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従来の人事評価制度は廃止されていく?新しい人事評価制度を解説

2022.08.08

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人事評価制度とは、従業員の能力や働きぶりを評価し、給与や処遇に反映する組織行動です。日本企業の多くは人事評価制度を採用し、社員の昇進や給与に対する客観的な根拠などに使われてきました。しかし近年は、人事評価制度のあり方に疑問を持ち、廃止の選択をする企業も少なくありません。

そこで今回は、廃止の一途を辿る人事評価制度の問題点と理由、新たに登場した評価制度「ノーレイティング」について解説します。当記事で最新の人事評価方法や導入方法について学び、今後の経営活動の参考にしてください。


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目次

1.廃止が進む?従来の人事評価制度

従来の人事評価制度(レイティング)は、企業によって細かな項目は異なるものの、主に「業績・能力・意欲」を評価対象に組み込んでいます。人事評価制度は、運用次第では従業員のモチベーションアップも可能です。しかし、いくつかの問題点もあるため、従来の制度を見直そうとする動きが加速しています。

ここからは、従来の人事評価制度の問題点と、今後人事評価制度がどのように変わっていくのかを解説します。

1-1.従来の人事評価制度の問題点

日々進化を続ける社会の中で、従来の人事評価制度は変化がなく、時代に置き去りにされているのが現状です。評価制度の問題点と言われる3点について以下に解説します。

  • 制度が時代にそぐわない
  • 心理的安全性が低くなりやすい
  • 低い評価の社員が意欲を失いやすい

制度が時代にそぐわない

従来の人事評価は、半年に1度や年に1度行われ、スピードを重視する今の時代ではワンテンポ遅れていると言わざるを得ません。また、年次評価方式は過去の振り返りを実施し、現在の働き方が評価されていない点も問題視されています。評価内容についても、どのような人材が評価されるか時代によって異なるため、内容や時期に関して改めて見直す必要があるでしょう。

心理的安全性が低くなりやすい

心理的安全性とは、グループメンバーに対し、自身の考えや意見を落ち着いた状況で発言できる状態のことです。従来の制度は、評価の際に成果や数値化した実績が重視されます。そのため、失敗を恐れるあまり過度なプレッシャーがかかり、心身ともに不安定な状況に陥ることも少なくありません。また、メンバー内での評価の差にも敏感になり、心理的安全性が損なわれるため、生産性が下がる恐れもあります。

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低い評価の社員が意欲を失いやすい

従来の人事制度は、評価内容に不明瞭な面が多く、結果に不満を抱く社員も多く存在しました。特に低い評価を付けられた社員は、評価方法に納得がいかずモチベーションが下がり、会社への不信感へとつながります。結果、信頼関係が崩れてしまい退職へとつながる事例が多くあります。

その他の人事評価制度を導入する際のメリット・デメリットについては以下の記事で解説しています。

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1-2.人事評価制度の変化

人事評価制度の基盤である「MBO(目標管理制度)」や「コンピテンシー評価(理想の行動特性評価)」は、アメリカが発祥です。アメリカ企業は「成果主義」が多く、会社への貢献度や業績を評価の対象にしてきました。

しかし、成果主義の評価手法だけでは不十分であるという意見が多く、多くのアメリカ企業では社員のランク付けを止める動きが出ています。時代とともに業務内容も変化し、それによりさまざまスキルが求められるため、成果だけで評価するのが難しいのが要因の1つです。

そこでアメリカは、大手企業を中心に新たな評価制度を打ち出します。個人ごとにランクを付けない「ノーレイティング」という手法です。従来の人事評価制度とは異なり、ランク付けを行わないノーレイティングは、AdobeやGoogle、Microsoftなどグローバルな企業が多く取り入れています。

2.アメリカなどで導入されている新しい人事評価制度「ノーレイティング」

従来はアルファベットを用いてランク付けを行っていましたが、ノーレイティングでは短いスパンで面談を行い、日々変化する状況に応じて現段階の評価を行います。ノーレイティングを導入することによって得られるメリット・デメリットは、次の通りです。

ノーレイティングを導入する際に生じるメリット

  • 社員のモチベーション向上につながる
  • 目標が柔軟かつ明確に立てやすい
  • 個人に合わせた目標設定、評価が可能になる

ノーレイティング制度は頻繁に1on1の面談を行うことで、その時々の状況に合ったフィードバックが可能です。そのため、より具体的な目標が立てやすく、何をやるかが明確になり従業員のモチベーションアップにつながります。また、働き方に囚われることなく目標設定できるため、時短勤務や在宅勤務の社員にも対応可能です。

