幹部育成は企業の未来を考える上で重要なテーマである一方、幹部育成を後回しにしてしまい、幹部が育たない企業もあります。幹部育成をスムーズに進めるためには、それぞれの企業が自社で取り組むべき課題を把握し、人材育成のポイントを押さえて取り組まなければなりません。
当記事は、幹部育成で失敗したくない経営者や、自社をさらに発展させたいと考えている経営幹部へ向けて、幹部育成を行う上で重要なポイントを紹介します。幹部育成のポイントを押さえ、次世代リーダーを育てる基盤を整えましょう。
〔エッセンシャル版〕
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目次
1.幹部育成の重要性
経営者や管理者のそばに、経営者目線で判断でき組織を動かせる幹部がいると、企業の意思決定がスムーズに進みます。企業が将来にわたって生き残るためには、幹部の育成が必要不可欠です。
企業は、現在の幹部が引退を迎える10年後20年後の未来を見据え、後継者の育成計画を立てなければなりません。幹部育成には数年単位の時間がかかる場合がありますが、長期的に見れば企業の発展に欠かせないため、育成に力を入れるべきです。
1-1.幹部育成で身につけたいスキル・能力
ここでは、幹部育成で身につけたい3つのスキル・能力について紹介します。
問題を提起し、解決していく力 |
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経営幹部には、情報を収集・分析し、戦略を立て、解決していくスキルが必要です。スキルのある幹部はトラブルに直面したとき、適切な方法で解決に導くことができます。幹部育成では「物事を多面的に見る力」や「既存の概念にこだわらない問いを立てる力」「物事を考え抜く力」を身につけられるよう支援しましょう。 |
ビジョンを示し、実現していく力 |
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違った価値観を持つ人たちと同じ目的を共有するためには「自社の目指すべき姿」や「自社と社会とのつながり」といった共通のビジョンを全体へ示さなければなりません。リーダーシップを取り、ビジョンを発信・実現していく力は幹部に必要な要素です。 |
信念と倫理観を持った、高い人間力 |
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幹部には、高い人間力を持った人物が適しています。高い人間力とは一般的に、信念と倫理観を兼ね備え、自らの感情をコントロールできる誠実な人柄のことです。円滑な人間関係を築く「コミュニケーションスキル」も人間力に含まれます。高い人間力を持った幹部が組織にいれば、不正を防ぎ、正しい方法で組織を発展させることができます。 |
2.幹部の育成が進まない場合によくある理由4選
幹部育成は重要ですが、優秀な人員を現場から離したくないといった理由で、後回しにされてしまうこともあります。また、育成期間中の幹部候補者は通常の業務から外れるため、周囲に負担がかかるなど、育成に踏み出せない理由は企業によってもさまざまです。
ここからは、幹部の育成が進まないときによくある理由を詳しく紹介します。幹部育成が進まない理由を把握し、改善策を探しましょう。
2-1.リソースが不足している
幹部育成に携わるためのリソースが不足していると、育成がうまくいきません。幹部教育は一般の社員研修と異なり、座学やシミュレーションのみでは不十分です。幹部の資質は実際の仕事を通して育つ一方で「教育できる人がいない」「教育している余裕がない」といった理由から、幹部を育成ができない状況に陥りやすいでしょう。また、外部研修を活用する場合、高額な費用がかかるため、幹部育成を諦める組織もみられます。
幹部育成を検討している組織は、教育のリソースを見直すことが効果的な育成につながります。幹部育成のための教育期間は、将来に向けた投資です。幹部候補者に「経営上で重要なポジションを任せる」「必要な財源を確保する」といった役割を任せ、キャリア形成の機会を作りましょう。
2-2.育成期間が不十分である
幹部育成には時間がかかるため、育成期間中に「期待していたほどの効果が出ない」「候補者が離脱してしまう」などの原因から、うまくいかない場合があります。
幹部育成は、10年以上先を見越して行うケースも少なくありません。育てる側も育つ側もどっしりと構え、長期的な視点で臨む姿勢が重要です。
2-3.責任・権限の譲渡ができていない
