「原価高騰に対応できておらず、以前は利益が出ていたのに、今は……」
「賃上げによる人件費増が利益を圧迫している。」
「単価を上げなければいけないが、どのくらい値上げすれば良いのか。」等々……
原価高騰による影響がまだまだ収まらない中、中小企業経営の現場でよく耳にする声です。
できるだけ値上げしていきたいのが中小企業の本音ですが、値上げ幅が大きすぎて受注を逃してしまったり、反対に受注を取るために値上げを見送った結果、売れば売るほど赤字になってしまったということもあります。
適切な単価、かつ自社にとって最低限必要な値上げラインがどの程度なのかを知っておくことは、非常に重要なことです。
そのための第一歩が、自社にあった原価計算を行うことです。
目次
まずは、自社の決算書における変動費・固定原価を正しく仕訳します。
- 材料費や外注費など、売上に比例して増加するコストを、変動費に仕訳します。
- 工場や現場でかかる固定的な原価(家賃や機械の減価償却費)を間接原価として仕訳します。
- 製造やサービス提供にかかる労務費を人件費原価として仕訳します。
基本的な原価は上記の3点となります。ここまでの費用を差し引いたものが、損益計算書における売上総利益(粗利)となるようにします。
この【STEP1】は、お手元に決算書があればすぐに見直すことが可能ですので、一度確認されることをおすすめします。
ここからは、業種・業態によって異なりますが、今回は製造業を例に説明します。
製造業の原価計算についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
製造業の場合、製品別に製造ラインを組んでいることが主であるため、製造ラインごとにかかる費用を整理します。
商品ごとに決まった材料を投下する場合は整理が容易ですが、共通で使用している材料や消耗品などは、改めて振り分けルールを設けます。
家賃や水道光熱費など製造ラインごとに算出することが困難な費用は、工場稼働率や販売数によって振り分けルールを検討します。また、機械などの減価償却は、製造ラインによる振り分けと月間の稼働率によって振り分けルールを設定します。
特に製造業においては、作業日報に取り組まれていることも多いですが、記載ルールの整備が必要な場合があります。
ポイントは「どの製品に」「どのくらいの工数」がかかっているのかが明解であること、そして「社員が正しく記載できるフォーマット」であることです。
作業日報は、現場の社員に協力いただく前提となるため、[手順1][手順2]と比較すると難易度が高く、定着に時間を要するケースが多いです。着手する場合は早めに取り組まれることをおすすめします。
最終的に、製品の販売単価から[手順1~3]までに算出した原価の合計を差し引いたものが製品一つあたりの利益となります。
【STEP1】における売上総利益(粗利)と、
【STEP2】による原価計算結果における利益の合計が
おおよそ一致すれば、正しく原価計算ができています。
上記の原価計算によって、以下のことが可能となります。
- 販売予測から、決算着地における最終利益予測が可能
- 商品ごとの利益構造の見える化により、低減すべき原価が明らかになり、対策検討が可能
- 単価の見直しの根拠となるため、顧客への説明の材料として活用が可能
急激な外部環境の変化に対して、中小企業も迅速な対応が求められる時代に、自社の現状を正しく把握しておかなければ、方向性を見誤る可能性があります。
まずは【STEP1】自社の収益構造を把握することから取り組まれてはいかがでしょうか?
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この記事の著者
NBCコンサルタンツ株式会社
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