『日本人の勝算:人口減少×高齢化×資本主義』デービッド・アトキンソン:著/東洋経済新報社こちらの本を読んで感じたことを記載しています。
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目次
「人口減少×超高齢化時代に向けて国・企業が考え方を根本から見直す必要がある。生き残る道は最低賃金の引き上げである。」
先日読んだ書籍『日本人の勝算』に記載されていた内容です。
さまざまなレポートや世界の統計資料をもとに他国と比較しながら「最低賃金の引き上げ」こそが日本経済を救うという趣旨で論じられています。
今回の参議院選挙(2019年7月4日公示)でも各党が最低賃金の引き上げを公約に掲げていました。「全国一律で最低1,500円」を掲げる政党もありましたが、中小企業の経営者たる皆様はどう感じられたでしょうか?
「ただでさえ人件費負担が重いのに、最低賃金1,500円!?そんなに給与を払ったら赤字に転落する!」
毎年約6~7割の企業が、法人税を納めていない欠損法人であるという現状です。
「(賃金引き上げなんて)とんでもない!」と思われる方も多いことでしょう。
しかし、以下の統計などからも日本における最低賃金の引き上げは、避けては通れないと想定しておかねばならないようです。
日本の人材評価ランク(世界経済フォーラム発表)は世界第4位。にも関わらず、生産性要因の成長率が世界平均の半分程度。しかも最低賃金は先進国の中でも最低レベル。
2015年から2060年にかけて日本の生産年齢人口は3,264万人減少する見込み。これは、現在名目GDP世界第5位のイギリスの全労働者人口3,211万人に匹敵。すなわち人口増加による経済成長はまったく見込めない。※イギリスでは国策として賃金引き上げ・リカレント教育普及を強力推進
移民を受け入れても上記の人口減少の穴は到底埋められない。しかも、安い労働力を使うという観点で移民が優遇されるとさらに生産性が下がり、本末転倒。
「今までは有能な人材を極めて安い賃金で雇えていたから利益が出ていた。かつ、生産性向上は他国と比べてまったく進んでいない。
しかし、これからはどの国も経験したことのないスピードで人口減少と超高齢化が進行する。その状況下で必要な人材を確保し続けるには年率4%~6%のペースで最低賃金を上げなければならない。
すなわち人件費を上げると利益が出せない企業は淘汰され、生産性の高い企業が生き残るのみである。」
と著者は述べています。
もちろん上記以外にも女性の社会進出・輸出の拡大・リカレント教育の普及など取り組むべきことはありますが、本書を読めば読むほど賃金引き上げは避けては通れず、パラダイムシフトが必要なのだと痛感せざるをえません。
日本という船が賃金引き上げへと大きく舵を切った時に、真っ先に煽りを食うのは中小企業だと思って間違いないでしょう。特に地方では、ただでさえ最低賃金が低いので、仮に全国統一の賃金制度が制定されると、その影響は計り知れません。
(世界的には地域ごとの最低賃金の設定は稀です。)
政策が、いつどのように変更になるかはわかりませんが、上記を想定した上で準備をしておかなければならないことだけは確かです。
社員にどれだけ付加価値のある仕事をさせているか?
人件費を上げても利益は確保できるか?
巨大な時代の潮流に飲み込まれないためにも、社員一人ひとりの自立を促し、付加価値の高い仕事をさせ、利益を稼ぎ出す組織への変革が求められます。
弊社においても「自分の給与は自分で決める」という方針のもと、成果には報酬を与えるという評価制度を展開しています。
安い賃金で企業を運営するのではなく、高い報酬を自ら稼ぎ出す仕組みづくり・動機づくりが、いま経営者に求められています。
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NBCコンサルタンツ株式会社
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