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事業承継とは?3つの種類と成功させるためのポイントも

2022.12.23

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事業承継とは、これまでに企業が積み上げてきた資産や経営基盤を他の人に引き継ぐことです。単なる経営者の交代というよりも、新しい経営者に企業を引き継ぎ、安定的な発展を図るものであると言えます。

この記事では、事業承継とは何かについて、日本における現状や事業承継の種類を踏まえて解説します。さらに、事業承継を成功させるために大切なポイントについても紹介するので、後継者への企業の引き継ぎを考えている方は、ぜひ参考にしてください。

目次

1.事業承継とは?

事業承継とは、企業経営において積み上げてきた「人(経営権)」「資産」「知的資産」などを、他者に引き継ぐことです。よく誤認されていることですが、事業承継は経営者を交代するだけではありません。経営に関連した要素を引き継ぎ、今後も後継者が経営を安定させられるようにすることです。

なお「承継」と似ている言葉に「継承」があります。承継は事業や地位など抽象的なものを引き継ぎますが、継承は権利や義務というより具体的なものを引き継ぐという点が違いです。

1-1.日本における事業承継の現状

近年の日本では、事業承継がスムーズに進まずに困っている経営者が増えています。背景にある大きな要因が、少子高齢化により経営者の年齢層が上がり、一方で後継者候補にあたる若手が不足していることです。経営者の多くが高齢になり事業承継を迫られているものの、引き継ぐ人材がおらず、結果として廃業に追い込まれている状況にあります。

企業が廃業となれば、従業員は働く場所をなくし、培われてきた貴重な技術が失われるケースもあります。地域経済、ひいては日本経済を活性化させるために、事業承継をスムーズに進められるかどうかは大きな課題です。

2.事業承継の種類3つ

事業承継は「事業を誰に引き継ぐのか」によって「親族内承継」「従業員承継(親族外承継)」「M&A(第三者承継)」の主に3種類に分けられます。自分がこれまで成長させてきた事業を最適な後継者に引き継ぐためには、事業承継の種類別に概要やメリット・デメリットを理解することが重要です。

出典:中小企業庁「財務サポート 「事業承継」」

なお、事業承継の種類別の具体的な流れや必要書類、費用などは、下記の記事で詳しく解説しています。

事業承継の手続き|流れ・必要書類・税金も解説

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2-1.親族内承継

親族内承継とは、経営者の子や甥・姪といった、血縁関係のある人物に事業承継を実施する方法です。かつては事業承継の多くが親族内承継でしたが、近年は少子高齢化の進行や働き方の多様化を背景に、親族内承継が減少傾向にあります。

【メリット】

  • 従業員からの納得を得やすいこと
  • 引き継ぎに十分な時間をかけやすいこと
  • 物的な財産も引き継ぎできること

親族内承継は、血縁関係のある人物を後継者とするため、既存従業員から納得してもらいやすいメリットがあります。早い段階で後継者が決まりやすいので、十分な時間をかけて育成できることも特徴です。また、設備や不動産といった物質的な資産を継承することもできるため、3種類の事業承継の中でも、後継者の負担が軽減されやすいと言えます。

【デメリット】

  • 親族間でのトラブルが発生する可能性があること
  • 後継者の資質によっては今後の経営が安定しないこと

後継者の対象となる親族が複数人おり、かつ事業承継を望んでいる場合、親族間でのトラブルに発展する可能性があります。また「親族だから」という理由だけで、経営者としての資質が不十分な人を後継者にすると、今後の経営が安定しなくなる危険性があることも否定できません。

▼関連記事

意外と間違いに気付かない中小企業経営の実務<2>~同族内の事業承継のポイント~

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2-2.従業員承継(親族外承継)

従業員承継とは、自社の従業員や役員から後継者を選ぶ方法で「親族外承継」とも呼ばれます。主に、親族内承継が難しい場合に、次の方法として従業員承継が行われるケースが多い傾向です。

