従業員が心地よく働くために重要な要素の1つに「社風」があります。社風は採用活動や従業員の定着率にも関わり、企業成長において大きな役割を担う要素です。しかし、社風とはどのような定義なのか、具体的にどう変えるとよいのか、把握していない人も多いのではないでしょうか。
当記事では、社風の定義や左右する要因などの基本的な情報について、分かりやすく解説します。うまく活用するメリットや注意点などの実践的な内容も紹介するため、経営者や人事担当者はぜひ参考にしてください。
目次
1.社風とは?
社風とは、企業独自の雰囲気や文化、価値観のことです。目に見えないものであり、たとえば「アットホーム」や「風通しがよい」などが社風の一例として挙げられます。社風は所属する人間の性格や考え方などによって作られるため、同じ企業であっても、部署や支社が変わると社風も変わることは珍しくありません。
厚生労働省が公表した「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査報告書」によると「会社の経営理念・社風が合わない」を原因に離職する人は25.3%です。多くの人は、働く上で社風を重要視していることが分かります。
社風は就職活動や転職活動における企業選びの基準にもなるため、よい社風を作ることができれば、人材確保にも好影響がもたらされるでしょう。
1-1.企業文化・組織風土との違い
社風と似た意味を持つ言葉に「企業文化」と「組織風土」があります。いずれも具体的な定義は社風と異なるため、自社での取り組みに生かす上でも、違いを明確にしておきましょう。
企業文化や組織風土は、社風の基盤となるものであり、より根本的な意味を持ちます。それぞれの定義は下記の通りです。
企業文化
企業文化とは、組織内で共有されている独自の価値観やルールなどを指します。仕事への考え方や行動規範などは、企業文化の代表例であり、自社の企業活動に大きな影響を与えることが特徴です。企業文化は、トップが抱く方針や社会状況に影響を受けるため、時代の流れとともに変化する場合があります。
組織風土
組織風土は、従業員によって作られ、全員の共通認識となっている価値観やルールなどのことです。意図的な形成も可能な企業文化と比べて、組織風土は自然に醸成されます。既存従業員だけでなく、企業がこれまで成長してきた過程で醸成されたものであり、簡単に変化するものではありません。
2.社風を左右する要因
社風を左右する要素は1つだけでなく、さまざまな要素によって形作られます。自社においてよりよい社風を醸成したり、社風改善に努めたりするには、各要素がどのように影響しているのかを理解した上で、複合的に考えることが大切です。
ここでは、社風を左右する4つの要素について解説します。
2-1.会社の規模
会社の規模によって、設立からの歴史や事業規模などは異なるため、社風に一定の傾向が生まれやすくなります。すべての企業が該当するわけではないものの、企業規模別(大企業・中小企業・ベンチャー企業)の傾向は下記の通りです。
大企業
従業員が多く企業としての歴史もあることから、社内のルールがある程度確立されている傾向にあります。また、自分が担当する業務が固定化されている企業が多く、自由度は高くないと言えるでしょう。一方で、社会的信頼度が高く、待遇も手厚い企業が多いため、安心して働ける雰囲気があることが特徴です。
中小企業
中小企業は、従業員の数が少なく、トップとの距離も近いため、経営層の意思が社風を大きく左右することが特徴です。トップと価値観が合うか・合わないかが、従業員の働きやすさに影響を与えます。
ベンチャー企業
設立からの月日が浅いベンチャー企業は、一人ひとりの従業員が持つ裁量が大きく、横断的に業務をこなすケースも多いため、自由度が高い社風が多い傾向です。ルールが整備されていない企業が多く、自分で考えて行動できるかが大切になります。
2-2.経営者の考え方
社風を作る大きな要因の1つが、経営者の考え方です。たとえば、経営者が「多様な価値観を大切にしよう」と考えれば、組織全体が個々を受け入れる社風となるでしょう。反対に「反対意見は許さない」のように極端な考え方をすると、上司が部下の意見を認めないような、上下関係が厳しく働きにくい社風になってしまいます。
特に企業規模が小さい場合、経営者と従業員との距離が近いため、経営者の考え方が社風に直接影響を与えやすくなります。経営者をはじめとした上層部は、自分自身の考え方や態度が社風に影響している意識を、日頃から持つことが重要です。
2-3.業務の裁量
従業員にどのくらいの裁量が与えられているかも、社風に影響を与えます。特に中小企業やベンチャー企業は、スピード感を持って組織を成長させるために、従業員の裁量を大きく設定されていることが多いでしょう。大企業であっても成果主義や実力主義の企業では、裁量が大きい場合があります。
従業員の持つ裁量が大きい企業では、自分の意見が反映されやすく、積極的に挑戦しやすい社風につながります。
2-4.教育体制
見落とされることが多い要素ではあるものの、自社における教育のあり方によっても社風は変わります。自社での教育方針には、企業としてのビジョンが反映されるため、教育体制が整っている企業は統一感が生まれやすくなります。
また、企業全体に従業員を育てる意識が伝わったり、従業員同士のコミュニケーションが増えたりすることで、お互いが信頼し合える社風が作られやすいでしょう。
3.社風をうまく活用するメリット
社風に合う人材を採用することで、ミスマッチを防止でき、従業員の定着率が上がります。少子高齢化により市場全体で労働力が減少し、採用の難易度が高まっている近年、定着率の向上は企業側にとって大きなメリットです。
また、社風をうまく活用すると、組織に対する愛着心を表す「従業員エンゲージメント」を高める効果も期待できます。従業員エンゲージメントが高まると、モチベーションアップや生産性向上にもつながります。
3-1.社風を活用する際の注意点
社風を活用する際には、いくつかの注意点もあります。注意点を把握せずに社風を安易に活用しようとすれば、メリットを得るどころか、デメリットが生じるかもしれません。特に押さえておくべき注意点は、下記の3つです。
「全員にとってよい社風」は存在しない
企業には、さまざまなバックグラウンドを持つ人が集まっており、個人の価値観は異なります。そのため、全員が満足できる社風は存在しません。一人ひとりに寄り添う姿勢は大切ではあるものの、組織全体を見てバランスよく考えることも必要です。
社風はよい・悪いで決めない
社風を判断する際には、よい・悪いが基準になりがちですが、よいか悪いかは個人の主観によるため、1人がよくても全体で見ると「悪い」と感じる人が多い可能性があります。合う・合わないを基準にすると、より客観的に社風を判断することが可能です。
部署・支社ごとに雰囲気は違う
同じ組織であっても、部署や支社によって雰囲気は異なるため、部署・支社単位で雰囲気を把握する必要があります。部署や支社の雰囲気を把握しておくと、社風の改善や企業に合った従業員の採用につながります。
まとめ
社風とは、企業独自の雰囲気や文化、価値観のことであり、同一企業であっても部署や支社などによって異なります。社風を左右する要素は1つだけでなく、会社規模や経営者の考え方といった、複数の要素が関係します。自社の社風について判断する際は、各要素をバランスよく、かつ複合的に考えることが大切です。
社風を活用すれば、自社への定着率向上やエンゲージメントアップなどのメリットもあるため、注意点を踏まえながら積極的に活用することをおすすめします。今後、企業を長く発展させるためにも、一度自社の社風を見直してみてください。
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(令和2年度第3次補正事業再構築補助金により作成)
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