中小企業の事業承継促進のため、事業承継時の税負担を実質ゼロにする「事業承継税制」を活用・検討する企業が増えています。
しかしながら、後継者不在の中小企業に対する支援策については、まだまだ不十分なのが実情です。なぜ中小企業のM&Aが進まないのか解説します。
目次
後継者不在が多い中小企業
中小企業庁のデータによると、2025年までに、日本企業全体の3分の1にあたる127万社の中小企業が後継者不在により廃業のリスクを迎えるといわれており、それにともない約650万人の雇用が失われると試算されています。
経済産業省はこれを打開するため「第三者承継支援総合パッケージ」を取りまとめ、今後10年で60万社の第三者承継(以下、M&A)の実現を目指すと発表しました。
経済産業省の資料によると、現在、中小企業のM&Aは年間4,000件弱。
年々増加傾向にありますが、潜在的な後継者不在の中小企業は127万社もあり、まだまだ不十分な状況です。
その背景には以下の課題があると分析しています。
中小企業のM&Aが進まない背景
売り案件が圧倒的に少数であること
経営者にとってM&Aが身近でなく、他者へ「売る」ことへの抵抗感が根強い。
また、仲介手数料や仲介業者などのM&Aに係る情報が不十分で売りを躊躇。
マッチングの成立が困難であること
個人保証の存在により、承継を拒否や適切な相手が見つからない。(従業員含む)
承継後の経営統合が困難であること
承継後の経営統合や事業戦略の再構築にコストを要するため承継を躊躇。
中小企業庁がM&Aを促進させるための柱とは
これらの課題を解決するために「第三者承継支援総合パッケージ」では、3つの柱で政策を抜本的に強化するとしています。
【3つの柱】
- 経営者の売却を促すためのルール整備や官民連携の取り組み
- マッチング時のボトルネック除去や登録事業者数の抜本増加
- マッチング後の各種コスト軽減
出所:中小企業庁『第三者承継支援総合パッケージ』(2019年12月20日発表)
事業承継問題の解決策
中小企業の多くが将来向き合うこととなる
事業承継問題(後継者問題)には、解決策として5つの選択肢があります。
- 親族内承継
- 従業員承継
- 第三者承継(M&A)
- IPO(株式公開)
- 会社清算(廃業)
その中でも、親族外承継(従業員承継・M&A)が増加傾向にあります。
しかし、M&Aは企業価値の算定・検討・交渉をするための時間が必要となったり、別の会社が一緒になることで社風・経営方針・雇用条件・取引先が変化するなど、さまざまな影響を及ぼす可能性があります。
M&Aを成功させるためには、会社や事業の価値をいかに高めておけるかが重要なポイントになります。
そのためには、企業価値向上のための分析(デューデリジェンスなど)をしながら、まずは自社の現在の企業価値を認識しなければいけません。
将来起こり得る事業承継に向けた対策として、M&Aも視野に入れながら、中期経営計画を策定・検討してみてはいかがでしょうか。
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この記事の著者
NBCコンサルタンツ株式会社
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