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財務分析とは|4つの分析方法と各種指標を解説

2022.08.08

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企業が成長するため、あるいは経営危機を回避するためには、定期的に経営状態をチェックする必要があります。経営状態をチェックするためには、財務分析が欠かせません。

財務分析とは、財務諸表を用いて、企業が今どのような状態なのか、これからどうなるのか、課題があればどのように改善すべきかなどを分析する方法です。

今回は、財務分析とは何か?財務分析によって何がわかるのかを解説します。

目次

企業の成長に向けて動くために、あるいは今後の見通しを分析・把握するためにも、定期的に現在の経営状態をチェックすることは不可欠です。そして、企業の経営状態をチェックすることを「財務分析」と言います。

財務分析を行うためには、いくつかの財務諸表を使用して各指標を分析しなければなりません。しかし、会社を立ち上げてまだ間もない経営者の人の中には、財務諸表からどのように財務分析をすればよいのか分からないという人も多いでしょう。

そこで今回は、財務分析の概要から、財務分析を行うために必要な財務諸表(計算書類)、さらに財務分析の手法・実施方法まで徹底的に解説します。

1.財務分析とは

財務分析とは、あらゆる財務諸表に記載された数字データに基づき、会社の経営状態や課題点、さらに今後の見通しや改善ポイントを分析することを指します。つまり、財務分析を行うことで今後起こり得る経営危機を回避できるほか、正確な将来予測も可能です。

また、財務分析は「内部分析(自社の経営分析)」と「外部分析(他社の経営分析)」の2つに分けられるうえ、会社と経営者・会社と金融機関など、会社のステークホルダーによっても財務分析の目的は異なります。ステークホルダーがその会社の経営者の場合は「内部分析」となり、経営状態の把握や将来予測をしたうえでの意思決定が目的となります。

なお、企業によっては財務諸表の数字や決算資料を一部公表しているケースもあります。他社が公表した数字に基づいてある程度の財務諸表分析(外部分析)ができるようになれば、同業他社との比較に活用することも可能です。

1-1.財務分析を行うために必要な財務諸表(計算書類)

財務分析を行うためには、財務諸表の使用が不可欠です。財務諸表とは、企業が株主や債権者、取引先などの利害関係者に対して、会計年度における経営状況や財政状態を報告するための書類であり、「計算書類」や「決算書」とも呼ばれています。

また、財務諸表とひとくちに言っても、さらに複数種類の書類が存在します。特に重要な書類が、「賃借対照表」と「損益計算書」です。

  • 貸借対照表
    賃借対照表とは、決算日における企業の資産・負債・純資産を示した書類です。「バランスシート」とも呼ばれ、略して「B/S」と表記されるケースもあります。賃借対照表を見ることで、企業がもっているプラスとマイナスの財産を把握できます。
  • 損益計算書
    損益計算書とは、会計年度期間(1年間)における企業の収益・費用(コスト)・利益を示した書類です。英語では「Profit and Loss Statement(プロフィット・アンド・ロス・ステートメント)」と称され、略して「P/L」と表記されます。損益計算書を見ることで、「どのようなことにお金を使ってきたか」「どのようにして利益を伸ばしてきたか」を把握できます。

2.財務分析を実施する4つの手法

財務分析には、基本的に「収益性分析」「安全性分析」「生産性分析」「成長性分析」の4つの手法があるとされています。これら4つの手法を組み合わせて財務諸表を分析し、今後の経営のヒントとなる収益性や安全性、生産性、成長性を明確に把握することが可能です。

ここからは、紹介した4つの分析手法に分けて、概要や目的、主に用いる指標を説明します。

2-1.収益性分析

収益性分析とは、企業がどれほどの利益を上げられているかを見る分析手法です。会社の「利益を生み出す力」の把握を目的に行われることの多い手法となっています。

収益性分析で利用する数々の指標の中で、特に代表的なものが「売上高総利益率」と「売上高営業利益率」です。

●売上高総利益率

売上高総利益率とは、売上総利益を売上高で割った数字に100をかけた利益率のことで、大まかな利益率を表す基本的な指標です。「粗利率」とも呼ばれており、収益性を分析する重要な要素です。

売上高総利益率 = 売上高 ÷ 売上高 × 100

売上高総利益率の平均は、企業規模や業種によっても大きく異なります。他社との比較に売上高総利益率を用いる際は、同業種で規模の近い企業をピックアップしましょう。

●売上高営業利益率

売上高営業利益率とは、営業利益を売上高で割った数字に100をかけた利益率のことで、会社での本来の営業活動(本業)における稼ぐ力を表す指標です。営業活動の効率性を判断することもでき、指標が低いと収益性が低いとみなされます。

売上高営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上高 × 100

売上高営業利益率も、企業規模や業種によって平均が大きく異なることが特徴です。

2-2.安全性分析

安全性分析とは、企業の支払い能力や倒産リスクの程度を判断する分析手法です。主に、会社の「財務状態」や「健全度合い」の把握を目的に行われることの多い手法となっています。

