労働分配率経営をベースとした人事評価制度や、導入・改善事例についてお伝えしています。
第1回目(5/17号)では社長が見るべき人件費と就業規則のポイントについて、お伝えいたしました。
今回は、『人事評価制度の運用によるコストを、幹部の方々は理解して、社員に伝えているか』 をテーマにお伝えします。
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目次
「人事評価制度の運用コスト」とは?
あまり聞きなれないかもしれません「人事評価制度の運用コスト」。それもそのはず、弊社が独自に使っている用語だからです。
ほとんどの企業で、毎年4月に給与改定(昇給または減給)をしています(据え置きの企業もあるでしょう)。給与改定にあたっては、評価の結果を給与テーブルなどに当てはめ、改定額を決めていると思います。
さて、給与・評価制度を運用している経営者、幹部の方々に質問です。
『あなたの会社では、全社員が平均的な評価であった場合、給与テーブルに従うと、年間いくらの給与アップになりますか?』
『その昇給総額に社会保険料などで1.2倍するといくらですか?』
弊社ではそれを「人事評価制度の運用コスト」と呼んでいます。
なぜ「人事評価制度の運用コスト」が大事なのか?
期初に、部署や個人の目標設定の研修、社員との面談、コーチングの研修などをしていると、前期と同じ目標を提出する、取り組みやすい目標を提出する、などが見受けられます。
そしてそれに対して評価をする上司の皆さんも、きちんと指導できていないケースが多々あり、「うちの部署は定量目標を立てづらいんですよ」と言い訳のような説明を受けます。
大事なのは定量か定性かではありません。成長目標に繋がる部署のストレッチ目標を立てられていない、成長目標の必要性を説明できていないことが問題です。
特に後者の説明が重要なのです。例えば【1】の質問で、全社員50名が5段階評価で3を平均して獲得し、一人平均3,000円昇給するとします。賞与は年間3か月を予定している企業を想定します。
50名×3,000円×15か月×1.2倍 = 270万円
270万円の年間人件費の増加。これが人事評価制度の運用コストです。全員の年間昇給額が270万円のとき、粗利益が270万円アップしただけでは、企業の成長とは言えません。
昇給に見合う適正な粗利益が成長につながります。労働分配率の指標を使って考えます。
労働分配率 = 人件費 ÷ 限界利益(粗利益)
昇給分の人件費を、目標労働分配率で割ると昇給に見合う、最低限の粗利アップがわかります。先程の例で会社の目標労働分配率が50%だと考えると270万円÷50%=540万円の粗利アップが必要となります。
この会社の粗利益率が20%だとすると、売上高は2,700万円のアップが最低基準ということになります。10年間だと2.7億円です。
つまり、昇給は当たり前のことなどではなく、昇給に見合う以上の価値を、次の年に生み出すのが社員の役目だということです。5年、10年と制度運用するには、どれだけの成長が必要か理解できるはずです。
まとめ:3年、5年、10年と運用する重み!
社員の皆さんにとって、昇給は、生活の豊かさに繋がりますが、幹部の方々にとって人事評価制度を運用するということは、
- 『昇給というプラスのコストが発生する』
- 『それに見合う価値を生み出せるように指導と教育を部下にしなければならない』
と理解する必要があります。
社員の皆さんに同調して「うちの会社は昇給額は少ないからな…」と言ってはならないのです。まずは自社の人事評価制度の運用コストを見て下さい。
1年だけではなく3年、5年、10年と運用する際に見合う粗利・売上高にも着目すると、いかに成長させる責任が重いかが実感できると思います。
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この記事の著者
NBCコンサルタンツ株式会社
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