本日は経営力アップのための「視点」を紹介します。世の中にあふれている多くの数字は、何らかの『事実』を表しているものといえます。
しかし、その事実が数字として表れるまでにかかる時間が長いか短いか、指標によってずいぶんと違います。どういうことか見ていきましょう。
目次
「風が吹けば桶屋が儲かる」
有名なことわざですね。
風が吹いて、土ぼこりが立つ
↓
土ぼこりが目に入って目の不自由な人が増える
↓
目の不自由な人は三味線を買う
↓
三味線に使う猫の皮が必要になり、猫がいなくなる
↓
猫が減るとネズミが大量に増える
↓
ネズミが増えると、ネズミは桶をかじる
↓
桶の需要が増えて桶屋が儲かる
このような具合に、あることが起こると、一見まったく関係のなさそうに思われるところに影響がおよぶことを喩えたものです。
風が吹けば土ぼこりが立つので、風が吹いてから比較的短時間のうちに「土ぼこりの量」や「土ぼこりの発生箇所数」というデータは数字に表れます。
そして、その影響が広がると、目の不自由な人の数、三味線の生産量・販売量、猫の捕獲量、ネズミの数、桶の被害件数、桶屋の稼働率や売上高…といった数字に徐々に影響を与えていくことになるはずです。
「土ぼこりの量」や「三味線の生産量」などの指標は比較的短時間のうちに表れる数字で、「桶の被害件数」や「桶屋の稼働率」などは数字に表れるまでに時間がかかるということが理解できると思います。
このように、世の中の指標には、短期のうちに数字に表れるものと数字に表れるまでに時間がかかるものがあるのです。
企業の数字を短期と長期で見る
企業の決算書であるバランスシート(B/S)と損益計算書(P/L)。
P/Lは毎期の「フロー」であるのに対して、B/Sは過去のP/Lの蓄積であり、ある一時点の「ストック」を表しています。
したがって、フローであるP/Lは短期の数字、ストックであるB/Sは長期の数字、と言い換えることができます。
業績不振に陥った企業も、最初はちょっとした単年度の赤字から始まります。ずっと儲かっていた企業が突然赤字になったくらいではB/Sはたいして傷みません。
ところが、2年も3年も赤字をつづけるようになると、B/Sは徐々に傷み、しまいには資産より負債が大きくなる「債務超過」になってしまいます。
P/Lはあっという間に悪くなるけれど、B/Sが悪くなるのは時間がかかることがわかりますよね。その逆もまた真なり。
業績不振の企業を再建させる場合、事業をリストラクチャリングすることによって収支を改善して、赤字体質を着実に利益が出る構造に変えることは、比較的短期のうちにできます。「V字回復」という言葉がありますが、P/Lは短期間で劇的に改善させることが可能です。
それに対して、一度大きく傷んだB/Sを回復させるには、大規模な増資でもしないかぎり、どうしても時間がかかります。毎期利益を出してコツコツ積み上げるしかありません。
企業の経営についても短期と長期の視点を持つことの大切さがご理解頂けるかと思います。
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NBCコンサルタンツ株式会社
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