キャッシュフロー計算書の記載方法は「直接法」と「間接法」の2種類があります。ここでは、採用されるケースが多い間接法で、キャッシュフロー計算書の作り方を解説します。
(1)必要な資料を用意する
最初に、キャッシュフロー計算書の作成に必要な資料を手元に用意します。主な資料は下記の2つです。
- 貸借対照表(前期分・当期分)
- 損益計算書(当期分)
また、自社が新株を発行したり、固定資産・有価証券での取引を行ったりした場合は、該当取引に関する資料も必要となります。
(2)キャッシュフロー計算書のひな型を用意する
財務諸表の1つであるキャッシュフロー計算書は作成基準が定められており、作成が義務づけられている上場企業では作成基準に沿う必要があります。キャッシュフロー計算書のひな型を使用すると簡単に作成できます。キャッシュフロー計算書のひな型は中小企業庁のページからダウンロードが可能です。
(3)貸借対照表・損益計算書の項目を入力する
中小企業庁のページからダウンロードしたひな型は、貸借対照表・損益計算書の項目をそれぞれ入力して、最後にキャッシュフロー計算書を出力する形式となっています。
(4)キャッシュフロー計算書を出力する
最後に、出力用のページを開いて、最下段の欄が0になっていることを確認します。以上でキャッシュフロー計算書の作成は完了です。
まとめ
資金繰り表もキャッシュフロー計算書も、企業の資金の流れを把握するために役立つ資料です。いずれの資料も、資金繰りの管理・改善には欠かせません。
資金繰り表は、将来的な資金の流れを管理することを目的としています。一方で、キャッシュフロー計算書は、会計期間内の実績を企業の利害関係者に開示するための財務諸表です。つまり、両者には「未来の予測」と「過去の実績の分析」という目的の違いがあります。
資金繰り・キャッシュフローの改善を目指す場合は、当記事で紹介した資金繰り表・キャッシュフロー計算書の作り方を参考にして、作成に取り組んでください。
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