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【経営者向け】決算書の読み方|種類別に正しく理解する方法を解説

2022.07.28

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企業経営において着実に成長を図るためには、常に現状を分析・把握しておく必要があります。その中でも、事業年度ごとに作成する決算書は企業の経営状態を把握するために重要な資料と言えるでしょう。

そこで今回は、決算書の基礎知識や決算書から分かる情報、さらに決算書の基本的な読み方を詳しく解説します。企業や事業の成長に向けて、決算書を上手に活用したいと考えている経営者の人は、ぜひ参考にしてください。

目次

1.決算書とは

事業年度における企業の経営成績や財政状態を明らかにするために作成する書類のことです。各法律では「財務諸表(金融商品取引法)」「計算書類(会社法)」と正式に定義されており、決算書・決算書類は法律用語ではなく一般的な呼称となっています。当記事では「決算書」と統一して記載します。

決算書の作成目的はさまざまありますが、利害関係者(株主・債権者・投資家など)への情報開示が主な目的です。企業は財務会計として、外部の利害関係者に対し、財政状況を報告しなければなりません。

財務会計は、利害関係者に対して投資などの意思決定をするために必要な「情報提供機能」や、利害関係者間の「利害調整機能」の2つの機能をもっています。財務会計の際は、会計基準に準拠し経営状況を明らかにした決算書が必要となります。

なお、決算書の作成スキルを身につけられていないという場合でも、税理士に頼んだり会計ソフトを活用したりすることで、比較的簡単に決算書やその他経理業務に必要な書類(申告書など)を作成できます。会計ソフトは製品によっても基本機能が異なるため、自社に適したものを選ぶことがポイントです。

1ー1.決算書から分かること

決算書を見ることで、企業の収益性・健全性・成長性などを判断することが可能です。

収益性では、具体的に「企業がどれほど効率よく収益を上げているか」を判断します。総資本経常利益率や売上高経常利益率、売上高純利益率がおおよその指標となります。

健全性では、具体的に「企業の財政状態が健全であり、倒産のおそれがないか」を判断します。自己資本比率や流動比率、固定長期適合率が手がかりとなる指標です。

成長性では、具体的に「企業の経営が今後、拡大されるか/どれほどの経営拡大が期待できるか」の可能性を判断します。売上高増加率や経常利益増加率、自己資本増加率が手がかりとなる指標です。

 

 

2.決算書の種類と基本的な読み方

決算書の読み方は、その種類によって異なることが特徴です。決算書にはさまざまな種類がありますが、中でも「賃借対照表(B/S)」「損益計算書(P/L)」「キャッシュフロー計算書(C/F)」の3つが特に重要です。

ここからは、各種決算書の記載項目について、どのような項目を見ればどのような事柄が把握できるのかを詳しく解説します。

2ー1.貸借対照表(B/S)とは

賃借対照表(Balance Sheet)は、事業年度の終了日時点における資産・負債・純資産を示す書類です。貸借対照表(B/S)を見ることで、事業年度の終了日時点における「会社のプラスとマイナスの財産」を判断できます。

●資産

資産とは、企業が保有する財産のうち、売却により現金化されるもの、または現金そのもののことです。「総資本」とも呼ばれています。貸借対照表(B/S)の資産欄では、上から「流動資産」「固定資産」「繰延資産」「棚卸資産」と現金化しやすいものから順に並べることが基本です。

●負債

負債とは、国や金融機関からの借入により調達した資金のことです。「他人資本」とも呼ばれており、つまりは借金となるため返済が必要な資金となります。貸借対照表(B/S)の負債欄では、返済期限が1年以内の「流動負債」と、1年を超える「固定負債」の2つに分けられます。

●純資産

純資産とは、企業が保有している資金のことで、返済義務のない自己資本です。主に資本金や資本剰余金(株主が企業に出したお金)、利益剰余金(過去に蓄積された利益)からなります。さらに企業が発行した株式を自ら買い取り保有する場合も自己資本として純資産にあたります。

2ー2.損益計算書(P/L)とは

損益計算書(Profit and Loss Statement)は、事業年度における収益・費用(コスト)・利益を示す書類です。損益計算書(P/L)を見ることで、「企業がどのようにして売上や利益を伸ばしてきたか」が分かります。

