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中小企業にとって働き方改革とは?対応法とチェックポイント

2022.05.21

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この記事の著者

NBCPlusオンライン編集部

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働き方改革とは「一億総活躍社会」実現に向けた取り組みです。少子高齢化などを背景に、魅力ある職場づくりを通じて人手不足対応・生産性改善などを目指します。背景やその目指すところ、メリットある対応法やチェックポイント、現状やコロナ禍の影響についてやさしく解説します。

INDEX

いまさら聞けない働き方改革とは何か

働き方改革は「一億総活躍社会」実現に向けた取り組み

働き方改革は、国が進める「一億総活躍社会」実現に向けた取り組みで、企業規模にかかわらず取り組まなければならない課題となっています。同時に、働き方改革は少子高齢化や格差固定の解消、公正で多様な労働環境の実現などの課題を解決し、中間層の厚みを増し成長と分配の好循環を実現しようとする政策のひとつです。

目玉は(1)長時間労働の是正、(2)同一労働同一賃金の2つ。

なかでも罰則付きの時間外労働の上限規制は、労働基準法70年の歴史のなかで長く実現できなかったことを成し遂げた画期的な改革でした。時間外労働の上限規制で、現場が知っておくべき概要は以下のようなものです。

  • 時間外労働(休日労働を含まない)の上限は、原則として月45時間・年360時間
  • 上記は臨時的な特別の事情がなければ超えることはできない
  • 臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、
      時間外労働: 年720時間以内
      時間外労働+休日労働: 月100時間未満、2?6カ月平均80時間以内 とする必要がある
  • 原則である月45時間を超えることができるのは年6カ月まで ほか

さらに長時間労働の是正は、多様な働き方とともに実現されることで、労働生産性の向上が期待できることが従来の研究により明らかにされています。それは以下の4つの経路をたどるとされています。

  1. 働く人のモチベーションを高める
    長時間労働の是正・多様な働き方の実現によってワークライフバランスの取り組みを進めることで、働く人のやる気の向上や欠勤等の減少といった効果が生じることが考えられます。
  2. 優秀人材を確保しやすくなる
    ワークライフバランスの推進を社外にも広くアピールすることで、企業に優秀な人材が集まりやすくなる効果が期待されます。
  3. 採用コスト・研修コストの低下
    ワークライフバランス推進によって働く人が継続して就業しやすくなり、したがって採用コストや新規就労者への教育・研修コストが低下することが見込まれます。
  4. 業務効率化
    ワークライフバランス実現のために、企業が業務効率化に向けて工夫したり、業務分担の見直しを行ったりすることで労働生産性の向上が期待できます。

もうひとつの目玉である同一労働同一賃金とは、いわゆる正規・非正規のあいだの不合理な待遇差、例えば賃金格差などの解消を目指すものです。

同一企業・団体のなかで正規・不正規のあいだの不合理待遇差を解消する取り組みを通じて、どんな雇用形態を選択しても働く人が納得いく処遇を受けることができるようになります。さらに厚生労働省では、こうした労働基準関係法令に違反し書類送検を行った企業名を公表しホームページに掲載するようになりました。

参考:厚生労働省「長時間労働削減に向けた取組」

働き方改革の背景

(1)少子高齢化・生産年齢人口の減少と続く人手不足

国が強く働き方改革を推し進める背景には、まず何といっても少子高齢化にともなう生産年齢人口の減少があります。生産年齢人口、すなわち15~64歳人口は1995年の8726万人をピークに減少、その総人口に占める割合は1992年をピークに減少に転じているうえ、将来も減少していくことが予測されています。

昨今は中小企業の人手不足感も強まっています。中小企業庁などの調査によると、2013年第4四半期にすべての業種で従業員過不足DI(※)がマイナスとなり、その後も中小企業の人手不足感は強まり続けています。

(※)従業員過不足DI:従業員の今期の状況について、「過剰」と答えた企業の割合(%)から、「不足」と答えた企業の割合(%)を引いたもの

なお従業員規模別にいうと、おおむね従業員規模が大きい企業ほど人員が不足している、という傾向も明らかにされています。下図が従業員過不足DIです。

従業員過不足DI出所:中小企業庁・(独)中小企業基盤整備機構『中小企業景況調査』

(2)働く人々のニーズの多様化

働く人々が多様な働き方を求めるようになっていることも働き方改革の背景にあります。そこで、働く人の視点に立った課題を解決することで、よりよい働き方を実現しようと考えられています。

具体的には、ワークライフバランスを確保し健康かつ柔軟な働き方、病気治療・子育て・介護などと仕事の両立、ライフスタイルなどの変化に合わせた多様な仕事を選択できることによるキャリア構築、経済事情にかかわらない教育機会、こうしたニーズをもち働く人々を冷遇しない待遇改善などといった課題を、働き方改革により解決しようとしています。