幹部を育てる側が、育てたい人材の責任や権限を制限してしまうと、幹部育成がうまくいきません。例えば、幹部候補者に意思決定を任せるとき、指導者や責任者が過度にアドバイスすると、指導者の意見にすり替わってしまいます。組織が正しい方向へ進めるような支援は必要ですが、指導者は一歩引いた姿勢で育成を行いましょう。
また、指導者が自分と異なるタイプの幹部候補者を教育する場合、適切な指導が行えないことがあります。仕事の進め方や考え方の違いから、責任・権限を譲渡する適切なタイミングが分からなくなるためです。幹部育成では、教育の基本方針・方法・目標を明確にし、指導内容を具体的に決めてから始めると、責任・権限の委譲がスムーズに進みます。
2-4.研修の効果が出ていない
幹部育成研修を行っても、学びを実践できる場がないと研修が無駄になってしまい、幹部育成が進みません。研修から実践までに時間が空く、研修成果を評価する指標がないといった場合も、研修に参加した効果を実感できないでしょう。研修受講者が学んだ知識を活用できるような環境を整えることが求められます。
研修の成果が十分に感じられないときは、研修プログラムそのものを見直し、より効果的な研修になるよう改善していくと、幹部育成がうまくいく可能性があります。
3.幹部育成を実施する場面で押さえるべき注意点
幹部育成の方法は企業によって異なるため、正解はありません。企業の規模・経営理念・幹部育成の需要度などが異なれば、効果的な育成方法も変化します。しかし、幹部育成の場面で押さえるべき注意点は、どの企業でも共通しています。
ここからは、実際の幹部育成において押さえるべき3つのポイントを紹介するので、育成方法を構築する際の参考にしてください。
3-1.幹部にふさわしい人物を選抜する
幹部にふさわしい人材像を組織内で明確にしておき、自社の基準に該当する人物を経営幹部候補として選抜しましょう。なお、幹部として必要な要素は組織によって異なります。現時点での実績を重視して選ぶ組織もあれば、長期的目線で計画を実行していく力や信頼度の高さを重視して候補者を選抜する組織もあるでしょう。
幹部としてふさわしい要素と、要素の優先度を社内で決めておくと、幹部候補者の選抜時に役立ちます。
3-2.修羅場経験を多く積ませる
幹部候補者にいかに修羅場経験を多く積ませるかが、幹部育成の鍵になります。修羅場経験とは「企業全体の意思決定に関わる経験」や「経営に関わる大きなプロジェクトを達成する経験」を指します。一般の社員では経験できない大きな試練を越え、幹部としてふさわしいスキルや人格を身につけることが修羅場経験を積ませる目的です。
具体的な修羅場経験としては、支社や海外拠点の立ち上げ、他組織の経営幹部との意見交換、自社を発展させるためのビジネスプランの策定と実行などが挙げられます。
3-3.適切なフィードバックを実施する
指導者は、幹部候補者が行った仕事に対するフィードバックの機会を設けましょう。適切なフィードバックによって、候補者自身が現状を把握し、改善が必要な点や対処すべき弱みに気付けます。適切なフィードバックを行うために、以下の3点を押さえておきましょう。
- 指導者と幹部候補者が向き合って話せる時間と場所を選ぶ
- 幹部候補者の行動に焦点をあて、具体性のある内容を話す
- 良い成果など肯定的なフィードバックから行う
フィードバックの実施の際、指導者は幹部候補者の話を否定せず、真剣に耳を傾けるように心がけます。指導者の傾聴によって、幹部候補者はアドバイスを受け入れやすくなり、状況の改善に向けた学びや気付きを得られるでしょう。
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まとめ
幹部育成は、企業が将来にわたって発展するために重要な投資です。育成がうまくいかない場合は育成リソースや期間が十分かどうか見直した上で、時には育成プログラムそのものを見直しましょう。
幹部候補者は実務経験を通じて最も成長するため、座学の研修だけでは思うような成果が得られない場合もあります。研修から時間を開けず、実際の業務と適切なフィードバックが行えるよう教育体制を整えることが大切です。
幹部育成には長い時間がかかり、人材も限られるため、育成する側ははっきりとしたビジョンを持って幹部育成に取り組みましょう。
「リーダーの力量以上に組織は伸びない。」
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(令和2年度第3次補正事業再構築補助金により作成)
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