●売上総利益

売上総利益とは、商品やサービスの販売・提供の対価である「売上高」から、商品やサービスの販売・提供をするためにかかった仕入額である「売上原価」を差し引いた利益額のことです。「粗利」とも呼ばれています。いくら儲けを得たかを示す指標となります。

売上総利益=売上高-売上原価

●営業利益

営業利益とは、売上総利益から売上原価以外の営業活動に関連して発生するコスト(人件費・消耗品費・広告宣伝費など)を指す「販売費および一般管理費」を差し引いた合計利益額のことです。企業の本業により、しっかり利益を上げられているかどうかを判断する指標となります。

営業利益=売上総利益-販売費および一般管理費

●経常利益

経常利益とは、営業利益に預金の受取利息など、本業の営業活動以外で経常的に発生する収益を指す「営業外収益」を加え、かつ借入金の支払利息など、本業の営業活動以外で経常的に発生する費用を指す「営業外費用」を差し引いた利益額のことです。経営活動の成果や企業の利益を生み出す能力を判断する指標となります。

経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用

●当期純利益

当期純利益を知るためには「税引前当期純利益」の理解がまず必要です。税引前当期純利益とは、経常利益から突発的に発生する特別利益を加え、特別損失を差し引いた利益額を指します。そして当期純利益は、この税引前当期純利益から法人税をはじめとした税金を差し引いた利益額のことです。企業における最終的な損益を判断する指標となります。

当期純利益=税引前当期純利益(経常利益+特別利益-特別損失)-法人税等

2ー3.キャッシュフロー計算書(C/F)とは

キャッシュフロー計算書(Cash Flow statement)は、年間における企業保有の現金の流れを、その理由も併せて示す書類です。キャッシュフロー計算書(C/F)を見ることで、企業の資金繰り、つまり「年間で保有する現金がいくら、どういった理由で増減したのかや、すぐに資金として使える現金はいくら残っているのか」が分かります。

なお、キャッシュフロー計算書(C/F)の必要性は以下の記事で解説しています。

キャッシュ・フロー計算書の必要性

キャッシュ・フロー計算書の必要性

続きを読む >

●営業活動によるキャッシュフロー

営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)は、本業で稼いだキャッシュ、つまり現金の増減を表したものです。キャッシュフロー計算書(C/F)の最初に記載される項目であり、本業による収入・支出といった現金の流れを把握できます。企業の直近の財務状態が判断できるため最も重要視され、通常はプラスとなりますがマイナス状態が続けば倒産の可能性が高くなります。

●投資活動によるキャッシュフロー

投資活動によるキャッシュフロー(投資CF)は、将来的な利益につながる投資活動に使ったキャッシュの増減を表したものです。キャッシュフロー計算書(C/F)においては、営業CFに次いで2番目に記載されます。投資活動にどれほどのお金を使ったのかが示され、通常はマイナスとなります。

●財務活動によるキャッシュフロー

財務活動によるキャッシュフロー(財務CF)は、金融機関などからの資金調達や返済・配当金還元によって生じた現金の増減を表したものです。キャッシュフロー計算書(C/F)においては、営業CF・投資CFに次いで3番目に記載されます。設備投資や運転資金のために融資を受けた場合はプラスとなり、金融機関に借入金を返済したときや株主に配当金を還元した場合はマイナスとなります。

まとめ

決算書とは、事業年度における企業の経営成績や財政状態を明らかにするために作成する書類のことで、法律では正式に「財務諸表」や「計算書類」と呼称されています。決算書作成の主な目的は、利害関係者(株主・債権者・投資家など)への情報開示のためです。

決算書を見ることで、企業の収益性・健全性・成長性などを判断できます。また、決算書にはさまざまな種類がありますが、「賃借対照表(B/S)」「損益計算書(P/L)」「キャッシュフロー計算書(C/F)」は特に重要な種類です。各種決算書では企業の財務状況を明らかにすることができるため、今後の企業・事業の成長に向けて有効に活用してみてはいかがでしょうか。

なお、財務分析については以下の記事で解説しています。

財務分析とは|4つの分析方法と各種指標を解説

財務分析とは|4つの分析方法と各種指標を解説

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経営力診断調査|NBCPlusオンライン

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(令和2年度第3次補正事業再構築補助金により作成)

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NBCPlusオンライン編集部

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