『三国志』や『キングダム』など、中国の歴史を扱った作品は広く親しまれており、皆様も一度は目や耳にしたことがあるのではないでしょうか?
内容自体が面白いことはもちろん、さまざまな英雄の人生から教訓を得られることも、人気の理由のひとつでしょう。
今号では『項羽と劉邦』という作品から、コロナ禍の組織づくりについて考えてみます。
目次
項羽と劉邦のあらすじ
紀元前221年、始皇帝により中国は統一されますが、始皇帝が亡くなったあと、すぐに混沌とした世の中へと戻ります。
その混乱の中を台頭したのが、項羽と劉邦です。
項羽は滅ぼされた国の将軍家出身、劉邦は小さな村の出身でした。2人の活躍により秦は滅ぼされ、項羽が天下統一を成し遂げます。
その後、両者は何度も衝突し、項羽が連戦連勝、劉邦は連戦連敗を繰り返すのです。
良家の出身である項羽と庶民の出身である劉邦、順当な結果と思える因縁の攻防は、最後には劉邦が項羽を打ち破り、漢帝国を創設します。
この2人の英雄からは、多くの学びを得ることができます。特に部下への接し方は、対照的で目を引きます。
自分の好き嫌いに任せ人の意見を聞けない項羽
項羽は、良家の血筋と強烈なカリスマ性を持ち、たくさんの有能な部下を集めました。
しかし、好き嫌いに任せた論功行賞に不満を持たれ、期待もされず功績に応えてもらえない将軍たちは、次々と項羽のもとを離れていってしまいます。
項羽の人の意見を聞けない性格も災いし、参謀・軍師も次々と項羽を見限っていきました。
項羽と親ほども年の離れた老軍師の范増(ハンゾウ)は最後まで進言し続けますが、耳の痛い言葉を嫌った項羽は、なんと自分に忠実な范増を追放してしまうのです。
項羽のもとを離れた武将たちは、もうひとつの勢力である劉邦のもとへ集まり、勢力は逆転してしまいます。
心理学で
「他人に対し悪い印象を持ち接し続けると、悪い影響しか与えずそのとおりの結果しか出てこない」ことをゴーレム効果といいます。
史記に「功伐に矜り(こうばつにおごり)」とあるように、項羽は自分の功績ばかりを誇る気質だったようです。
能力を認められず才能を発揮できない環境下で部下たちは「やってられるか!」とどんどん離れていってしまいました。
人の意見を聞き成果には惜しげもなく褒賞を出す劉邦
一方、劉邦は人をその気にさせる天才だったようです。
人の意見を聞き、成果には惜しげもなく褒賞を出す気風の良さもあり、部下たちはどんどんと能力を発揮させていきました。
話を熱心に聞き、自分の才能を認め尊重してくれるリーダーのために全力を尽くしたいと誰でも思うものです。
心理学で
「他者に対して期待を抱き、そのように接することで実際に期待どおりの成果が出る」ことをピグマリオン効果といいます。
劉邦は、項羽とは真逆のことを体現していたようです。
項羽と劉邦の差は「他人の話を聞く」
劉邦に人の才能を見抜く眼があったかというと、実はそうでもないのです。
後に、劉邦軍の最前線に立つ韓信(カンシン)という人物がいますが、劉邦に仕官した当初は、小さな役割しか与えられなかったそうです。
このままでは有能な才能が去ってしまうと見た参謀の蕭何(ショウカ)が何度も劉邦を説得して韓信を大抜擢、項羽を倒す原動力となりました。
劉邦も実は直感型のリーダーでしたが「他者の話を聞く」という能力を持っていたことが、項羽との決定的な違いだったかも知れませんね。
まとめ
2,000年以上も前の2人の英雄は、今でも我々に大きな気づきを与えてくれます。
ご自身の組織を振り返ってみて、今にも心が離れていきそうな中核社員(范増)はいませんか?
「入ったばかり」と役割を与えず、才能ある新人(韓信)を眠らせてはいないですか?
自分の気づかない視点からアドバイスをくれる参謀(蕭何)はいますか?
改めて自社の人財を活かしきれているか振り返り、将来に備えた足固めをしておくことが、今の時期だからこそ大切かも知れません。
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NBCコンサルタンツ株式会社
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