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人事評価制度を導入するメリットとデメリット|新しい評価制度も解説

2022.08.04

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人事評価制度というと、給与査定のイメージが強い傾向にありますが、実際の人事評価は、査定だけが目的ではありません。評価の結果は給与や等級の決定という形で表れますが、評価を出すまでの過程も結果と同じように重要です。

人事評価制度には、さまざまなメリットがあります。例えば、評価面談は貴重な社内コミュニケーションの機会となります。企業理念の共有や社員のスキル把握も可能です。一方で、看過できないデメリットもあります。

当記事では、人事評価制度を導入するメリットとデメリット、新しいスタイルの評価制度について解説します。


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目次

1.人事評価制度を導入するメリット4つ

人事評価制度とは、企業に所属する従業員の、仕事への取り組みや業績を、公正に評価するための仕組みです。人事評価の結果は、給与や等級を決める材料となります。しかし、人事評価制度のメリットは、給与査定などの結果だけではありません。評価をつけるに至る、プロセス自体にも意義があります。

ここでは、人事評価制度の活用による4つのメリットについて解説します。

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1-1.社内コミュニケーションの機会が増える

人事評価制度で重要なのが、上司と部下による評価面談です。上司と部下は日頃から一緒に働いているものの、時間を取って差し向かいで話す場面は、滅多にない場合がほとんどです。そのため評価面談は、貴重なコミュニケーションの機会となります。面談で心理的な距離感が縮まれば、関係性が良くなり、普段のコミュニケーションも円滑になるでしょう。

社内コミュニケーションの機会が増えると、企業側には、以下のような効果が期待できます。

  • 情報共有の活発化で、仕事がしやすくなる
  • 社内における人間関係の風通しが良くなり、社員の離職率が下がる
  • 上司と部下の間に信頼関係が結ばれ、ストレスが軽減する
  • 社員のモチベーションが向上し、生産性が上がる

1-2.企業理念・ビジョンを共有できる

企業理念やビジョンは、企業の価値観や方向性、基本となる考え方を示したものです。具体的には、以下のような内容が明文化されています。

  • 企業の社会的な存在意義
  • 企業の目指すべき将来像
  • 社員の行動規範

企業理念やビジョンが理解できれば、従業員はその企業で働く価値や意義を見いだせます。また、目指すべき従業員像が分かるため、意識も変わるでしょう。

人事評価に用いられる評価基準や指数には企業理念やビジョンが反映されるため、評価面談は企業理念やビジョンについて共有する場となります。企業理念の理解が深まれば、企業の理想とする人材の育成にもつながります。

1-3.社員が持っているスキルを把握できる

人事評価は人材データを元に行われるため、従業員が有するスキルを確認する絶好の機会です。従業員のスキルを把握すれば、人材の活用や配置がしやすくなります。

また、ここで言うスキルとは、専門性のある知識や技術などの「テクニカルスキル」にとどまりません。個人の人柄や特性による、個人スキルも含まれます。最近では、これらスキル全般を「ポータブルスキル」と呼び、スキル管理を組織運営の一助とする動きが盛んです。

1-4.客観的に給与や等級を決められる

従業員の給与や等級の査定には、個人の主観を挟まない、公平な評価が欠かせません。人事評価制度は客観的視点で構成されているため、社員の処遇を決める根拠として有用です。

処遇の根拠とするためにも、人事評価制度のルールや運用方法の設定には複数人で入念な検討を重ねる必要があります。

2.人事評価制度を導入するデメリット3つ

人事評価は導入がゴールではありません。システム導入後も質の高さを維持しながら、運用する必要があります。評価が適切でなければ、デメリットがメリットを上回るリスクが生じます。

人事評価制度を導入する場合には、以下の3つのデメリットに注意し、問題が発生した際にはすぐに対策が取れるよう、前もって準備しておきましょう。

2-1.評価者のスキルにより評価が左右される恐れがある

人事評価の運用には、評価担当者のスキルが不可欠です。評価者は誰に対しても、正当かつ公平な評価を行わなければなりません。しかし、主観が入らない評価を行うのは難しく、評価者間で評価のつけ方にばらつきが出るケースもあります。評価に納得がいかないと、従業員は企業に不信感を抱きかねません。

そのような従業員は企業に不満を抱き、退職という最悪の事態を招く可能性もあります。評価者は責任感を持ち、従業員の評価にあたりましょう。

評価者に必要とされるのは、以下のようなスキルです。

  • 企業理念やビジョンを理解する
  • 評価エラーを念頭に、公平な評価を行う
  • 部下の信頼を得られる評価面談を行う
  • 適切なフィードバックとフォローをする

