企業の業績を向上させるために、労働生産性の向上は欠かせません。日本生産性本部の資料によると、労働者の55.5%が勤め先の業績に不安を感じていると発表しています。
企業の利益を上げて社員に安心してもらうためにも、生産性向上は避けては通れない課題です。とはいえ、労働生産性を上げる具体的な方法を知らないという人は多いでしょう。
そこで今回は、労働生産性を上げる具体的な施策をご紹介します。自社の労働生産性を上げ、売上アップや自社の成長を目指したい中堅・中小企業の経営者の方は、ぜひお読みください。
目次
1.労働生産性の定義
労働生産性とは、一定の労働力をもとに生み出される生産量や生産額の割合です。有形無形を問わず、何かを生み出すために必要な労働量がどれくらいかを割合で表します。
労働生産性は、下記の2種類に分かれます。
- 物的労働生産性
- 付加価値労働生産性
物的労働生産性とは、労働時間や労働した人数によって生産量や販売個数がどれだけ生まれたかを測る指標です。一方、付加価値労働生産性とは労働時間や労働した人数によって、どれだけの利益や成果を生み出せたかの指標を意味します。
労働生産性に関するさらに詳しい定義や考え方については、以下のページで詳細に解説しています。
2.労働生産性を上げる5つのステップ
労働生産性を上げるためには、綿密な計画が必要です。事前に意思統一をすることで、社員からの不満や不信感を回避できます。
では、具体的にどのようにして意思統一をすればいいのでしょうか。ここでは、社員のモチベーションの低下を避けるために、踏まえておくべき5つのステップを解説します。
(1)現状分析を行う
現状分析は、労働生産性を上げるための第一歩です。業務の流れや社員のパフォーマンスなど、業務に関わるあらゆる項目を見える化しましょう。現状分析には、労働生産性の計算を利用します。
労働生産性の具体的な計算方法については、以下のページで詳細に解説しています。
(2)KPIを設定する
業務の現状分析を終えたら、KPIを設定します。目標を達成する際に、KPIは現時点の状態を把握するために必要な指標です。KPIを具体的に設定する場合「期限が定まっていて、最終目標に関連した明確で計量できる達成可能なもの」が必要となります。
KPIの設定は社員の意思統一に加えて目標達成率の向上に関わるため、具体的に設定しましょう。
(3)ボトルネックを洗い出す
ボトルネックの洗い出しも生産性向上には欠かせません。根本的な問題解決をするためには、労働生産性が向上しない原因に目を向けることが必要です。ボトルネックの洗い出しにはさまざまな方法がありますが、下記の4点を軸に見直します。
- 時間がかかりやすい業務や作業
- 対応する頻度の高い業務や作業
- ミスが連続して起こる業務や作業
- 想定より時間をかけてしまう業務や作業
ボトルネックを洗い出し、自社の根本的に改善すべき問題を可視化しましょう。
(4)改善施策について調査する
改善すべき部分が明らかになったら、生産性向上に向けた改善施策について調査します。具体的には、どのような方法で改善部分にアプローチするのか、補助金や助成金といった制度は活用できるかを調べます。
補助金や助成金を活用できれば、低コストでツールなどの導入が可能です。ただし、生産性を向上させるといっても、企業から投じる資金とのバランスは考慮しなければなりません。
(5)具体的な改善施策を実施する
改善施策の調査が終わったら、次に労働生産性を高める具体的な施策を実施します。施策の実施においては、過程で問題が生じないかどうかこまめにチェックすることがポイントです。問題が発生しても対処できるように、具体的なアクションプランを立てましょう。
3.労働生産性を上げる5つの方法
労働生産性を上げる方法は多岐にわたります。自社にマッチした方法を取ることで、労働生産性の向上につなげることが可能です。
今回は、具体的な施策を5つ紹介します。
- 各種のITツールを活用する
- チャットツールを導入する
- 業務の標準化を実施する
- テレワークを導入する
- 各スタッフのスキルアップを図る
3-1.各種のITツールを活用する
労働生産性を上げる方法として、ITツールの活用が挙げられます。作業やデータの管理に必要な業務効率をシステム化することで、業務効率化を期待できます。AIやIOTを活用した「RPA」が代表例です。
RPAは、AIでさまざまなパターンを学習させたロボットによる作業の代行システムを指します。データの管理や会計業務をはじめ、人事評価や労務管理もITツールのサポート対象です。ITツールによって業務をシステム化できれば、労働生産性の向上も期待できるでしょう。
3-2.チャットツールを導入する
チャットツールの導入も、労働生産性を上げる方法としておすすめです。宛先や挨拶文をメールのように記入する必要がなく、社内外のコミュニケーションに必要な時間的コストを削減できます。
ファイルの共有やミーティング管理をチャット内で行える点も、大きな魅力です。社内外の連携に時間がかかっている場合や、資料やスケジュールの共有がスムーズに行えていない場合は、チャットツールの導入を検討しましょう。
3-3.業務の標準化を実施する
業務の標準化も、労働生産性を上げる方法として効果があります。業務の標準化とは、業務における属人化を解消することです。具体的には、マニュアルやルールの策定を行います。
失敗しやすい業務や項目が分かるため、複数人で同じ業務を行う場合や、属人化した業務を行う場合に有効です。業務の標準化がまだ行えていない企業は、まずマニュアルやルールの整備に取りかかりましょう。
3-4.テレワークを導入する
テレワークの導入も、労働生産性を上げる方法としておすすめです。テレワークは、会社に勤務せず自宅やレンタルオフィスで仕事を行うことをいいます。在宅勤務のため通勤や移動にかける時間がなくなり、業務時間を確保しやすい点が特徴です。
自宅で業務ができると、オン・オフの切り替えも柔軟に行いやすくなります。オン・オフの切り替えにより、集中して業務に臨める時間を作れるため、結果として労働生産性が上がります。業務に集中できる環境を整備すると、働き方における従業員満足度も上がるため、テレワークの導入は労働生産性を上げる方法として有用です。
3-5.各スタッフのスキルアップを図る
労働生産性を上げるためには、各スタッフのスキルアップや、人材育成を促す環境の整備も大切です。スタッフ1人当たりの作業効率が低い場合、いくらシステムやツールが優れていても労働生産性の向上は難しいでしょう。
スタッフのスキルアップを図るためには、研修やOJTをはじめ、積極的に資格取得やセミナーへの参加を促すことが有効です。資格取得やセミナー参加に向けた費用を補助するなどして、社員のスキルアップをサポートしましょう。
社内外でスタッフのスキルアップが図れる環境が整うと、結果として企業全体の労働生産性の向上が期待できます。
まとめ
今回は、労働生産性を上げるための手順と方法について解説しました。労働生産性を上げる方法は多岐にわたります。企業ごとに課題は違うため、自社のウィークポイントに合った方法で対策しましょう。労働生産性を上げる方法としては、ITツールの活用、チャットツールやテレワークの導入、スタッフがスキルアップを図るために必要な支援などがあります。
労働生産性が上がると、企業を経営する上でさまざまなメリットが生まれます。企業の利益や売上につながる他、社員も自社の成長に喜びを感じられるでしょう。当記事で紹介した施策を参考に、ぜひ自社の成長につながる行動を起こしましょう。
(令和2年度第3次補正事業再構築補助金により作成)
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