「製造業における原価計算」を以下のステップでお話しします。
- はじめに :製造業における原価計算~原価計算の必要性~
- STEP1:自社の原価構成を把握する
- STEP2:自社の生産タイプを把握する
- STEP3:自社の原価計算の進め方を検討する
- STEP4:原価計算に必要なデータを収集する
- STEP5:用語を整理する
- STEP6:原価計算制度の構築スケジュールを検討する
第1回目はそもそもなぜ原価計算が必要なのか解説します。
目次
原価計算はなぜ必要なのか?
「うちみたいな会社で原価計算は必要なのか? 材料費の集計、日報の集計、チャージの計算など、製造現場での作業とは別に、多くの時間と労力がかかる。忙しくてとてもやってられない。」
このような声が多くの現場から聞こえてきます。
業績が苦しくなり、ぎりぎりの人数で運営している中小企業において、原価計算は後回しにされがちです。
しかしながら、「適切」な製品別原価計算ができなければ、業績が苦しい正確な理由(どの製品・どの工程が問題なのか?)や、改善の方向性(改善することで、改善効果の大きい製品・工程は何か?どの製品を伸ばして、どの製品をやめるのか?)を知ることができません。
有効な原価計算の活用方法
有効な原価計算の活用方法として、改善効果の試算があります。
以下に簡単な事例問題を出しますので、解いてみてください。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
┌─┐
│Q│この工程の改善を実施するべきか否か?
└─┘
・製品群Aの売上高は、5,000千円/年
・製品群Aの原価構成は、
売上高100千円につき、材料費30千円、加工費40千円、利益30千円
・加工費の内訳は、
設計10千円、切削20千円、仕上10千円
・工程の改善(投資額500千円)により、
切削工程の加工時間が20%改善する見込み
~~~~~<考えてみよう!改善を実施するべきか否か>~~~~~~~~
┌─┐
│A│改善を実施するべき(投資を進めるべき)
└─┘
・改善後の原価構成は以下となる。
売上高100千円につき、材料費30千円、加工費36千円、利益34千円
・改善後の加工費の内訳は、
設計10千円、切削16千円{20千円×(100%-20%)}、仕上10千円
・改善前の年間利益額 5,000千円×30%=1,500千円
・改善後の年間利益額 5,000千円×34%=1,700千円
・つまり年間200千円の利益改善が見込まれ、
投資額は2.5年で回収できることになる。
もし、製品群Aが定番製品であるのであれば、投資を進めるべき。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
事例で考えると当たり前のように思えますが、もし、上記の切削工程の原価が「20千円」であることを正確に把握できていなかったとすると、どうでしょうか?
1ヶ月分の売上を超える500千円を投資することに躊躇するかもしれません。
私が、原価計算の仕組み構築をお手伝いする過程の中で、最も重視していることは、製造現場における「改善サイクル(PDCA)の確立」です。
社員の皆様が、自発的に
- 原価を把握し
- 問題を探し
- 改善策を検討し
- 改善効果を試算し
- 実際に改善を行い
- 改善効果を検証する
この流れが確立できれば、強い経営基盤を築くことができます。次回以降は、原価計算の仕組み構築に向けた具体的な進め方をステップ毎に説明します。
製造業における原価計算連載一覧
はじめに :製造業における原価計算~原価計算の必要性~
STEP1:自社の原価構成を把握する
STEP2:自社の生産タイプを把握する
STEP3:自社の原価計算の進め方を検討する
STEP4:原価計算に必要なデータを収集する
STEP5:用語を整理する
STEP6:原価計算制度の構築スケジュールを検討する
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この記事の著者
NBCコンサルタンツ株式会社
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