上記のスキルを身につけるには、適切な評価者教育が必要です。外部の評価者研修への参加や、講師を招いた研修の自社開催など、社を挙げて積極的に取り組みましょう。

2-2.型にはまった人材が育ちやすい

人事評価の基準を厳しくすると、求める能力や目指すべき人物像の幅が狭まります。従業員全員が似たような能力の獲得や人材への成長を目指すと、自社でしか活躍できない、画一化された人材しか育たない恐れがあります。画一化された人材しか育たない企業では、組織が活性化せず、組織力の向上や組織の発展が望めません。また、従業員が評価されることを目的として働くと、高評価の得られる業務しかしなくなるリスクもあります。

このような事態を避けるためには、従業員一人ひとりの資質や個性を尊重し、それぞれに合う評価をする必要があります。細かく厳密な評価項目や基準ばかりではなく、あえて幅を持たせた抽象的な項目や基準も採用すると、人材の多様な育成が見込まれるでしょう。

2-3.従業員に不満が溜まる恐れがある

評価は、従業員のモチベーションを上げるというメリットもありますが、モチベーションを下げる場合もあります。会社の評価が自己評価より低いと、従業員は不満を抱くでしょう。特に上司やチームとの相性、事業成績など、社員個人の努力では解決できない部分の評価を下げられると、不満が出やすくなります。

しかし、不満が出るからといって、正当な評価をねじ曲げるわけにはいきません。従業員からの不満に関する問題を解決するためには、評価への適切なフィードバックとフォローが不可欠です。

フィードバックには、以下のような方法があります。

  • 評価内容とその根拠の、過不足ない説明
  • 今後の課題や目標設定
  • 目標達成のためのアドバイス

なお、フィードバック面談の方法については、以下の記事で解説しています。

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さらに、必要に応じて研修やセミナーを紹介したり、異動や昇進などの検討をしたりといったフォローをすると効果的です。

3.新しい人事評価制度「ノーレイティング」とは?

近年注目されている人事評価の手法に「ノーレイティング」があります。ノーレイティングは、従来取られていた「レイティング」と違い、社員のランクづけをしません。

ノーレイティングのメリットとデメリットは、以下の通りです。

【ノーレイティングのメリット】

  • コミュニケーションの機会が多い
    ノーレイティングでは月に数回ほどのスパンで、面談を実施します。上司と部下のコミュニケーションの機会が多いため、認識の乖離は少なくなるでしょう。
  • 評価に対する納得感が増す
    ノーレイティングでは、上司と部下との面談で、課題設定と目標達成の進捗を確認します。面談の度にフィードバックがもらえるため、評価の納得度が高まります。
  • 社員の個性や特性が尊重される
    レイティングのように、細かい評価項目や基準がなく、重視されるのは社員1人1人の資質や個性です。人材の多様性が増し、社員のモチベーション向上にもつながります。

【ノーレイティングのデメリット】

  • 管理職の負担が増える
    四半期や半年に一度だった面談の回数が増えるため、従来よりも面談に時間を割くことになります。多忙な管理職にとって、実現は難しい可能性があります。
  • 管理職のスキルが不可欠
    ノーレイティングには細かい評価基準がないため、高度な評価スキルが必要です。部下との1on1面談では、コミュニケーション能力も求められます。

ノーレイティングには多くの導入メリットがある一方で、管理職のスキルや負担の増加により実現可能性の低さが難点というデメリットがあります。ノーレイティングの導入時には、まず自分の会社に適しているかどうかを検討しましょう。

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まとめ

人事評価制度には、企業理念の共有や社員のスキル把握など、さまざまなメリットがあります。評価面談は上司と部下の貴重なコミュニケーションの場となり、給与や等級の査定も可能です。

一方で、評価者のスキル次第で評価が異なったり、結果によって社員に不満を抱かせたりするデメリットも見逃せません。社員の納得感を得るには、客観的で公平性の高い評価と、適切なフィードバックが不可欠です。

また、最近では新たな評価手法「ノーレイティング」に注目が集まっています。多様性を重視した手法ですが、その分管理職に負担がかかります。導入を検討するなら、メリットとデメリットの両方を考慮しましょう。


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人事評価制度を構築・運用するうえで最も重要なことは、公平・明確な評価の“ものさし”を設定し、それを社員にしっかりと説明、理解してもらうことです。具体的な指標や基準の設定方法、上手な運用方法にご興味がある方は、ぜひご参加ください。
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NBCPlusオンライン編集部

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