『ピグマリオン効果』とは？
『ピグマリオン効果』とは、他者から期待をかけられることで、学習などの成果が高まる現象を指します。（ローゼンタール効果・教師期待効果とも言われています。）
これは、ビジネスシーンにおける上司部下の関係・部下育成でも成り立つ、非常に重要な観点です。御社の管理者・上司が部下に接する際、どのような態度で臨まれているでしょうか？
ピグマリオン効果を正しく理解することで、部下育成能力が高い人を見出したり、なかなか人が育たない原因を見つけることができるかもしれません。
ピグマリオン効果の実証実験
「他者からの期待が人を成長させる」というピグマリオン効果。どのようにして立証されたのか、実際の教育現場で行われた実験を紹介します。
成績に関係なく選ばれた子供たちを集め２グループに分け、それぞれ以下のように担当教師に伝え、その後の学習成果を観察しました。
- Ａ：このクラスの生徒は優秀であり、成績が伸びる可能性が高い
- Ｂ：このクラスの生徒は能力が低く、成績が良くない
この実験の結果、子供たちは成績に関係なく選ばれ・分けられたにもかかわらず、Ａグループの方が学習成果が大きく、良い成績を残したのです。
ここから見えることを２つ、ビジネスシーンに置き換えてみましょう。
- （部下は）期待をかけられることで、成果を出す・成長する
- （上司は）相手の能力が高いと信じれば、教育効果は高くなる
経営者・幹部・上司の方々は、いかがでしょうか？部下の成長を信じ、それをしっかりと伝えられているでしょうか？
ゴーレム効果
逆のパターンも見てみましょう。他者から期待をされないことで、学習などの成果が下がってしまう現象を『ゴーレム効果』と言います。
「彼には何を言っても無駄だ。どうせ彼には無理だろう。」
そのように思っていると、（例えそれを口には出さずとも）部下には伝わり、パフォーマンス・メンタルはみるみる下がり、 成果を出せずに自信を失い退職。このようなことが現場で起きていないでしょうか？
テクニックとしてではなく、心の底から相手に期待をかけ、優しく、時に厳しく接することでこそ人は育ちます。このことを忘れず、ピグマリオン効果を有効に使い、日々の関係を紡いでいきたいものです。
シン・ピグマリオン効果
ピグマリオン効果の実証実験が行われたのは１９６４年とずいぶん昔ですが、近年ペンシルバニア大学の研究にて、新たなケースが観測されました。
それは「期待をされていない時の方が成果を出す」というものです。これは従来のピグマリオン効果からすれば逆転現象です。
調査の結果、見えてきたのは
「“期待を寄せているその上司を信頼・尊敬しているか否か”によって結果が左右された」
ということでした。
信頼・尊敬している上司に期待をされた部下は、より高い成果を出す一方で（従来のピグマリオン効果）、普段から信頼・尊敬をしていない上司に期待をされても成果は出ず、むしろ期待をされていない場合の方が、反骨心からか成果を出すことがあるというのです。
つまり、上司がピグマリオン効果の知識を持っていたとしても、それを扱う自身が信頼を寄せられる人柄や仕事ぶりを発揮していなければ、 むしろ逆効果になってしまう危険性をはらんでいるということになります。
これは非常に危険です。このような話に触れると、人財育成の奥深さや、管理者・上司はどうあるべきなのか？ということを考えさせられます。
日本人の９５％は学習習慣がない
企業活動の根幹は「人」であり、その悩みは決して尽きることはありません。唯一絶対の正解などありませんが、このような学びの場を企業・組織が用意することは非常に重要です。もちろん「それは自ら学ぶべきである。」とのご意見もあるでしょう。
しかし、２０１６年に総務省が発表した資料によると、「日本人の平均学習時間は１日あたり６分」とのこと。
この平均学習時間を引き下げた要因は
「回答者の９５％が一日の学習時間が０分である（勉強していない）」
と回答したためです。
自ら学ぶ習慣を持っている人は、全体の５%に過ぎないのです。自学自習を期待することが難しいならば、組織として学ぶ機会づくりをすることも、経営者の１つの役割かもしれません。
ぜひとも、経営者自身が学ばれることはもちろん、幹部と共に学び・同じ視点を育み、未来を語り合う機会を持たれてはいかがでしょうか？
