事業承継は、企業の将来において非常に重要なトピックです。特に、経営者の引退や事業の継続を考える際には、スムーズな承継計画が不可欠となります。
ここで注目すべき手法の一つが、持株会社を活用した事業承継です。
本記事では、持株会社を活用した事業承継の概要や種類、そしてメリットとデメリットについて解説します。経営者の皆様や事業承継に関心のある方々にとって、有益な情報を提供できることを願っています。
目次
持株会社と事業承継について
持株会社は、事業承継において重要な役割を果たします。基本理解として、持株会社とは支配することを目的に傘下の会社の株式を保有し、会社の経営を統括する組織のことを指します。その役割は、子会社の管理や戦略的な経営指導、資金の調達、リスクの分散など多岐にわたります。
持株会社には様々な種類と特徴がありますが、そのうちの一つは、完全子会社を持つ持株会社で全株式を保有して経営を行う形態です。また、関与子会社を持つ持株会社では、株式の一部を保有し経営に参画する形態があります。このような特徴によって、持株会社は事業承継において適切な手法を選択することができます。
持株会社の理解と役割、さらには種類と特徴について、以下の内容で詳しく解説していきます。
持株会社の基本理解
持株会社の基本理解を、以下に箇条書きで説明します。
- 複数の関連会社の株式を保有し、経営を統括する組織。
- 子会社の経営管理や戦略的な経営指導を行う。
- 資金の調達やリスクの分散にも活用される。
- 所有権と経営権の分離が可能であり、事業の承継に柔軟な方法を提供する。
- 完全子会社を持つ形態と関与子会社を持つ形態がある。
持株会社は、関連会社の株式を保有することで経営権を行使し、効果的な経営体制を確立します。また、子会社の経営管理や戦略的な指導を通じて、企業群の価値を最大化する役割を果たします。所有権と経営権の分離によって、事業承継においても継続的な経営が可能となります。
持株会社の定義と役割
以下に改めて、その定義と役割について整理していきます。
定義
持株会社は、他の会社の株式を保有する企業であり、「持ち株会社」とも表現されます。持株会社は関連会社の株式を所有することで、支配力を行使し、経営を統括します。
役割
子会社の管理と指導
持株会社は子会社の経営管理や戦略的な経営指導を行い、統制を図ります。
資金の調達
持株会社は子会社からの配当や資金調達を通じて、グループ全体の資金繰りを管理します。
リスクの分散
持株会社は関連会社を多様な業種や地域に展開させることで、単一の事業に依存せずにリスクを分散します。
所有権と経営権の分離
持株会社の存在により、経営者は所有権と経営権を分離することができ、事業承継や経営継続をスムーズに行うことができます。
持株会社の種類と特徴
種類
- 完全子会社を持つ持株会社:全株式を保有し、経営を行う形態です。
- 関与子会社を持つ持株会社:一部の株式を保有し、経営に参画する形態です。
完全子会社を持つ持株会社の特徴
- 完全に子会社を支配することができる。
- 経営権の行使によって、一貫した戦略的な経営が可能となる。
- 子会社の統合や再編を容易に行える。
関与子会社を持つ持株会社の特徴
- 株式の一部を保有することで、子会社の経営に参画できる。
- 子会社の自主性や独自性を尊重しながら、経営指導や資源の共有を行える。
- 子会社の特定の分野や地域における専門性を活かした運営が可能。
持株会社の種類と特徴によって、経営の形態や戦略が異なります。完全子会社を持つ持株会社は、経営権の完全な行使が可能であり、統合や再編などの柔軟な経営手法が取れます。
一方、関与子会社を持つ持株会社は、子会社の自主性を尊重しながらも経営参画ができ、専門性や地域性を活かした運営が行えます。経営者は、事業承継や経営戦略に合わせて適切な持株会社の種類を選択することが重要です。
持株会社を活用した事業承継のメリット
持株会社を活用した事業承継には、以下のようなメリットがあります。
経営権と所有権の分離
