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後継者(社長)育成に必要な自社の現状分析

2022.04.14

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NBCPlusオンライン編集部

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INDEX

コロナ禍で加速する中小企業の事業承継

日本政策金融公庫の調査によると、60歳以上の中小企業経営者の半数以上が、将来の廃業を視野に入れています。その約3割が理由に挙げたのが「後継者難」。ところが2021年に全国の企業を対象に行われた調査では、後継者不在の企業が過去10年で最も低くなりました。

後継者難の中、不在率が低くなった原因として考えられるのが新型コロナウイルスの流行でしょう。先が見えない中、多くの業界で事業環境が激変。早めに後継者問題を解決しようと積極的に対策を取った企業が増えたと推測されます。

また、中小企業庁が2017年に策定した「事業承継5ヶ年計画」により、事業承継補助金の運用やM&Aのマッチング支援といった施策の効果が表れてきたことも考えられます。

一方で、後継者難が原因とされる倒産件数は過去最高の水準を記録。コロナ禍による業績の悪化とともに後継者候補が退職するなどして事業承継の道半ばでやむなく倒産に至ったケースが見受けられます。

このように、長期に及ぶコロナ禍の影響やDX化の波を迎える激変の時代においては、柔軟な発想や対応ができる次世代への事業承継が重要です。

早急に後継者育成に取り掛かり、育成のプロセスにおける分析を確実に行うことが事業承継を成功させるカギとなります。

後継者不在率推移(全国・全業種)

001_後継者不在率推移2021年の後継者不在率は前年比3.6ポイントも改善。コロナ禍で事業環境が激変する中、高齢者が代表を務める企業を中心に後継者決定の動きが進んだと見られる
出典:全国企業「後継者不在率」動向調査(2021年、帝国データバンク)

後継者育成に必要な期間とフロー

後継者育成には時間がかかる

では、後継者育成を行うためには、どれくらいの期間とどのようなプロセスを経ればよいのでしょうか。

全国の中小企業を対象とした事業承継実態調査によれば、後継者の育成に必要な期間として約8割が「5~10年」と回答。時間がかかることがわかります。

なかなか回復しない景気動向にコロナ禍による経済的打撃が加わっている現在において、5?10年という期間の価値は増しています。以下のような育成のフローを念頭に置いた上で、一刻もはやく後継者育成に取り掛かりましょう。

事業承継に向けた体制整備

〈社内〉

  • 株主等のステークホルダーへ事業承継実施を周知
  • 中小企業庁などの事業承継バックアップ制度を活用

〈社外〉

  • 「自社の現状」「後継者に求める能力」「将来的なビジョンと組織図」の3つの分析を行う

後継者候補の選出と育成プランの策定

  • 親族、親族以外の役員、M&A等の選択肢から後継者候補を選出
  • 分析結果に基づき後継者育成の具体的プランやスケジュールを策定

育成プランの実施

〈社内研修(OJT)〉

  • 複数部署での業務を経験し、社員とのコミュニケーションを深める

〈社外研修(OFF-JT)〉

  • 現経営者の理念継承、経験談などを含めた座学の場を設ける
  • 社外の関連企業で業務経験を積む

資産等の継承手続き

  • ・税理士など外部の専門家に助言を受けながら、会社資産の引き継ぎを行う

後継者育成の指針となる3つの「分析」とは?

育成フローの中で最初に取り掛かる必要のある「3つの分析」は、後継者育成において特に重要です。分析の結果は5?10年を要する後継者育成プランの根拠となり、その後の事業承継を円滑に進めるための指針となります。

自社の強みや弱み、財務状況等を正確に反映した計画を策定するためにも、まずは次の分析を丁寧に実践していきましょう。

分析1:自社の現状を再認識する

自社の現状とは、現在の経営状態を表す項目のことを指します。ここから経営者の意向と現状にどれくらいのギャップが生じているかを確認し、課題を後継者育成プランへ反映します。

