やり抜く力
「やり抜く力」の著書内で取り上げられている3人のレンガ職人という話をご存じでしょうか? ある人が、教会を建てている現場のレンガ職人3人に対し「何をしているのですか?」と問い掛けます。すると、三者三様の答えが返ってきます。
1人目の職人「レンガを積んでいるんだ。」
2人目の職人「教会をつくっているんだ。」
3人目の職人「歴史に残る大聖堂をつくっているんだ。」
同じ仕事をしていても、その仕事に大きな意義が感じられるかどうかは人によって異なります。
1人目の職人にとって、レンガ積みは単なる「仕事」です。
達成感・やりがいなどは生きていくために必要ないと、時間を切り売りし、ただ作業するだけの無機質な労働者になってしまっています。
2人目の職人にとって、レンガ積みは「目標」「キャリア」です。
目の前に目標がある内は、その目標に向かって没頭することもでき、一時的には充実感や達成感を味わえます。
しかし、その先にある目的(あるべき姿)がないと、次の目標が見当たらず、精神的に疲弊・孤独を感じ、燃え尽き症候群となってしまう可能性があります。
また、キャリアの積み上げに思考が偏ってしまうと、スキルや実績・経験さえ身に付けられればどこでもいいという発想に陥り、より高い給料やスキル・経験が得られる職場へと、転職してしまうでしょう。
3人目の職人にとって、レンガ積みは「天職」です。
仕事が面白いことはもちろん、他の人々にも役立つと思えるような目的意識を持っています。そのため「仕事」を「仕える事」ではなく「志の事=志事」と捉えています。
こういった違いが、人生や仕事に対する満足度・幸福度の違いに繋がり、継続力ややり抜く力に影響します。
ダックワース教授も、成功するために大切なことは「才能よりも情熱と粘り強さ、すなわちやり抜く力」であると結論づけており、自分の職業を天職だと感じている人ほど、やり抜く力が強いと述べています。
やり抜く力を伸ばす4つのステップ
ダックワース教授は著書内で「やり抜く力の達人」に共通する要素、そして「やり抜く力」を伸ばすために必要なステップとして、次の4つを紹介しています。
1. 興味
自分のやっていることを心から楽しみ、尽きせぬ興味と子供のような好奇心を持って、取り組んでいる。
→自社の事業内容やビジョンを社員に伝えきれていますか? 興味・関心をいだいていただけるよう、積極的・継続的に発信を行っていますか?
2. 練習
自分のスキルを上回る目標を設定し、それをクリアする練習に励み、自身の弱点を克服するため、日々の努力を何年も続けている。
→社員のスキル・働く姿勢に準じた目標設定や、取り組み結果に対するフィードバック、信賞必罰の人事評価制度などの仕組み・体制は構築できていますか?
3. 目的
自分の仕事や取り組んでいることが重要だと確信し、個人的に面白いだけではなく、他の人々にも役立つと思えるような目的意識を持つ。
→自社のお客様が誰なのか、またお客様にどのような価値を届けているのか、お客様のどのような悩みを解決しているのかを具体的に伝えていますか?
4. 希望
困難にぶつかり、不安になっても、その苦しみは一時的なもので、特定の要因があるという楽観主義になり、自分の道を歩み続けるための希望を持ち続ける。
→頑張り続けた先にあるみんなの未来像、わが社の未来像を社員が理解できる形・言葉で表現・発信していますか? また、課題発見・解決思考やリーダーに必要なマインドセットを伝えていますか?
「会議の決定事項や経営計画で設定した取り組みが、予定通り進んでいない。やり切れていない」「そもそも取り組むことさえできていない。計画倒れになっている」こういったご相談が、この1~2年増えています。
もし同じ悩みを抱えているようでしたら、「やり抜く力」とその伸ばし方について、ぜひこの機会に振り返ってみましょう。