ノーレイティングを導入する際に生じるデメリット

  • 評価者の働き方に変化が生じる
  • 評価者と被評価者の信頼関係がなければ成り立たない

従来の人事評価制度の場合、評価を行うのは半年に1度や年に1度のみ行われていました。しかし、ノーレイティングを採用した場合、頻繁に面談が行われます。そのため、評価者は日々の業務の中で面談を行う時間を確保しなければなりません。以前までの働き方とは異なるワークスケジュールを組むことになり、評価者の負担は大きくなるでしょう。

また、1on1の面談では上司の高いマネジメント力が求められ、部下との信頼関係が構築されていない場合は最善の目標設定が行えない場合があります。ノーレイティング評価は、評価者である上司への負担が多く、評価者に対するフォローや仕事の割り振りも考えなければなりません。

3.ノーレイティングを導入するポイントは?

ノーレイティングを成功させる鍵は、評価者である上司のマネジメント力にあります。これまで通りの働き方をしつつ新しい評価制度を導入するのは難しく、評価制度だけでなく評価者、被評価者も考えを改めなければなりません。

ここからは、ノーレイティングを導入する際に押さえたいポイントについて解説します。

評価制度を見直す

ノーレイティングは従来の制度と異なります。制度内容に応じて昇進・ボーナスなどの報酬の時期や、評価基準を変更しましょう。また、面談は1on1で行うため、その分上司である管理者に評価業務の負荷がかかります。管理職が実務を持つプレイングマネージャーの場合は、業務を振り分けたり、人員を増やしたりなどの見直しが必要です。

評価者を育成する

ノーレイティングは、評価者と被評価者が1対1で行う面談が必須です。面談の際、評価者には高いヒアリング力とマネジメント力が求められます。面談する際には部下が話しやすく、リラックスした状態で発言できる空間づくりが必要です。評価面談の時だけでなく、日頃から頻繁にコミュニケーションを取り、信頼関係を構築しておきましょう。また、マネジメント能力を自発的に養うのは難しいため、評価者に対して事前に訓練や育成を行うことが重要です。

段階を経て導入する

従来の人事評価制度(レイティング評価)と、ノーレイティングは評価内容や面談頻度も異なるため、導入する際は徐々に進めることをおすすめします。まずは面談の頻度を増やし、コミュニケーションを取りながら、部下とノーレイティングへの理解を深めていきましょう。

ノーレイティングを全面的に導入するタイミングについては、新たな評価制度を整え、評価者である上司に必要なスキルが備わってから行います。教育を怠ると評価システムがうまくいかない可能性が高まるため、十分な人材育成が必要です。

4.日本でも従来の人事評価制度は廃止されていく?

現在の日本の企業体制を続けているうちは、すぐに人事評価制度を廃止するのは難しいでしょう。日本には「年功序列」の風潮が存在するため、「成果主義人事」のアメリカと同じようにノーレイティングを採用するのは容易ではありません。

また、日本ではタレントマネジメント(TM)が進んでいないことも、ノーレイティング導入の課題になっています。タレントマネジメントとは「社員が持つ能力や経験などの情報を生かし、育成や配置決めを行うことで企業の成長につなげる計画」を指します。

年功序列制度に囚われず、タレントマネジメントが進んでいる企業であれば、ノーレイティング導入も可能です。ゆくゆくはノーレイティングが主流になる可能性も高いため、早いうちから理解を深めておくとよいでしょう。

まとめ

従来の人事評価制度は、個人に対し「S」「A」「B」「C」とランク付けを行い、ボーナスなどの報酬や昇進の理由付けとして活用されてきました。しかし、内容の更新が行われず、時代の流れに伴い評価内容が現代の働き方とそぐわないものが増えています。そこで新しく、ランク付けを行わない評価制度である「ノーレイティング」が登場しました。

ノーレイティングはタレントマネジメントを採用している企業に有効的と考えられ、社員のモチベーションアップにつながる制度であると注目が集まっています。どちらが自社の目的に合っているか、有効的かどうか判断を見極め、人事評価制度の見直しをしましょう。


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人事評価制度を構築・運用するうえで最も重要なことは、公平・明確な評価の“ものさし”を設定し、それを社員にしっかりと説明、理解してもらうことです。具体的な指標や基準の設定方法、上手な運用方法にご興味がある方は、ぜひご参加ください。
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この記事の著者

NBCPlusオンライン編集部

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