目次
はじめに
✔本コラムでは、資金繰りが悪化する10個の原因がわかります。
✔資金繰りを楽にすることに繋がる、無料の「決算書分析」もご紹介します。
「資金」には現金、当座預金、普通預金など、すぐに支払いに使えるものが含まれます。そのやりくりを意味する「資金繰り」は、会社の経営にとって非常に重要です。資金繰りが悪化し逼迫(ひっぱく)してしまうと、たとえ利益が出ていたとしても支払いが行えず、経営が窮地に陥ってしまうことがあります。そのため安定的な経営を実現する上では、適切な資金繰りの管理・調整が欠かせません。
この記事では、資金繰りが悪化してしまう要因として代表的なものを10個取り上げます。また資金繰りの悪化を予測し、資金ショートの時期を事前に把握できる未来の「資金繰り表」についてもご紹介します。足元の資金繰り表を作成するだけでなく、将来の入金や出金を把握することは経営に安定をもたらします。
資金繰りや資金調達に不安感を抱いている経営者の方はぜひ、当記事の解説を参考にお金の流れを理解し、資金の管理方法についての理解や実行力を深めていただければ幸いです。適切な対応を理解し、資金繰りに窮する状況や苦しい経営から脱却しましょう。
また本記事は、現在、資金繰りに問題のない経営者にも役立つ情報となります。
経営の命綱でもある資金管理は何に注意を払うべきか再確認の上、安定的な成長戦略を実行してください。
1.資金繰りが悪化する代表的な10個の原因とは?
資金繰りの悪化にはさまざまな要因がありますが、基本的には「キャッシュインの減少」と「キャッシュアウトの増加」が影響しています。
キャッシュインの減少とは、売上の減少や、売掛金をはじめとした売掛債権の回収遅れなど「企業に入る資金が減ること」を指します。また、キャッシュアウトの増加とは、買掛金など仕入債務の支払い増加や過剰な設備投資など「企業から出ていく資金が増えること」です。
キャッシュインが減少すると、支払いに充てる十分な現金を得られない可能性があります。また、キャッシュアウトが増加すると、手元資金のみでは支払いが間に合わないケースもあるでしょう。資金繰りの悪化が進むと、仕入れ代金や家賃、給与の支払いができなくなり、最悪の場合は倒産に追い込まれる可能性もあります。
資金繰りの改善方法や、資金繰りの悪化が招く黒字倒産については、以下のリンク記事で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
資金不足を未然に防ぐには、資金繰りが悪化する具体的な要因を押さえておくことが重要です。以下では、資金繰り悪化の10個の原因について、具体的に解説します。
1-1.赤字経営が続いている
赤字経営とは、支出が収入を上回っている経営状態です。赤字経営により、すぐに資金不足に陥る(おちいる)わけではないものの、長く赤字状態が続けば手元資金が枯渇(こかつ)し、固定費などの支払いに充てるお金がなくなってしまう可能性もあります。
赤字経営の原因を特定し、利益率の向上に努めるのは勿論のこと、必要があれば赤字商品や赤字サービスの縮小・撤退を検討するのが賢明です。まずは固定の収支が合っているか、その確認から始めましょう。
1-2.過剰投資を行っている
資金運用のための株式投資や事業の効率化及び拡大に向けた設備投資は、企業活動を行う上で重要な役割を果たします。しかし、過剰投資や投資のための資金調達(借入)過多、投資の失敗などが原因となって、資金繰りの悪化を招くケースも少なくありません。
投資の際には、投資額が過剰ではないか、投資額に見合った利益を得られるかを適切に見極めることが重要です。借入を起こした場合は借入金の返済計画などもしっかり立てるようにしましょう。借入の返済負担については、後の項目も参考になさってください。
尚、投資の為の資金移動は、キャッシュアウトしない「減価償却費」の範囲内で行うことが賢明です。
毎期の投資が減価償却費の範囲で賄(まかな)われているかを、一度自社の数字で確認してみてください。
この分析は、後述する無料の「決算書分析」の中でも実施することが出来ます。
1-3.売掛債権の貸倒れがある
BtoB企業においては、掛取引(かけとりひき)が基本となることが多い傾向にあります。掛取引によって商品を販売した場合、売り上げたお金を実際に回収し、自社に入金されるまでの期間は大体翌月〜数か月後です。大きな機械やシステム設計、建設や不動産など、業種業態によってはそれ以上の長い期間がかかることもあります。
売り上げたお金の回収までの期間は実際には会社によって様々です。その期間は、一般的には会社の「回収サイト」の条件によって決まります。取引先が大手企業の場合や官公庁が相手の場合、相手方の支払いサイトに合わせてその期間が変更となり、長期化する場合もあります。