持株会社を介することで、経営権を継承者に移譲しつつ、所有権を保持することが可能です。これにより、経営者としての責任を継承しつつ、事業を継続できます。
税務上の優遇措置
持株会社を介することで、事業承継における税務上の優遇措置を受けることができます。税務上の優遇措置には、相続税や贈与税の軽減措置や繰延納税などがあります。
経営の継続性
持株会社を通じて事業を承継することで、経営の継続性が確保されます。継承者は経営経験やスキルを持つ必要がなく、専門的な経営指導を受けながら安定した事業継続が可能です。
リスク分散と成長戦略
持株会社は複数の子会社を保有するため、リスクの分散ができます。また、子会社間のシナジー効果や資源の共有により、成長戦略の展開がしやすくなります。
株式の運用や資金効率の向上
持株会社は子会社からの配当や資金調達を行い、資金効率を向上させることができます。さらに、持株会社の株式は市場で売買可能であり、株主への資産価値の還元が容易です。
持株会社を活用した事業承継には、経営権と所有権の分離、税務上の優遇措置、経営の継続性、リスク分散と成長戦略、株式の運用や資金効率の向上などのメリットがあります。経営者はこれらのメリットを活かしながら、事業の承継を検討することが重要です。
持株会社を活用した事業承継のデメリット
持株会社を活用した事業承継には、以下のようなデメリットが存在します。
経営権の分割と意思決定の複雑化
持株会社を介した事業承継では、経営権と所有権が分離するため、意思決定プロセスが複雑化します。子会社とのコミュニケーションや意思統一が課題となることがあります。
経営の統制と純資産の分配
持株会社が子会社の経営を統制する一方、子会社からの利益を適切に分配する必要があります。利益の配分に関する紛争や不均衡が生じる可能性があります。
法的・会計的な複雑さ
持株会社を活用した事業承継には、法的および会計的な複雑さが伴います。株主間の契約や規制順守、税務申告などの手続きが必要であり、専門的な知識とアドバイスを必要とする場合があります。
財務面の制約
持株会社を通じた事業承継には、財務面の制約が存在します。子会社の負債や経営状況が持株会社に影響を及ぼす可能性があり、財務的なリスクが増加する場合があります。
子会社間の競争や利益配分の葛藤
持株会社が複数の子会社を所有する場合、子会社間の競争や利益配分に関する葛藤が生じることがあります。競合関係や利益分配の不公平感が問題となることがあります。
以上が、持株会社を活用した事業承継の主なデメリットです。経営者はこれらのデメリットを理解し、慎重な計画と適切なアドバイスを得ながら事業承継を進めることが重要です。
持株会社を活用した事業承継の手順
事業承継において、持株会社を活用する手順は重要です。まずは、承継計画の策定から始める必要があります。適切なタイミングでの計画策定や家族や関係者とのコミュニケーションが必要となります。
次に、持株会社の設立を行います。持株会社の設立は、法的手続きや財務面の調整を含みます。
最後に、事業承継を実施します。経営権と所有権の移行、子会社との連携などを円滑に進める必要があります。これらの手順を適切に進めることで、持株会社を活用した事業承継を成功させることができます。
承継計画の策定
事業承継においてはまず、適切な承継計画を策定することが肝要です。以下に、承継計画の策定について説明します。
タイミングと計画策定
- 承継のタイミングを適切に判断し、計画策定の準備を行います。
- 経営者や関係者の意向や将来の展望を考慮しながら、計画の方向性を定めます。
コミュニケーションと関係者の参画
- 家族や従業員、関係者との円滑なコミュニケーションを図ります。
- 承継に関わる人々の意見や要望を聴取し、参画させることで合意形成を促します。
財務・法的な側面の検討
- 資産評価や法的手続きに関する専門家のアドバイスを受けます。
- 財務面や法的な制約を検討し、円滑な承継プロセスを確保します。
リスク管理と事業継続性
- 承継に伴うリスクや障害を予測し、対策を検討します。
