皆様はワールドカップをご覧になりましたか?
私は見過ぎて少々寝不足です(笑)
ベスト8進出がかなわなかったことは残念ですが、それにしても今大会の日本代表の活躍は衝撃的でした。ドイツ・スペインといった強豪国を連続して撃破!さらに、両試合とも前半は見ている誰もが「もう日本終わった」と思ったであろう中での逆転勝利……。
最大の勝因は、前半を終えて森保監督が出した打ち手(フォーメーション変更、選手交代)と戦術(リスクを取って前に出る)がドハマりし、前半と後半でまったく別のチームになったことだと私は考えています。
森保監督には「監督の采配・戦術でいかようにもチームは変わる。」ということをまざまざと見せつけられました。
「監督(リーダー)次第でチーム(組織)が変わる」のを目の当たりにし、時代を導いたあるリーダー達を思い出しました。
今回は、そんな時代を導いたリーダーたちをご紹介します。
目次
まずは、同郷出身の親友でありながら、考え方がまるで違うライバルでもあった西郷隆盛と大久保利通です。二人とも維新という共通目標のもと同じ方向に進みますが、明治維新後は考えの違いによって進む道を違えてしまいます。
個性尊重のリーダー 西郷隆盛
西郷隆盛はご存じの通り豪快で、人を惹き付ける魅力的な人物でした。
「敬天愛人」の言葉通り、人をとにかく愛する性格で、後輩や部下についてこのように言っています。
世の中には、能力だけをモノサシにして
人間を推しはかるリーダーがいるが、これは間違いだ。
というのは、この世の中では、人間は、
10人のうち、8人か9人まで大体が凡人だ。小人といってもいい。
すぐれた能力を持つのは、ほんの1人か2人にすぎない。
(中略)
小人とか凡人とかいわれる8人や9人の人間の中に、
その長所を発見して、それを育てることが大切なのだ。
小人の中に、長所を発見できないようなリーダーは
優れたリーダーではない。
参考書籍:
『西郷隆盛 人を魅きつける力』著:童門冬二/PHP文庫
https://amzn.to/3VByx8i
「個々の能力を活かそう」という、まさしく個性尊重のリーダータイプ。
こんなに人を愛する西郷隆盛を、当然周りが放っておくはずもなく、明治政府樹立後に下野した後でも、地元・薩摩の若者たちに有志集団『精忠組』のリーダーとして自然に押し上げられます。
真正面からまともに受け止めてくれる西郷隆盛というリーダーと、熱い思いをぶつけ合うような雰囲気が想像できます。
結果的に、薩摩の士族たちのエネルギー(不満)が爆発し、戦争へ発展してしまったことは悲しい結末ですが、抑えきれないくらいのロマン・熱量を持ったこのチームの性質は、西郷隆盛という人物をそのまま表していたのではないかと感じます。
徹底した能力主義 大久保利通
個性尊重の西郷隆盛に対し、大久保利通は徹底した能力主義。理論派で管理重視の冷徹な人間というイメージが強いですね。
「組織で必要なのは、組織の目的を達成する能力。」
「組織の目的を達成するためには、人間対人間のうじうじした関係に沈み込んでいてはいけない。そういうものを振りきって、あくまでも前へ進むべきだ。」
という主張のもと、親友である西郷隆盛を振り切ってでも、日本の改革を進めていきました。
大久保利通は、派閥意識のない人間で、できあがったばかりの明治政府の幹部も、伊藤博文(長州)や大隈重信(佐賀)など出自はバラバラ。能力さえあれば政府の官僚にどんどん登用したといわれています。薩摩の若人をまとめあげた西郷隆盛も凄いですが、この出自がバラバラの幹部をまとめあげた大久保利通もまた凄い。
大久保利通に率いられた日本政府がごく短期間で矢継ぎ早に施策を実行し、国の礎を築いたのはご承知のとおりです。大久保利通自身、とてつもなく高い能力を持っていましたが、そのあまりに性急で激しい改革が反感を買ってしまったのか、テロリストの凶刃に倒れてしまったことは非常に残念です。
余談となりますが、大久保利通の能力主義は、中国・三国時代の魏王、曹操が掲げた「唯才是挙(たださいのみこれあげよ)」と似ています。曹操もまた、徹底した合理主義・能力主義で、時に非情な判断と畏怖を上手に使いこなし、激動の時代に国の礎を築いた人でした。
国の礎を築くには、冷徹な判断を下すことも重要なのですね。
強力な統率力 チンギス・ハーン
すこし話は逸脱しますが、「リーダー(率いる将)次第で組織(国)が変わる」という視点で、13~17世紀に大陸で繁栄したモンゴル帝国の事例を紹介します。
騎馬民族であるモンゴル軍の戦い方はとても独特でした。
広大な土地のモンゴルで最も問題となっていたのは「兵站(物流)」です。
通常、軍隊の王道は、戦力の「集中」が原則ですが、軍隊が集中していては、兵站が寸断された時にあっさり軍隊が瓦解してしまいます。そのため、騎馬を駆るモンゴル軍は「分散」を戦い方の主としていたそうです。
軍をいくつも分散させ小集団を作り、資源は現地調達しながら進軍する。個々の能力が非常に高いからこそなせるわざですね。
この小集団を強力な統率力でまとめあげたのがモンゴル帝国の初代皇帝、チンギス・ハーンです。
チンギス・ハーンは、中国から東ヨーロッパ、中東までの巨大な帝国を築き上げ、最盛期には当時の世界人口の半分以上がその統治下になっていたと言われています。とんでもないパワーですね。
ただし、このような強烈なリーダーがいなくなった後、モンゴル帝国は次第に縮小し、溶けるかのようになくなっていきます。個々の能力が高く、小集団でも生きていけるため、
そもそもまとまる必要もモチベーションもあまりなかったと言われています。
リーダー次第で組織が変わる
リーダーによって大きく組織の性質・性格・特徴は変容します。
時代が求めるニーズに合ったリーダーが現れ、方向性がマッチすると、組織はとてつもない能力を発揮します。
サッカー日本代表が強豪国を次々と破ったことも決してまぐれではありません。
森保監督というリーダーのもと、チームの目標や個人の能力、厳格なルール、相手の弱点を突いた戦術など全てがマッチし、組織が本来持つ能力を発揮しつくした結果だったのでしょう。日本代表の活躍と森保監督の姿勢はいろいろなことを教えてくれました。
「リーダー次第で組織が変わる」のであれば、リーダーはその分大きな責任を持つことになります。ただ、リーダーであるからこそ得られる達成感・やりがいがあることも確かです。
時にプレッシャーで疲れてしまうこともあるでしょうが、
「日本代表が見せてくれたような感動を自分たちの組織でも創れるかもしれない!」
という夢を持って、リーダーの皆様は日々の業務に勤しんでください。
また、そんなリーダーを育てていきたい経営者の皆様は、アプローチや手法に悩まれたら、いつでもお問い合わせください。
▼リーダー育成についてのお問い合わせはこちら
最後に、自戒も込めてリーダーとしての心構えを一つ。
「それは私の責任です。」ということが言い切れてこそ、責任者たりうる。
参考書籍:
『社員心得帖』著:松下幸之助/PHP文庫
https://amzn.to/3upoIyy
なんと言っても、これに尽きますよね……。
管理職育成・リーダー育成
この記事の著者
NBCコンサルタンツ株式会社
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