何れにしても、掛取引の場合は、売り上げてもすぐにお金が回収出来るわけではない、という点が特徴です。
売掛金など売掛債権を回収する前に、万が一取引先の業者が破産・倒産してしまうと、売掛債権を回収できない「貸倒れ」が起こります。貸倒れが発生すれば自社で損失を被る(かぶる)ことになるため、その分資金繰りが苦しくなります。
貸倒れを防ぐには、掛取引を結ぶ際の与信の情報の管理・取引判断が非常に重要です。また、企業の業況は日々変化するため、取引きの継続中も相手方の業況に関する情報の収集を怠ってはなりません。取引先の業況が悪化していることがわかった場合は、必要に応じて売掛限度額の減額なども検討しましょう。
1-4.不良在庫を抱えている
商品の売れ行きが悪く、仕入れた在庫を大量に抱えてしまうこともあるでしょう。不良在庫には保管するためのスペースや、維持・管理の為の人手が必要となり、在庫を抱えているだけで賃貸料や人件費などのコストが発生します。在庫の数が増えればその分コストも増えるため、資金繰りが悪化する原因の1つとなります。
不良在庫に関わらず、在庫は適正に持つ必要があります。現場では、機会ロスを防ぐためにと社員が考え、良かれと思って多めに在庫を発注しているケースもあります。経営者の目の行き届かないところで過剰発注している場合もあるので、注意が必要です。正確な棚卸しと仕入量の見直しや基準・ルールを設定することにより、在庫を抱えすぎないよう調整することが重要です。
在庫はお金そのものです。在庫が眠っているのは、「資金が眠っている」ことと同義のため、社員や従業員にもその認識を共有し、しっかり在庫管理を行うことが大切です。
1-5.回収・支払期間のバランスが崩れている
掛取引をメインとする業種では、売上金の回収と仕入れ先への支払いのタイミングが合わず、そのバランスが崩れることで資金繰りが悪化するケースも少なくありません
例えば、売り上げ金の回収が3か月後であるのに対して、仕入れ先への支払いが2か月後である場合、支払いの際に売り上げ金以外から資金を捻出する必要があります。
回収・支払期間のバランスが崩れると、損益上は黒字であっても、手元に資金がなければ倒産の危機に追い込まれる可能性もあります。いわゆる黒字倒産がそれにあたります。
自社の回収と支払いのバランスを把握し、必要に応じて販売先や仕入れ先に交渉して、資金繰りを安定させられるサイクルを見つけ、導入しましょう。
NBCコンサルタンツ株式会社では、回収と支払期間のバランスを簡易的に分析し、それぞれの企業に合った最適な回収と支払のサイトをご報告するサービス「決算書分析」があります。興味のある方はお気軽に実施ください。
✅御社の資金繰りを悪化させている原因と対策をわかりやすくご報告します。
無料の決算書分析『経営力診断調査』をプレゼント
⇒お申し込みはコチラから
決算書分析については、後の章でも詳しく解説します。
1-6.借入金の返済が負担になっている
金融機関などからの借入金が増加すれば、その分返済額も増加します。返済額の負担が大きすぎると資金繰りの悪化につながります。融資を受ける際には、無理なく返済が可能であるかどうかを検討・判断することが重要です。
運転資金を使途とした借入がかさんでいる場合は、既述の回収と支払期間のバランス、その間に発生する「立替資金」が大きすぎる可能性があります。改善に向けた取り組みのないまま運転資金使途の借入を起こし続けることはリスクに繋がり得ますので、注意が必要です。また、稀に、従業員の賞与等を借入で賄う(まかなう)ケースがありますが、利益率の現場改善がないまま賞与のための借入を行うことは避けましょう。
借入を起こしている場合、何の為の借入なのか、それぞれどれくらいの返済が発生し、いつ頃返済が終わるのか、金利は幾らか、などきちんと把握して経営されることをお勧めします。借入返済の一覧表などを作っておくことも有効です。
すでに毎月の返済負担によって資金繰りが苦しくなっている場合は、金融機関に交渉し、返済期間を延ばして毎月の返済額を減らしてもらうなどの措置が必要となります。資金繰りが厳しい場合の金融機関への対応方法は幾つかありますが、リスケジュールなどを発生させる前に、計画的な資金調達や借入の返済を心がけましょう。
1-7.急激な売上の変動がある
急激に売上が減少した場合、資金繰りに大きな影響を与えます。
売上の急激な減少だけではなく、「急激な増加」も資金繰りの悪化につながる原因の1つです。売上が急激に増加するとその分、仕入れ代金などの変動費も増加します。しかし、掛取引がメインの業種では売上金の回収は後になることから、増加したコストの支払いに充てる資金が足りなくなる大きなリスクがあります。
