労働生産性とは「投じた資源に対するアウトプットの比率」を意味する言葉です。売り上げや利益を増やしたり、ビジネスを成長させたりする上で重要な指標です。日本の労働生産性は先進国の中でも最低クラスであり、早急な改善が求められています。
当記事では、労働生産性の種類や日本の労働生産性が低い現状と理由、労働生産性の向上を実現する方法について紹介します。「自社の労働生産性を上げたい」「自社の成長を実現したい」という人は、ぜひ参考にしてください。
目次
1.労働生産性とは
生産性とは、投入した資源がどれだけ有効に活用されているかを示す指標です。有形・無形を問わず、何かを生産するときには設備・人材・原材料・エネルギーなどの生産諸要素が必要となります。
日本生産性本部によると、生産性は次の計算式で表されます。
生産性=産出(output)/投入(input)
生産性にはいくつか種類があり、その中でも「労働者数に対する生産量の割合」が労働生産性と呼ばれるものです。労働生産性は、労働者1人当たり、あるいは労働1時間当たりの生産量の割合として認知されています。
1-1.労働生産性の種類
労働生産性には、物的労働生産性と付加価値労働生産性の2種類があります。それぞれの意味や概要は下記の通りです。
物的労働生産性 | 生産量や販売金額などがアウトプットに該当します。インプットした労働量に対して、どれだけの生産量が得られたかを示す指標です。 |
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付加価値労働生産性 | アウトプットにおける付加価値に着目した指標です。単純な生産量ではなく「どれだけ新たな価値を生み出したか」に焦点が当てられます。 |
労働生産性について考える際は、上記2つの考え方の違いを理解しておくことが重要です。2つの概念を混同してしまうと、労働生産性について正しい評価ができなくなるため注意しましょう。企業の成長を目指す場合は、物的労働生産性と付加価値労働生産性の2種類に分けて測定し、それぞれを効果的に向上させる方法を考える必要があります。
労働生産性については、下記のページでさらに詳しく解説しています。
2.日本の労働生産性が低い現状
日本の労働生産性は、先進国の中でも特に低い水準です。労働生産性を評価する基準として、時間当たり・1人当たり・製造業の労働生産性などがありますが、国際的に見るといずれも低い水準を推移しています。日本経済における労働生産性向上を目指すためにも、まずは現状を正しく理解しましょう。
時間当たり労働生産性
2020年の日本の時間当たり労働生産性は49.5ドルであり、OECD加盟38か国中23位となっています。アイルランドやルクセンブルクと比較すると半分以下の数値であり、データ取得可能な1970年以降、最も低い順位です。前年のデータと比較すると、労働時間の短縮により労働生産性は1.1%上昇したものの、国際的に見ると低い水準となっています。
1人当たり労働生産性
2020年の日本人1人当たりの労働生産性は78,655ドルであり、OECD加盟38か国中28位です。エストニアなど東欧・バルト諸国とほぼ同水準で、西欧諸国と比較すると低い数値となっています。時間当たり労働生産性と同様に、1970年以降、最も低い水準です。前年よりも3.9%落ち込んでおり、今後は働き方の改善が必要とされています。
製造業の労働生産性
日本の製造業の労働生産性は95,852ドルであり、OECDに加盟する主要31か国中18位となっています。アメリカの65%に相当し、ドイツや韓国をやや下回る水準です。1995年と2000年の調査では主要国で最も高い労働生産性を誇っていたものの、近年は順位が後退しています。
3.日本の労働生産性が低い理由
他国と比較すると、日本の労働生産性は低いのが現状です。日本の労働生産性が低い理由については、さまざまなものがあると言われています。数多くの原因があると言われていますが、労働生産性の定義・算出方法から、下記の2つの原因に分類できます。
- 分子の付加価値額が低い
- 分母の労働量が多い
ここでは、一般的に言われている、日本の労働生産性が低い理由について、3つに絞って解説します。それぞれの理由をよく理解して改善することで、労働生産性アップにつながるでしょう。