安全性分析で利用する数々の指標の中でも、特に代表的な指標が「流動比率」と「自己資本比率」です。

●流動比率

流動比率とは、1年以内に現金化される「流動資産」を、1年以内に支払わなければならない「流動負債」で割った数字に100をかけた比率のことで、会社の短期的な支払い能力と安全性を表す指標です。

流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100

流動比率は高ければ高いほどよく、一般的に200%を超えていれば安全性が高いとみなすことができます。しかし、100%を切ると短期的な支払いが多く、資金繰りが厳しいとみなされます。

●自己資本比率

自己資本比率とは、自己資本を総資本(自己資本+他人資本)で割った数字に100をかけた比率のことで、総資本に対する自己資本の比率から負債が適正な範囲なのかを判断するための指標です。

自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資本 × 100

会社規模や業種によっても細かに異なるものの、全業種の自己資本比率平均は40%程度と言われています。比率が低ければ他人資本の影響が大きく経営が不安定とみなされるため、なるべく40%以上を目指しましょう。

2-3.生産性分析

生産性分析とは、経営資源の効率性や売上・付加価値の創出度合いを見る分析手法です。主に、「企業が抱える従業員や機器・設備に対してどれほど効率よく成果を上げられたか、付加価値に貢献したか」の把握に用いられる手法となっています。

生産性分析で使用する代表的な指標が、「労働生産性」と「資本生産性」です。

●労働生産性

労働生産性とは、経常利益や人件費、さらに賃借料などを総合した「付加価値額」を従業員数で割った比率のことで、会社が抱えている従業員1人あたりがどれくらいの付加価値を生み出しているかを判断するための指標です。

労働生産性 = 付加価値 ÷ 従業員数

比率が高ければ高いほど、「経営資源を効率よく使えている」とみなすことができます。

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●資本生産性

資本生産性とは、付加価値額を総資本で割った数字に100をかけた比率のことで、会社が投入した資本に対してどれくらいの付加価値を生み出せたかを判断するための指標です。

資本生産性 = 付加価値 ÷ 総資本

労働生産性と同様に、比率が高ければ高いほど「少ない資本で高い付加価値を生み出せる」とみなすことができます。

2-4.成長性分析

成長性分析とは、企業がどのように成長してきたかや、今後の経営拡大の度合い・成長の見込みを見る分析手法です。単純に利益や売上高が伸びていくかという面だけでなく、得られた利益をもとに新たな商品・サービスの開発や新規投資も含めて伸びしろがあるかどうかを把握できます。

成長性分析で使用する代表的な指標が、「売上高伸び率」と「経営利益伸び率」です。

●売上高伸び率

売上高伸び率とは、当期売上高から前期売上高を差し引いた金額を前期売上高で割り、さらにその数字に100をかけた比率のことで、当期の売上高が前期と比較してどれくらい伸びたかを表す指標です。

売上高伸び率 =( 当期売上高 - 前期売上高 ) ÷ 前期売上高 × 100

比率が高ければ高いほど成長度合いが高く、低ければ衰退しているとみなされます。なお、当期の売上高が前期より増えた場合は「増収率」、減った場合は「減収率」となります。

●経常利益伸び率

経常利益伸び率とは、当期経常利益から前期経常利益を差し引いた金額を前期経常利益で割り、さらにその数字に100をかけた比率のことで、当期の経常利益が前期と比較してどれくらい伸びたかを表す指標です。

経常利益伸び率 =( 当期経常利益 - 前期経常利益 ) ÷ 前期経常利益 × 100

売上高伸び率と同様、比率が高ければ高いほどよいとされており、前期よりも経常利益が減った場合は「減益率」となります。

まとめ

財務分析とは、あらゆる財務諸表に記載された数字データに基づいて、会社の経営状態や課題点、さらに今後の見通しや改善ポイントの分析をすることを指します。財務分析を行うことで、現在の財務状況だけでなく、今後起こり得る経営危機リスクや見通しも把握することが可能です。

財務分析には、基本的に「収益性分析」「安全性分析」「生産性分析」「成長性分析」の4つの手法があるとされています。各分析手法によって用いる指標は異なるため、代表的な指標だけでも知っておくとよいでしょう。

また、正確に分析するためにもクラウド会計ソフト・経理システムを導入して日頃から記帳しておいたり、会計知識のある経理担当者をつけたりすることも欠かせません。

会社を成長させたい・着実に経営拡大をしていきたいと考えている経営者の人は、ぜひ定期的な財務分析を行って、経営状態を把握したうえで課題点・改善点を明らかにしてください。定期的な財務分析は、経営安定化につなげるための大きなヒントとなるでしょう。

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NBCPlusオンライン編集部

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