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事業承継の失敗事例6つ|要因・対処法も解説

2022.12.23

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事業承継を実施しても、適切に行うことができなかったことが原因で、失敗してしまうケースが少なくありません。事業承継が失敗してしまうと、最悪の場合は企業が倒産してしまうことがあります。

この記事では、事業承継が失敗してしまった事例について、失敗の要因や失敗を回避するための対処法を交えて解説します。後継者にきちんと事業を引き継ぎたいと考えている企業経営者の方は、事前の対処が成功と失敗を分ける鍵となるため、ぜひご覧ください。

目次

1. 事業承継の失敗が招く4つの事態

事業承継が失敗した場合、次の4つのリスクが発生します。

(1)廃業・倒産

企業の存続が難しくなり、廃業や倒産に追い込まれることがあります。事業承継は、経営者の交代によって企業に大きなインパクトを与えます。万が一事業承継に失敗した場合、経営の立て直しは至難の業です。企業が廃業や倒産して従業員が解雇されると、従業員の生活にも大きな影響を与えてしまいます。

(2)業績悪化

事業承継に失敗すると、取引先との契約が打ち切られるといったリスクが生まれ、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3)退職者の増加

退職者の増加も懸念されます。経営者交代による急激な社内改革や経営方針の転換が行われると、社員が順応できずに離職することが考えられます。また、業績悪化にともない雇用環境が悪くなることも、退職者を増やす原因になるでしょう。人材の流出は事業の生産性を低下させ、企業の存続に大きな影響を及ぼします。

(4)資金繰りの悪化

事業承継に失敗し業績が悪化すると、金融機関から融資を受けられなくなる恐れがあります。企業運営に資金が必要であることは言うまでもありません。資金繰りがうまくいかない場合、廃業や倒産する事例も多くあります。

資金繰りについては、下記のリンク記事で詳しく解説しています。

資金繰りとは?悪化原因や黒字倒産の危険性も解説

資金繰りとは?悪化原因や黒字倒産の危険性も解説

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2. 事業承継が失敗した6つの事例|要因・対処法も

事業承継を成功させるためには、過去の事例から失敗要因や適切な対処法を学ぶことが大切です。起こりうる問題に対して事前に対策を講じることで、事業承継が円滑に実施できるでしょう。

ここでは、代表的な事業承継の失敗事例6つを要因と対処法も含めて解説します。

2-1. 準備不足により社内が混乱する

【概要】

経営者は健康に自信があったため、すぐに引退することは考えていませんでした。そのため、息子を後継者に指名する以外に何も準備をしていません。しかし、経営者の突然の病気により、急きょ息子が代表に就くことになりました。

新体制に移行するための対応に追われ社内は混乱します。さらに、新代表である息子は経営の経験が乏しかったため、企業は経営不振に陥りました。

【要因】

事業承継の進め方や計画を細かく決めておらず、関係者と計画の共有もできていなかったことが失敗要因の1つです。そのため、事業承継後に後継者をサポートする人材や仕組みもない状態で、企業を運営せざるを得なくなりました。

親の後を継いだ息子に企業経営の経験が乏しいことも、社内の混乱や経営不振を招いた要因です。

【対処法】

事業承継計画書をあらかじめ作成することが、対策として有効です。何を承継するのか、いつどのように実行するのか綿密な計画を策定しましょう。事業承継計画書の作成と関係者との共有が、スムーズな事業承継の第一歩です。

また、後継者の育成も計画的に進めましょう。後継者候補が経営の実務経験を豊富に積むことで、新体制後も安定した企業経営が実現できます。

2-2. 親族トラブルが発生する

【概要】

社長である父が経営を退く際、長男には経営権を、次男には株式の一部を相続させました。次男は他企業に勤めていたため、経営には関与していない状態です。

数年後、経営状況が悪化しますが、次男は株式の配当を要求し続けました。結果、長男は企業の業績を改善できず、経営が困難になりました。

【要因】

企業の経営状況を把握していない次男が、配当について口出しをしてきたことが大きな原因です。相続にともなう不平不満が根底にあることも考えられます。

【対処法】

親族トラブルを回避するためには、経営に関与しない親族には、できる限り株式を保有させないようにしましょう。また、事業承継や相続については親族内で十分話し合いを行い、理解を得ておくことが重要です。