中小企業はどう対応すれば働き方改革のメリットを享受できるか

魅力ある職場づくり

よりよい未来の展望を目指す働き方改革ですが、中小企業がその実施によってメリットを得る方法はシンプルです。

まずひとつめが「魅力ある職場づくり」です。魅力ある職場を通じて人手不足を解消し、ひいては業績向上・利益増を実現しようというのです。というのも、魅力ある職場では(1)従業員の意欲向上、(2)業績・生産性向上、(3)人材確保の効果を見込むことができるからです。

魅力ある職場づくりの方法

では、魅力ある職場はどのようにつくればよいのでしょうか。答えは「働く人の視点に立った取り組みを行えばよい」というものです。具体的には以下が考えられます。

賃金など処遇の課題

働く人の視点
  • 働き続けても収入が増えない
  • 成果を上げても賃金が上がらない
働く人の視点に立った対応例
  • 能力評価制度の導入
  • スキル・成果に応じた報酬制度の導入
  • 給与制度の整備
  • 客観性の高い人事評価制度(人事評価シートなどを用いた)
  • 退職金制度の導入

労働時間・休暇など多様な働き方を含む課題

働く人の視点
  • 業務が忙しく有給を取ることが難しい
  • 長時間勤務に悩んでいる
  • 家庭の事情からフルタイムで働き続けることが難しい
働く人の視点に立った対応例
  • 計画的な年休制度の策定・導入
  • 業務見直し・業務効率改善による労働時間の削減
  • 短時間正社員制度の導入
  • フレックスタイム制度など勤務体系の多様化、シフト制の工夫
  • テレワーク導入

キャリア・成長機会など教育に関連する課題

働く人の視点
  • キャリアの道筋が見えない、ステップアップが見込めない
  • 自分の成長が感じられない
  • 新卒など若手育成の余裕がない
働く人の視点に立った対応例
  • キャリアパスの明示
  • 能力評価制度の導入
  • スキル向上のための各種研修を実施
  • 育成段階に応じた教育研修制度の整備
  • メンター制度の導入

福利厚生に関する課題

働く人の視点
  • 福利厚生がない
働く人の視点に立った対応例
  • 人間ドック・健康診断など
  • リフレッシュ休暇や誕生日休暇などの休暇制度の導入
  • 財形制度の導入

労働生産性の向上

魅力ある職場づくりと同時に、働き方改革には労働生産性の向上もかかせません。労働生産性とは、労働者1人あたりが産み出す付加価値のことです。付加価値の計算法にはいくつかありますが、国が示している計算式のひとつは「売上高―売上原価―販管費+賃借料+給与総額+減価償却費+租税公課」と計算される価値となっています。この労働生産性は、ご存じのように日本は実質、名目ともにOECD諸国のなかで低い水準となっています。G7のなかでは最下位です。

こうした背景もあって国は働き方改革を通じた日本の労働生産性の底上げを目論んでおり、どのような中小企業で労働生産性が高いかも調査しています。実は、日本で労働生産性の高い中小企業には、一定の共通した特徴があります。それは、成長投資に積極的に取り組んでいることです。

具体的には、IT投資・設備投資などに積極的であること。そうした企業は同時に情報セキュリティなどへのリスク対応も進めています。また賃金水準が高いのも、労働生産性の高い中小企業に共通しています。結果、IT投資を積極的に行う中小企業では、売上高と売上高経常利益率の水準が高くなっています。また海外展開を行う企業は、生産性向上や国内従業員の増加を達成している傾向があることもわかっています。

では、労働生産性をあげるにはどのようにすればよいのでしょうか。

労働生産性をあげる方法

労働生産性をあげるには「付加価値を上げること」「効率の向上」の両輪で取り組むのが合理的です。では、それぞれどのような取り組みが考えられるのでしょうか。

付加価値の向上

付加価値を上げるとは、取りも直さず提供する商品・サービスの価値を上げることです。例えば以下のようになるでしょう。

  • (1)新規顧客層への展開
  • (2)商圏の拡大
  • (3)独自性・独創性の発揮
  • (4)ブランド力の強化
  • (5)顧客満足度の向上
  • (6)価値や品質の見える化
  • (7)機能分化・連携
  • (8)付加価値向上につながるようなIT利活用

効率の向上

労働生産性の分母、すなわち従業員人数(時間)を小さくすること、すなわち工数低減も労働生産性の向上につながります。例えば以下のものがあげられます。

  • (9)商品生産プロセスの改善
  • (10)サービス提供プロセスの改善
  • (11)効率化につながるようなIT利活用

働き方改革に取り組む際の5つのチェックポイント

このようにして、魅力ある職場づくりと労働生産性の向上を実現することで中小企業は働き方改革のメリットを享受することができます。このとき、具体的に実施していくうえで注意が必要なポイントがあります。それは以下の5つです。