また、人件費などの固定費は売上と連動していないため、売上が増加・減少しても支払う金額は基本的には変わりません。そのため、売上が急激に減少すれば収入に対する支出の割合が増え、資金繰りが苦しくなります。売上の減少時は勿論のこと、売上が急激に増えたときも現金や預金など資金の管理に留意しましょう。
1-8.利益配分のバランスが崩れている
利益に対して役員報酬や株主への配当が多すぎると、資金繰りの悪化を招きます。赤字決算であるにもかかわらず多額の役員報酬を支払っている場合などは、利益配分の見直しを行いましょう。株主への還元は重要なことですが、経営状況を考慮して慎重に判断することが大切です。
企業によっては、利益配分のバランスを整えるだけで資金繰りが安定するケースもあります。
1-9.資金繰りの管理が不十分である
経営者の中には、以前は資金繰り表を作成していたが、最近忙しくてやれていない、と仰る方がいます。経営者は、何十年と経営を続ければ確かに経営の勘がついており、資金の状況も感覚で把握出来ている方もいらっしゃいますが、油断は禁物です。経営の勘にゆだねるだけでなく、「利益が出ているから大丈夫だろう」と資金繰りの管理を怠ることも危険です。売上金回収までのタイムラグや支払いのタイミングによって、気づかぬうちに資金繰りが悪化していたり、支払いまでに資金の用意が間に合わなかったりする可能性があります。
自社の資金繰り状況をチェックできていない場合は、効果的な資金繰り表の作成や、会計ソフト、信頼のおける財務担当者の活用などにより早急に適切な管理を始めましょう。
1-10.コストが高騰している
企業活動におけるコストとは、経営に要するさまざまな費用です。コストには、売上に連動して増減する「変動費」と、売上の変動に影響されない「固定費」の2種類があります。業種や業態によっても異なりますが、変動費の例としてわかりやすく挙げられるのは、原材料費や運送費です。また、固定費には人件費や家賃などが含まれます。
コストが高騰すればキャッシュアウトの増加へとつながるため、その分資金繰りは苦しくなります。コストの高騰に対し何らかの対策を講じる場合は、調整しやすい固定費から検討することがポイントです。
とはいえ、人件費のカットなど、守るべき社員や従業員の生活に影響の出る部分の調整は最後にし、まずは利益率を高める方法を早急に検討・実行します。ムダな経費などがあれば抽出して、経費の削減を行うこともよいでしょう。
2.資金繰りの悪化を予測する「資金繰り表」
資金繰りの悪化を予測・分析するには「資金繰り表」の作成がおすすめです。
単に足元の資金管理を行うだけでなく、出来る限り先の、出来れば1年先の将来の資金繰り表まで作成しましょう。
資金繰り表とは、企業の資金の出入りをまとめた計画表を指します。資金繰り表の作成により今後の収入と支出の見通しを立てておけば、資金が不足しそうな場合は余裕を持って、事前に具体的な対策を取ることが可能です。
また、資金繰り表はただ作成するだけではなく、予測と定期的な確認を繰り返すことが重要です。過去数か月分から向こう数か月分の資金繰りを分析すれば、資金管理以外にもさまざまな経営判断に役立ちます。
1年先、あるいは数ヶ月先の資金繰り表を作成する場合は、正確な数字でなくとも構いません。過去の実績と、受注する仕事の売上と原価の予測を立て、ざっくりとでも資金繰り表に入れていきます。その後運用する中で緻密な数字へブラッシュアップしてきましょう。
仮の数字で予測を立てることで、資金調達の必要な時期も見えてきます。
その場合は予め金融機関と交渉しておくとよいでしょう。
たかが資金繰り表、されど資金繰り表。
資金繰り表に記載する詳細な項目などについては、以下のリンク記事を参考にしてください。
3.自社の資金増減を瞬時に把握する方法
自社の毎月の資金増減を、瞬時に把握出来る簡単な仕組みがあります。
創業35余年のNBCグループでは、中小・零細企業の資金の管理に力を入れた法人「NBC資金を増やすコンサルティング株式会社」を有し、企業における「資金管理」と「資金改善」に力を入れています。
同社が提供する「瞬間くん®」というサービスでは、クラウドシステムを利用して、会社の資金を瞬間的に把握・管理するツールを提供しています。これを活用すれば、試算表の仕上がりを待たずとも、資金増減を月初頭に把握し、余裕を持った資金対策を打つことが可能となります。
今は無料でのトライアルサービスも受け付けていますので、興味のある方は一度お使いになってみてください。
4.自社の回収・支払期間のバランスを把握するには?
