今回は、労働分配率経営をベースとした人事評価制度や、その導入・改善事例についてお伝えしてまいります。
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なお、後編は以下の記事をご参照ください。
目次
労働分配率「経営」
<人事評価制度>とひとことに言っても、2つの分野があります。
- 1つは制度構築、
- 2つ目に制度を通じた組織活性化と業績向上です。
労働分配率という、人件費と利益のバランスを表す経営指標を活用した経営改善のメソッドを、この2つの分野の根底に置きながら、利益と資金を改善させ、さらに社員の皆さんの報酬アップに繋げ、会社と社員にとって善循環を生み出すのが『労働分配率経営』です。
労働分配率を適正化させるためには、
- 適正な利益か?
- 適正な人件費か?
- 適正な一人当りの稼ぎ高か?
- 適正な人員配置か?
- 適正な仕事の仕組みか?
- 適正な規則か?
……多くの要因があります。今回は簡単にチェックできる、『社長が見るべき人件費と就業規則のポイント』についてお伝えいたします。
とある工事業の事例
専門工事業を担当するコンサルタントから相談を受けました。業績は赤字続きで、銀行への約定返済を利益から捻出できる状態ではなく借入は膨らむばかり。役員報酬や幹部の報酬カット、その他の固定費を削減してもまだ赤字を解消できそうにない。社員の人件費削減にも手を付けるしかないのか…。そこで弊社は以下の3つのことを行いました。
1:給与台帳と統計を活用して分析する
まずは、給与水準が妥当なのか確認しました。現状を社長に説明するには比較対象となる客観的データが必要です。そこで役立つのが厚労省の「賃金構造基本統計調査」です。
某県建設業10名以上の規模の会社の平均と比較したところ、基本給や各種手当は平均よりも2割ほど高く、時間外・休日割増を含めると3割以上高い結果でした。
2:就業規則は会社を防衛する手段でもある
さらに詳細を分析すると、休日割増が多いことが分かりました。給与台帳を見ると割増賃金を出したうえに代休まで付与している…。就業規則を見ると36協定による時間外・休日出勤を認める内容でしたが、ある点が良くなかったのです。
それは『振替休日ではなく代休を取る制度になっている』ということでした。『代休』は割増賃金を出したうえ休みを付与する仕組み、『振替休日』は出勤日と振替えるだけのため割増は必要ないので、通常、経営者は後者を選択します。
会社が受注する工事案件は減少しているのに、代休は可能な状態…弊社では、この就業規則自体を変更することにしました。
加えて、日給制度がありましたが、実際は全員月給制であったため資格の有無、監督業務か作業か、などによって日給制社員と月給正社員を分けました。
3:会社の存続を最優先させる
最後は、社長と社員との信頼関係が最も重要な対策です。[1]から人件費が相場よりも高いことはわかっていたので、会社の存続を最優先させるため、業績が良化するまで規則を見直すことにしましたが、その中で給与についてはこれまでの基本給一本から、基本給とみなし時間外30時間を含む職務手当に変更することにしました。
不満を述べる方もいましたが、再就職しても今より3割以上は給料が減るだろうということ、みなし時間外を含めても実質的には再就職より有利なこと、目標利益を実現できれば賞与還元することなどを社長から熱心に伝え、受け入れられることとなったのです。
さて、御社では?
会社の資金、利益など財務ポジションによって打つべき手は変わります。まずは、自社の労働分配率がどうなっているのか、生産性の悪化が業績悪化に繋がっていないか、会社を防衛するための各種規則になっているか、確認してみてください。
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この記事の著者
NBCコンサルタンツ株式会社
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