信念・価値観

まず、企業としての信念や価値観、現経営者本人の信念や価値観が過去と現在でどのように変化し、どういった形で経営に反映されているかを振り返りましょう。

中小の優良企業の経営者を対象とした調査では、迷った時には「経営者自身の信念」を判断基準にしているとの回答が寄せられました。

企業経営は順風満帆なことばかりではありません。明確な信念や価値観を持っていれば、後継者教育や経営判断に迷いが出ても迅速な軌道修正や改善策を打ち出すことができるようになります。

強み・弱み

自社の弱みは把握していても、強みを正確に把握できている企業はあまり多くはないようです。現在の不安定な経済状況においては、弱みを補う経営だけではなく、強みを押し出す経営姿勢が他社との差別化につながります。

分析にあたって大切なのは客観性。内部での分析に限界を感じているようなら、コンサルティング会社や税理士など、外部の専門家の視点を借りた分析を行いましょう。

経営状況

経営状況を正確な尺度で表しているのが売上や利益、そして借入金などの数字です。財務諸表で現在の数字を把握するだけでなく、その推移を企業活動の表れとして認識することが「資金が残る」「資金が増える」経営体質や財務基盤の基礎になっていきます。

分析2:後継者に必要な能力を整理する

現状の分析を通して、自社が持つ特徴や改善すべき点、経営状況を改めて把握することができました。次に、それらを具現化する力を持った後継者像を明確にしていきます。

その際、現在の後継者候補の能力に合わせて設定する必要はありません。

まずは理想的な能力を想定してみましょう。今後の育成期間で能力を伸ばしてもらうことを前提に、以下の5つのポイントで整理していきます。

知識

業務内容、財務・会計、経営に必要なノウハウ等、自社のありとあらゆる知識を「深く」「広く」備えていくことが重要です。

既に後継者候補がいる場合は、現状の知識量と理想的な知識量の差を考慮し、育成フローにおける社内外の研修や教育プログラムを組んでいきます。

リーダーシップ

組織をまとめる、人を動かす力が無ければトップは務まりません。その上で経営者は「他人能力活用業」であると考えるべきでしょう。

経営者一人ですべてを背負い込む必要はありません。「他人の知恵」を使い、自らにはない能力を活かすことがトップとして成功する秘訣といえます。

行動力

行動力は、コミュニケーション能力、交渉力、営業力などの総合力であるといえます。時にトップセールスが必要な業態ならば、行動力の有無によって社運を左右することになる場合もあるでしょう。自社のトップとしてどのような行動力を求めたいのか、細かく分析していきます。

判断力

判断力は、危機管理能力、あるいは重要な局面で指針を示す力となります。決断力であるともいえますが、その決断は冷静な判断のもとで行われなければならず、何よりも優れた判断力が前提に立っています。

洞察力

自社と他社、業界全体、そして社会情勢を常に観察する力が洞察力です。ただ観察するだけでなく、物事の性質や原因を見極めて本質を見抜き、経営改善に生かすことが求められます。

分析3:自社の将来的なビジョンと組織図を描く

ここまでで自社の現状と理想の後継者像を把握しました。最後は、自社の将来的なビジョンと、それを支える組織体系を考えます。これらの3つを分析することで、後継者育成プランの土台が完成します。

将来のビジョン

ビジョンとは、企業の「あるべき(ありたい)姿」のことを指します。ビジョンには具体的な年商などの数値を掲げることもあれば、社員や顧客、社会の理想的な状態を言語化することも。ビジョンを設定することで、社員一人ひとりや部署ごとの目標、行動指針などを設定しやすくなる役割があります。

また、後継者育成においては、経営者自身の意思を伝えるだけでなく、後継者候補との対話を通じてこれまでの自社のビジョンから「変えないこと」「変えること」を明確にしましょう。

