FIFAワールドカップ、日本代表は惜しくもベスト16で敗退しましたが、非常に見応えのある試合内容であったと同時に、「世代交代」という4年後への課題も見えた試合でした。
サッカー日本代表の世代交代の課題は、ある意味後継者問題に悩む中小企業に似ていると感じました。
今回は、悩める中小企業の現状を少しでも解決すべく、平成30年に大幅に拡充された
「事業承継税制」の活用について触れてみたいと思います。
目次
事業承継の現状
中小企業経営者の引退年齢は平均で70歳前後であり、今後5年程度で多くの中小企業が事業承継のタイミングを迎えるといわれています。
しかし、後継者がいないという固定観念や進め方・現状についての認識不足などにより、事業承継の準備を先送りにしているのが多くの中小企業の実態ではないでしょうか?
日本にとって最大の損失は、業績の良い会社、業績改善できる会社がこれからも存続可能な状況にも関わらず廃業してしまうことです。
そうならないためにも中小企業がこれまでの経営基盤を損なわないように、事業承継に向けた取り組みをスムーズに進めることが、経営者と後継者のみならず、
日本のこれからを左右する重要な課題となっています。
■これまでの事業承継への課題(財産面)
会社のオーナーは、会社の株式(自社株)という財産を持っています。
自社株は非常に高い評価額となることが多く、承継の際に多額の相続税がかかってくる可能性があります。
つまり、換金性が全くないにもかかわらず、多額の相続税を支払う必要が生じるということです。
これまでの事業承継において、大きな価値の株式を大量に持ったまま、その会社のオーナーが亡くなってしまった場合、多額の相続税を支払うことができず、自社株をまとめて後継者に引継ぐことができない状況にありました。
これでは会社経営に大きな影響がでてしまいます。
平成30年改正 事業承継税制の概要
事業承継税制を受けるための条件をクリアできれば、株式にかかる贈与税や相続税が、最終的に100%免除されます。
わかりやすく言うと「中小企業が次世代に事業承継するのであれば、相続税や贈与税を大幅に減免する」という内容です。
「何億円規模にもなる税金を免除してもいいから中小企業に頑張ってもらいたい」という政府の本気度が伝わってくる改正となっています。
主な改正の内容
主な改正の内容は以下の6つです
- 1)緩和措置は平成30年(2018年)1月1日から平成39年(2027年)12月31日まで5年間の時限措置。
- 2)納税猶予対象株式が3分の2から100%全部対象になった。
- 3)猶予税額が80%から100%全額猶予になった。
- 4)承継する側1名、承継を受ける側1名の1対1だったが、承継を受ける側が3名までカバーされることになった。
- 5)雇用確保要件が、従業員の8割を5年間雇用(継続雇用できなければ猶予停止)だったが、支援機関を通じて申請すれば猶予を継続。
- 6)承継後に廃業や事業譲渡したら猶予停止だったが、廃業や譲渡時の時価で税額を再計算して納税すればOK。
主な先代の経営者の要件
主な先代の経営者の要件は以下の3つです
- 1)会社の代表者であったこと。
- 2)贈与時に代表権を有していないこと。
- 3)先代の経営者と同族の関係者で総議決権の50%以上を有し、かつ後継者を除く同族内で筆頭株主であること。
※先代の経営者以外の場合でも、すべての個人株主が適用対象。
(親族・親族外は関係なし)
主な後継者の要件
主な後継者の要件は以下の3つです
- 1)会社の代表者であること。
- 2)20歳以上で、役員就任から3年以上経過していること。
- 3)後継者と同族の関係者で総議決権数の50%超を有し、かつ同族内で筆頭株主となること。(3名まで適用対象)
ほかにも確認すべき要件やメリット・デメリットはありますが、まずは下記の2つを参考にしながら
- 後継者候補の選定や育成
- 会社の経営状態の把握
- 自社株評価
- 事業承継税制活用の検討
- 事業承継計画の作成
など、事業承継に向けた取り組みを始めてみましょう!
▼ 中小企業庁「経営者のための事業承継マニュアル」
http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2017/170410shoukei.htm
▼ 平成30年5月に更新された、経済産業省「ローカルベンチマーク」
http://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/locaben/
税法・法律改正
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この記事の著者
NBC税理士法人
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