自社の決算書から、回収・支払期間のバランスを把握することが出来ます。
取引の変化などにより、期でそのバランスが変動する場合がありますが、3~4期分の決算書を手元に用意すると、平均的な期間バランスがつかめるだけでなく、過去と現在の変化も数値で明確に把握出来ます。
NBCコンサルタンツ株式会社では企業の決算書のコピーをお預かりし、その「決算書分析」を無料で実施するサービスを行っています。各企業の現在の回収と支払期間のバランス(=立替期間)を簡易算出し、ご報告するサービスです。
立替期間は運転資金と密接な関係があります。運転資金に窮する会社は、この立替期間が長期化しているケースがほとんどです。
NBCの「決算書分析」では、現在の自社の立替期間の把握だけでなく、各企業に合った理想的な回収と支払期間まで分析提示することができます。
各企業の最適な期間バランス(立替期間)は、その会社の利益率とも関係するため、一律に計算できるものではありません。財務の分析は活用される経営指標も多く、経営者が自分で分析するには困難を極めたり、不要に時間のかかる場合があります。銀行など金融機関からの報告も、報告を受ける側が書面を見ることにが慣れてくると、大事な指標や数値を見落としてしまうことがあります。
経営者が、これから「財務分析の勉強をしよう」と、経営の大事な時間をそこに注ぎこむよりも、計数管理に強い、経営の実践型のプロであるコンサルタントの力を活用したほうが賢明といえるでしょう。
自社の立替期間の把握や、資金繰りを楽にする新たなヒント、抜本的な改善策を誰よりも早くつかんでください。
改善は、現状を把握することから始まります。
✅御社の資金繰りを悪化させている原因と対策をわかりやすくご報告します。
無料の決算書分析『経営力診断調査』をプレゼント
⇒お申し込みはコチラから
まとめ
安定した企業経営を実現するためには、資金を適切に管理することが非常に重要です。
資金繰りは、さまざまな原因によって悪化する可能性があるため、常日頃から徹底的に管理する体制を築く必要があります。
資金が不足する場合、国や自治体の補助金や助成金を活用して資金を調達することも対策のひとつとして考えられますが、それらは原則後払いとなるため、急な資金不足の対応方法としてはあまり適しません。申請や採択にも時間を要するケースが多く、これらの活用については余裕のある検討が必要です。
経営の根幹になるのは資金です。
お金の管理を徹底し、どれくらい資金が増えたのか、あるいは減ったのかを毎月把握できる体制を作ることが好ましいです。資金増減には必ず明確な理由があります。またその増減は、試算表が出るのを待たずとも簡単に把握することが出来ます。
自社の現在の資金状況や動きを把握し、事前に素早く正しい対策を打つことが必要です。
資金繰り悪化の原因は沢山ありましたが、資金繰りの安定化をはかる方法もまた複数あります。これを機会に、ぜひ両方の知識を深め、安定経営に向けた道を前進されてください。
(令和2年度第3次補正事業再構築補助金により作成)
関連ダウンロード資料
-
詳細を見る
『瞬間くん®クラウド』2ヶ月無料トライアル
資金繰り関連記事
- 詳細を見る
中小企業の融資と運転資金:借入の種類や資金調達のポイントを解説
- 詳細を見る
債務償還年数とは?銀行が融資審査で必ずチェックする重要指標
- 詳細を見る
【いまさら聞けない】キャッシュフローを改善する15の方法!中小企業における資金の増やし方・ポイントと効果的な方法を具体的に解説します。
- 詳細を見る
資金繰りが悪化する原因と改善方法を解説!資金不足を防ぐ手法や安定経営にむけた資金管理方法も紹介!
- 詳細を見る
手元資金とは?適正な手元資金の計算方法や確保方法も
- 詳細を見る
資金繰り計画とは?計画が必要になる理由も解説
- 詳細を見る
資金繰り表とは?活用するメリットから作成方法まで
- 詳細を見る
資金繰りを改善する7つの施策
- 詳細を見る
資金繰りがショートする原因|ショートを防ぐ対策も
- 詳細を見る
資金繰り表とキャッシュフロー計算書の違い・作り方
この記事の著者