- 事業の継続性を確保するために、リスク分散や経営者のサポート体制などを検討します。
相続税や贈与税の最適化
- 税務上のメリットを活用するため、相続税や贈与税に関する計画を立てます。
- 最適な税務戦略を検討し、負担を軽減することを目指します。
承継計画の策定は、事業の継続と円滑な承継のために欠かせません。経営者はタイミングの把握、関係者の参画、財務・法的側面の検討、リスク管理、税務最適化などを考慮しながら、事業承継の計画を練り上げることが重要です。
持株会社の設立
事業承継において、持株会社を活用する場合は、まず持株会社の設立が必要です。以下に、持株会社の設立について説明します。
法的手続きの遵守
- 持株会社の設立には、法的な手続きを遵守する必要があります。
- 法人登記や役員の選任、設立時の規定など、関連する法的な要件を満たす必要があります。
資金の調達と財務体制の整備
- 持株会社の設立には、資金の調達が必要となります。
- 資金調達の方法や財務体制の整備を検討し、持株会社の適切な財務基盤を築きます。
役員や組織の設置
- 持株会社の設立には、役員の選任や組織の設置が必要です。
- 経営者や関係者の適切な役割分担や組織体制を構築し、持株会社の運営を行います。
株式の取得と保有
- 持株会社の設立には、他の会社の株式を取得し保有する必要があります。
- 株式の取得方法や取得額、保有比率などを決定し、持株会社が子会社を統括できる株式保有状況を整備します。
規制順守とコンプライアンスの確保
- 持株会社の設立には、規制順守とコンプライアンスの確保が不可欠です。
- 法的な要件や申告義務、内部統制の確立など、適切なガバナンス体制を構築します。
以上のとおり、持株会社の設立には、法的手続きの遵守、資金の調達と財務体制の整備、役員や組織の設置、株式の取得と保有、規制順守とコンプライアンスの確保などの要素が関わります。経営者はこれらの要素を考慮し、持株会社の設立プロセスを適切に進める必要があります。
事業承継における持株会社の実施事項や役割
次に、事業承継における持株会社の実施事項や役割を整理して説明します。
持株会社における事業承継時の経営権と所有権の移行
- 持株会社を介して経営権を継承者に移行し、所有権は持株会社が保持します。
- 経営権の移行には、関係者との合意形成や契約書の作成が必要です。
子会社との連携と統制
- 持株会社は子会社を統括し、経営指導や戦略的な経営を行います。
- 子会社との連携を強化し、持株会社のもとでの経営体制を確立します。
リソースの共有とシナジー効果
- 持株会社を通じて子会社間でリソースやノウハウを共有し、シナジー効果を追求します。
- 共通の戦略やビジョンに基づいて、持株会社と子会社の間での協力体制を築きます。
経営者のサポートと継続的な経営指導
- 持株会社は経営者に対してサポートを提供し、継続的な経営指導を行います。
- 経営者の成長支援や意思決定のサポート、戦略的なアドバイスなどが行われます。
ブランド価値や資産価値の維持
- 持株会社はブランド価値や資産価値の維持に努めます。
- グループ全体のイメージ戦略や資産管理、ブランド価値の向上に注力します。
事業承継の実施には、経営権と所有権の移行、子会社との連携と統制、リソースの共有とシナジー効果、経営者のサポートと継続的な経営指導、ブランド価値や資産価値の維持などの要素が関与します。持株会社を通じて事業承継を実施する際には、これらの要素を総合的に考慮しながらスムーズな承継プロセスを進めることが重要です。
まとめ
持株会社を活用した事業承継は、関連会社の株式を保有し経営を統括する手法です。完全子会社と関与子会社の種類があり、経営権の移行や税務上の優遇措置、リスク分散などがメリットとして挙げられます。
しかし、意思決定の複雑化や財務制約などがデメリットとして考えられます。経営者は事業継続と継承計画を考慮し、適切な持株会社の形態を選ぶことが重要です。
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