2-3. 派閥争いにより資金が流出する

【概要】

社長に就任予定の長男が株式の60%を、専務に就任予定の次男が株式の40%を保有していました。実際には、長男よりも次男のほうが企業への貢献度が高い働きぶりでした。しかし、父である前経営者は強引に長男を社長に就任させてしまいます。長男の社長就任に次男が反発し、派閥争いが勃発しました。

次男は企業を退職するときに、退職金とともに保有株式の買取を求め、最終的に数億円の企業資金が流出する結果となりました。

【要因】

派閥争いに発展することを予見せずに、強引に長男を社長に任命してしまったことが大きな原因です。

【対処法】

派閥争いが起こらないよう、状況を鑑みて慎重に事業承継を進めることが大切です。強引な後継者選びは不満を招きトラブルの種になります。関係者が納得できる後継者選びを行いましょう。

2-4. 引退した経営者による院政が敷かれる

【概要】

ある中小企業の経営者は社長の地位を親族に譲り、自身は引退することにしました。しかし、引退後も経営に関わり続け、大きな影響力を持っていました。

従業員は実質的な経営権は先代にあると判断し、後任である現社長は社内での信頼を失います。そのことにより、企業は求心力のない状態に陥り、経営が傾いていきました。

【要因】

引退後も先代が経営に干渉したことが要因と考えられます。先代が経営に関与し続けていると、従業員は誰が企業のリーダーであるのか分からなくなってしまいます。

【対処法】

事業承継後は後継者に仕事を引き継ぎましょう。先代は経営についてたまにアドバイスをする程度に抑え、事業承継後は後継者を信じて任せることが大切です。

2-5. 議決権が確保できず後継者の地位が不安定になる

【概要】

ある企業では、遺産分割によって複数人が株式を相続しました。そのうちの1人が後継者になりましたが、株式は複数の相続人が保有した状態です。中には後継者のことを良く思わない相続人もいました。

後継者に反発する相続人は、議決権を行使して後継者に非協力的な態度を取るようになります。これにより、後継者は自分の意思を経営に反映させられず、経営者としての地位が不安定になりました。

【要因】

後継者に株式を集中させられなかったことが原因に挙げられます。

【対処法】

後継者ができるだけ多くの株式を確保することが重要です。安定経営のためには少なくとも過半数の株式が必要だと言われています。買取や贈与・相続といった方法で後継者に株式を集約しましょう。

また、他の親族に株式を保有させる場合は、後継者の意思を支援する安定株主として、協力を得られる関係性を構築することも大切です。

2-6. 後継者を見つけられない状態が続く

【概要】

経営者は自分の子供に事業を継いでほしいと考えていましたが、子供には後を継ぐ意思はありませんでした。その後も幅広く後継者を探しましたが見つけられません。経営者の体力的にも限界が迫り、廃業も考えるようになりました。

【要因】

経営者が自力で後継者を探すのみで、専門家に相談しなかったことが失敗要因と考えられます。

【対処法】

経営者自身ではなかなか後継者を見つけられない場合、事業承継の専門家への相談を検討しましょう。専門家に相談することで、M&Aで企業を売却するといった方法も視野に入れられます。現経営者が健在なうちから後継者選びに着手し、余裕を持って事業承継を行いましょう。

その他、なぜ事業承継が失敗するのか、事業承継の失敗を防ぎ、成功に導くポイントについては下記で詳しく解説しています。

事業承継に真剣に取り組む~事業承継が失敗する理由と成功させるための仕組み

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事業承継を円滑・円満に行うポイント|基本的な流れ・方法も解説

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まとめ

事業承継は適切に実施できなければ、失敗してしまうことがあります。事業承継の失敗は、業績の悪化だけではなく、倒産といった危機を招くことも少なくありません。

事業承継が失敗する要因は、さまざまです。ただ、準備が不十分であった・見通しが甘かったということが、どの失敗ケースにも概ね当てはまります。そのため、事業承継を実施する場合は、甘い見通しを持たずに、早めの準備を心がけることが大切です。

さらに、事業承継の円滑・円満な実施には、専門的な知見が求められます。事業承継の実施について不安を感じている場合は、税理士や弁護士などの専門家にサポートを求めてみてはいかがでしょうか。

(令和2年度第3次補正事業再構築補助金により作成)

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この記事の著者

NBCPlusオンライン編集部

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