これが円滑な事業承継につながるだけでなく、後継者にとってのモチベーションとなり、後継者育成への士気を高めることにもつながっていきます。

組織図

後継者候補や幹部候補が決まっている場合は、それぞれを配置した組織図を描いて自社の将来を“見える化”してみましょう。

候補をトップに置き、組織図内の各部署にどんな人材を配置すれば自社がうまく機能するかを分析します。現在の能力でなく、伸びしろを見据えた人材配置にすることで、候補の数だけ将来の会社の顔が見え、リアリティをもったビジョンの策定にもつながります。

将来の組織図を考える上で重要なことは、後継者の経営力のみに依存しない組織を意識することです。そのためには、後継者の片腕となる幹部候補の育成も並行していきましょう。

後継者が引き継ぎやすい組織とは、後継者以外の幹部や役員、社員が積極的に経営に参加する「全員参加型経営」が可能な組織。

一人がすべて背負うのではなく、新たなビジョンを全社員が共有しながら協働する企業をつくることを目指しましょう。

これまでの分析で、「自社の現状」「後継者に必要な能力」「将来的なビジョンと組織図」の3つを考えました。これらはそのまま、後継者育成プランに応用可能な目標となります。

これらの材料をもとに、必要に応じて第三者機関の手も借りながら、次の手順である後継者の選出、育成プランの考案と実施、資産等の継承手続きに移行していきましょう。

後継者候補ごとに組織図を描くと、将来の自社が“見える化”でき、取り組むべきことの違いが明確になる

001_組織図イメージ

分析結果を踏まえて後継者を選出する

自社にとって最も適切な後継者を選出するには、その選出先を複数検討することも有効です。ここでは最後に、分析結果を踏まえて以下の3パターンの選出先を紹介します。

親族

中小企業で一番多いのが、親族からの後継者選び。現経営者の仕事観が共有できていることが多く、経営者自身の子どもならば早い時期から育成に乗り出すことも可能です。事業用資産の引き継ぎが相続などにより円滑にでき、取引先や金融機関などの理解も得られやすいというメリットがあります。

ただし、親族内に後継者候補が複数いる場合、その調整でトラブルに発展することも。事業承継しない親族も含めて、資産の引き継ぎや財産分割などについて認識の共有を行っておくべきです。また、後継者候補を一本化できたとしても、本人の後継者としての意思をしっかりと確認しておきましょう。

非親族(従業員)

経営者の中には、仕事の厳しさゆえ「子どもには継がせたくない」という考えを持った経営者もいます。そのため、業務を知り尽くしている役員をはじめとした非親族の従業員から後継者を選ぶ事例も多くあります。

また、経営者のそばで仕事ぶりを見ていることから事業継承をする上で安心感が持てること、業務経験が豊富なため比較的育成時間が短縮できるというメリットがあります。親族ではない人物がトップに就任すれば、従業員全体のモチベーションアップにもつながります。

デメリットとしては、株式など資産の引き継ぎの煩雑さや社内からの反発を招くリスクがあること、親族からの理解を得るのに時間がかかるといったことなどが挙げられます。

M&A

親族や社内に後継者候補が見つからない場合などに検討されるのがM&Aです。事業の収益性を高めるために計画性を持って進められることが多く、企業価値の向上などが期待できるメリットがあります。このため、近年はあえて「脱ファミリー」をねらい、M&Aによる承継を選ぶ中小企業も増加しています。

デメリットとしては、社風が大きく変わる可能性が高いこと、従業員の雇用維持にも影響を与える恐れがあること。現経営者との事前の調整を綿密に行ってM&A後の姿を事前に想定し、認識のズレを無くしていく作業が求められます。

自社分析で後継者育成の準備を万全に

中長期的な時間とさまざまな工程を要する後継者育成は、その基礎となる自社の分析が非常に重要です。時には第三者による客観的な視点なども取り入れながら、多角的な観点で自社を捉え直すことが後継者育成の成功につながります。

円滑な事業承継のための第一歩として、まずは自社の信念や将来的なビジョンに基づいた計画を作成し、次世代を生き抜くための土台づくりを進めましょう。

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