3-1.労働時間の長さ
労働時間が長くなると、分母の労働量が増えるため、結果として全体の労働生産性は低くなります。日本人の労働時間が長いのは、主に残業時間が多いことが原因です。
多くの日本人は「業務時間内に仕事をすべて終わらせよう」という意識が低く、1つの仕事に対して時間をかけすぎる傾向にあります。また「まわりがみんな残業しているから早く帰るのは申し訳ない」という労働環境のプレッシャーに負けて、業務効率化に取り組もうとすらしない人もいるほどです。
長時間労働が常習化している職場も多く、労働時間の長さは改善すべき課題の1つです。
3-2.チーム意識の強さ
チーム意識が強すぎると、まわりに気を使いすぎてしまうため、1人当たりの労働時間が長くなったり、業務効率に悪影響を及ぼしたりする可能性があります。
たしかに、チームで1つの仕事に取り組むことで社員同士が助け合いながら仕事を進めることができるのは1つのメリットです。しかし、自分の仕事以外に、他人の仕事に参入しなければならない場面も出てくるため、その分の時間が無駄になってしまうというデメリットもあります。
3-3.値付けの低さ
日本人の中には、生産物の値付けを必要以上に低く設定する人が多くいます。値付けが低いと、分子の付加価値額が低くなるため、薄利多売の販売モデルになってしまい、労働生産性の低下につながります。
また、日本の製造業における業務効率化は、世界的に見てもかなり高い水準まで推し進められており、これまで以上に生産効率を高めるというのは現実的ではありません。
日本人の多くは、労働生産性を高める手法として「作業の効率化」「コスト削減」「労働時間の短縮」という思考に走りがちです。しかし、労働生産性を高めるためには分子の付加価値額を高めるという視点も持つべきでしょう。
値付けを低くして大量に売ろうとすると、結果として労働時間の増加につながりかねません。労働生産性を高めるためには「安すぎる仕事を適正価格まで引き上げる」という視点を持つことも大切です。
4.労働生産性の向上を実現する方法3つ
労働生産性を向上させるためには、下記の2つを意識する必要があります。
- 分子の付加価値額を高くする
- 分母の労働量を削減する
上記2つのポイントを意識して改善を繰り返すことが重要です。以下では、具体的な方法を3つ紹介します。
新商品・サービスの開発
新商品・サービスを開発することで、分子の付加価値額を増やすことが可能です。既存の商品・サービスにはない付加価値を追加することで、値付けを高くすることができます。
個人主義の重視
個人主義を重視して業務効率化を図ることで、分母の労働量削減につながります。
チームで仕事をすると、優秀で能力のある就業者ほど他人の業務の手伝いなどに無駄な時間を取られるため、労働生産性が低下するのが問題です。個人主義を重視して、本来やるべき自分の仕事だけに集中させることで、全体としての労働生産性は向上するでしょう。
アウトソーシングの活用
アウトソーシングを導入することで、業務効率化や人件費の削減につながり、結果として全体の労働量を削減することができます。最近では、さまざまな業種で優秀なフリーランスが増えており、簡単に発注できるアウトソーシング専用のプラットフォームも登場しました。
プロジェクトごとに最適な人材を集めることで、無駄な人件費の削減につながり、成果も上がりやすくなります。資料作成などの簡単な仕事は外注したほうが、組織としての生産効率も高まるでしょう。
まとめ
労働生産性とは「投じた資源に対するアウトプットの比率」を意味する言葉で、企業の成長を目指す上で必ず考えなければならない指標です。近年の日本は先進国の中でも労働生産性が低いほうで、今後の改善が期待されます。
労働生産性の向上を実現するためには、「付加価値額を高くする」「労働量を削減する」の2点を意識して改善を繰り返すことが大切です。「自社の成長を実現したい」という人は、労働生産性の向上を意識した具体的な改善策を取り入れてみてください。
(令和2年度第3次補正事業再構築補助金により作成)
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