【メリット】

  • 後継者の資質を見極めた上で事業承継ができること
  • 後継者が自社の経営状況や経営理念を理解していること
  • 後継者教育に時間がかからないこと

従業員承継は、これまでともに仕事をしてきた仲間から後継者を選ぶので、資質を見極めやすいメリットがあります。また、自社の内情を理解した人材に引き継ぐため、経営状況や理念、社内風土を踏まえた経営をしてくれるでしょう。自社について理解していることで、教育をスムーズに進めやすい特徴もあります。

【デメリット】

  • 社内で分裂が起こる可能性があること
  • 自社の株式を有償で取得する必要があること

従業員承継の場合「自分が後継者になりたかった」と思っていた従業員から反感を買ったり、派閥対立により社内が分裂してしまったりする可能性があります。また、親族内承継とは異なり、後継者に自社株を有償で取得してもらう必要があるので、資金面の負担が大きくなることもデメリットです。

2-3.M&A(第三者承継)

M&Aは、親族でも従業員でもない、第三者に事業承継をする制度で「第三者承継」と言われることもあります。多くのM&Aは、マッチングするための専門サービスや支援機関を通して行われます。

【メリット】

  • 幅広い選択肢から後継者を選べること
  • 専門家によるサポートを受けられること
  • 買い手企業により事業が拡大する可能性があること

M&Aは、他の2種類と比べて、承継するのに最適な人物を幅広い選択肢から見つけられることがメリットです。支援範囲は機関によるものの、専門家によるサポートもあるので、安心して事業承継を進められるでしょう。買い手が企業である場合、統合により事業が拡大する場合もあります。

【デメリット】

  • 最適な後継者を探すための労力と費用がかかること
  • これまでの体制や社内風土が変わり、離職者が増える可能性があること

M&Aにあたっては何らかのサービスを使うことが多く、後継者を見つけるために時間や労力、費用がかかってしまうデメリットがあります。また、買い手企業に自社が吸収され、これまでの体制が大きく変わる場合もあり、社内から人材が流出してしまう可能性が高いことも懸念点です。

3.事業承継を成功させるには?

事業承継を成功させるためには「早めの着手」と「早めの相談」の2つが大切です。それぞれ、具体的にどのようなポイントを踏まえて経営者は行動するべきであるかを解説します。

●早めの着手

ケースバイケースではあるものの、事業承継が完了するまでには、長ければ約10年がかかるとされています。そのため、自分の引退時期から逆算した上で早めに着手することが、事業承継を成功させるために大切です。特に、M&Aは第三者を後継者とすることから時間がかかりやすいため、将来的な事業承継を考えているのであれば、早めの準備が成功に直結しやすいと言えます。

●早めの相談

事業承継の専門家や公的機関の支援窓口に早めに相談することがポイントです。相談先の例としては、税理士や金融機関、商工会議所などが挙げられます。

税理士は普段から連携しているため、自社の内情に精通しています。また、事業承継に関する税金関係の扱いについても詳しいです。金融機関や商工会議所、行政機関では、事業承継の手続きなどについて詳しいアドバイスをもらえます。自社に合う相談先を早い段階で見つけることが、事業承継をスムーズに進める上で重要です。

専門家によるサポートとしては、コンサルティング・サービスがあります。コンサルティング・サービスの詳細は、下記のページで詳しく解説しています。

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まとめ

事業承継とは、企業が抱える経営基盤を現在の経営者から他の人に引き継ぐことです。現在、日本の多くの企業では経営者の高齢化が進んでいますが、多くの企業の現状として事業承継はスムーズに進んでいません。事業承継を完了するには、何年もかかるため、早めに取り組む必要があります。

さらに、実施する事業承継の種類によって企業に与える影響が異なるため「親族内承継」「従業員承継」「M&A」の中から適切なものを選ばなければなりません。事業承継に取り組みたいものの、なかなかスムーズに進められず困っている方は、早めに税理士などの専門家に相談してみてはいかがでしょうか。

(令和2年度第3次補正事業再構築補助金により作成)

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この記事の著者

NBCPlusオンライン編集部

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