(1)36協定(サブロクきょうてい)

原則的に、労働基準法に定められた労働時間・休日に関する取り決めは「労働時間上限は1日8時間および1週間40時間」「休日は毎週少なくとも1日」というものです。ただし従来は特別の事情が予測される場合には特別条項付きの36協定を締結すれば、限度時間を超える時間まで時間外労働をさせることが可能でした。しかし、法改正により冒頭に挙げた時間外労働の上限規制、原則として月45時間・年360時間を超える時間外労働をさせる場合には臨時的な特別の事情がなければならず、そうした事情がある場合でも36協定を労使で締結・届出しなければならなくなりました。

これに違反すると、罰則6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられるおそれがあります。

(2)労働条件の書面等交付

労働基準法では労働契約を結ぶときには労働者に労働条件の明示義務が使用者に課されています。従来、明示方法は書面交付に限られていましたが、いまは労働者が希望すればFAXや電子メール、SNS等でも明示できるようになりました。ただし出力して書面を作成できるものに限られる、とされています。

明示しなければならない労働条件は、以下のものです。

  • 契約はいつまでか(労働契約の期間)
  • 期間の定めのある労働契約の更新についての決まり(有期労働契約の場合の更新の有無、更新判断のしかたなど)
  • 労働者がどこでどのような仕事をするか(勤務場所と従事する業務)
  • 仕事の時間や休み(仕事の始めと終わりの時刻、残業有無、休憩、休日、休暇、交代勤務のローテーションなど)
  • 賃金はどのように支払われるか(賃金の決定、計算・支払いの方法、締め切りと支払日の時期)
  • 労働者が辞めるときの決まり(解雇事由を含む退職に関すること)

(3)就業規則の作成・届出

常時10人以上の労働者を使用する事業所は、必ず就業規則を作成して労働基準監督署に届け出なければいけません。就業規則に記載が必要な事項は以下です。

  • 始業および終業の時刻、休憩時間、休日・休暇。また労働者を2組以上に分けて交代で働かせる場合の、交代の日や順序などに関する事項
  • 賃金に関する事項
  • 退職に関する事項

(4)法定帳簿の作成・保存義務

労働者を雇用したら、必ず法定帳簿を整え保存する義務があります。以下にあげる主な帳簿を法定三帳簿と呼び、保存期間はいずれも起算日から3年となっています。ただし退職金に関するものは5年間、雇用保険の被保険者資格に関するものは4年間、安全衛生に関するものは一定期間保存が必要とされています。

・労働者名簿(法107条)

労働者氏名、生年月日、履歴、性別、住所、従事する業務の種類、雇い入れ年月日、退職や死亡年月日・その理由や原因などを記載します。

・賃金台帳(法108条)

労働者氏名、性別、賃金の計算期間、労働日数、労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数、休日労働時間数、基本給や手当等の酒類と額、控除項目と額などを記載します。

・出勤簿等(法108条関係)

出勤簿やタイムレコーダー等の記録、使用者が自ら始業・終業時刻を記録した書類、残業命令書およびその報告書、労働者が記録した労働時間報告書などを記載します。ほかにも労働条件通知書、労使協定書ほか定められた書類を作成・保存しましょう。

(5)不合理待遇差の禁止

正規・非正規のあいだの、賃金や教育訓練などにおける不合理な待遇差は禁じられています。つまり同一労働統一賃金の「同じ職務には、同じ賃金を払いましょう」という考え方で、賃金・福利厚生・教育機会などにも適用されます。逆にいえば待遇差が合理的に説明できるならば認められるということでもあります。職務内容、職務内容・配置の変更の範囲、その他の事情といった客観的・具体的な実態に照らした説明ができなければいけません。

ワークライフバランス改善と労働生産性向上を

働き方改革とは「一億総活躍社会」実現に向けた取り組み。少子高齢化と働く人のニーズ多様化などを背景に、魅力ある職場づくりを通じ、働く人々の置かれた事情に応じて多様な働き方を選ぶことができる社会の実現によって成長と分配の好循環を構築し、働く人々がよりよい将来の展望を持てるようにすることを目指します。

中小企業が働き方改革によるメリットを享受するためには、従業員の視線に立った取り組みが大切。事実、企業のあいだでは取り組みが進んでいます。一方で医療・福祉などの現場からは「実現は困難」「中小企業は疲弊する」といった厳しい意見も散見されるようです。

(令和2年度第3次補正事業再構築補助金により作成)

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