5W2Hは、情報を抜け漏れなく論理的に「整理・分類・集約」するためのシンプルなフレームワークです。「いまさら5W2H?」と思われるかもしれませんが、現状把握や原因分析、課題発見・解決、新しいアイデアの構想、事業計画・戦略立案、説得力のあるコミュニケーションなど、ビジネスにおいて幅広い場面で使える優れものです。使い方を覚えておいて損はありません。
今回は、基本にして奥義といっても過言ではない『5W2H』について、各要素の意味やビジネスシーンで活用するためのコツ・具体例を紹介します。
目次
5W2Hとは?各要素の意味・概要
5W2Hとは、「W」から始まる5つの英単語「What」「Why」「Who」「When」「Where」と、「H」から始まる2つの英単語「How」「How much/How many」、これら7つの頭文字をとった言葉です。
各構成要素について、それぞれ紹介します。
Why(なぜ)
「Why(なぜ)」は、「なぜ起こったのか?」「なぜ行動するのか?」といったように、目的や根拠・理由、背景などを明確にする要素です。
What(何を)
「What(何を)」は、「商品やサービス・イベント・コンテンツ」「抱えている課題や問題点」「会議やプロジェクトの議題・テーマ」など、具体的な内容や対象・状況を明確にする要素です。
Who(誰が・誰に)
「Who(誰が・誰に)」は、「社内の担当者や関係者・チーム」「顧客」「競合企業」「内定者」など人物を明確にする要素です。「誰が」「誰に」両方の意味で使用されるほか、個人だけでなく会社・組織を明確にする際にも用いられます。
When(いつ)
「When(いつ)」は、「会議やミーティングの日時」「プロジェクトの期間」「提出期限・納品期限」「施策の実施時期・タイミング」など、時間・時期を明確にする要素です。
Where(どこで・どこに)
「Where(どこで・どこに)」は、「会議の開催場所」や「取引先の所在地」「キャンペーンの対象地域は●●区」といった特定の場所を明確にするほか、「問題点はどこにあるのか」「問題はどこで発生したのか」などを明確にする要素です。
How(どのように)
「How(どのように)」は、「どのようにして実施するのか」「問題はどのようにして起こったのか」といった、目標達成や課題解決のための具体的な実行方法(手段・手順)やプロセスを明確にする要素です。
How much/How many(いくら・どのくらい)
「How much/How many(いくら・どのくらい)」は、「キャンペーンの予算はいくらかかる」「これぐらいの量を発注する」「価格はどのくらいか」「この製品の販売目標はいくら」など、具体的な金額・コストや数値・量を明確にする要素です。
5W2Hを活用するメリット・必要性
過不足のない円滑なコミュニケーションが可能になる
コミュニケーションには必ず相手が存在します。説明不足があると、受け手も「なぜそれをやるの?」「具体的にどのようなことをするの?」「いつまでに誰がやるの?」と質問・確認をする必要が生じます。口頭や電話など直接のコミュニケーションであれば、その場で補足することもできるかもしれませんが、メールやチャットツールなど文字でのコミュニケーションを行っている際は、双方の時間をムダに消費してしまいます。
HR総研の実施した『「社内コミュニケーション」に関するアンケート調査』によると、「社員間のコミュニケーション不足が業務の障害になるか」という問いに対し、「大いにそう思う」が72%、「ややそう思う」が23%と、ほとんどの回答企業(合計95%)において、「(社員間のコミュニケーション不足が)業務の障害になる」と認識していることが分かっています。
出所:HR総研『「社内コミュニケーション」に関するアンケート2022』2022/03/03
人はそれぞれ異なる考え方や価値観を持っています。それ故、しっかりと意思疎通を図ることは、実は簡単ではありません。そのため、5W2Hは情報伝達時に重要な役割を果たします。5W2Hを意識して伝えることで、抜け漏れや説明不足が起こりにくくなり、要点を押さえた円滑なコミュニケーションにつながります。
説得力が高まる
5W2Hを使うことで、内容が網羅的・具体的になり説得力が高まります。
企画書やプレゼンテーション資料を作成する際などは、5W2Hの中でも特に核となる2W1H「目的(Why:なぜ)」「内容(What:何を)」「手段(How:どうやって)」をしっかりと整理することで、資料の質も向上しいっそう説得力が高まるでしょう。
思考やものごとを整理・深堀りできる
何かを深く考え検討する際、さまざまな情報や要素・視点に議論が広がってしまうことがないでしょうか?広い視野・観点でものごとを考えることはもちろん大切ですが、本来の目的から脱線・混乱してしまったり、収拾がつかなくなってしまわないよう、5W2Hを活用しましょう。
5W2Hの各要素に当てはめることで、状況や課題を把握しやすくなります。また、余分な情報を精査することができ、効率的に頭の中を整理・深堀りすることができます。
5W2Hに正しい順番はないため、利用する際は順番を入れ替えて問題ありません。「Why(なぜ)」から始めれば目的を理解・共有しやすくなり、「What(何を)」から始めれば具体的に何を行うのか理解・共有しやすくなります。伝えたい事柄や重要度に応じて順番を入れ替え、柔軟に運用しましょう。
類似フレームワークとの違い
5W2Hと似た用語・類似フレームワークに5W1H・5W3H・6W2H・2W1H・7W2H・7W3Hなどがありますが、違いは情報の区分・整理の仕方です。メリットや活用法に違いはありませんので、それぞれ目的やシーンに合わせて最適なものを活用すると良いでしょう。
5W1H
5W1Hは、5W2Hの基となった考え方で、「How much/How many(いくら・どのくらい)」を除く6つの要素(Who・When・Where・What・Why・How)で情報を整理します。
- Why(なぜ)
- What(何を)
- Who(誰が・誰に)
- When(いつ)
- Where(どこで・どこに)
- How(どのように)
5W3H
5W3Hは、5W2Hの「How much/How many(いくら・どのくらい)」を「How much(いくら)」と「How many(どのくらい)」に分けて情報を整理します。
- Why(なぜ)
- What(何を)
- Who(誰が・誰に)
- When(いつ)
- Where(どこで・どこに)
- How(どのように)
- How much(いくら)
- How many(どのくらい)
6W2H
6W2Hは5W2Hの「Who(誰が・誰に)」を「Who(誰が)」と「Whom(誰に)」に分けて情報を整理します。
- Why(なぜ)
- What(何を)
- Who(誰が)
- Whom(誰に)
- When(いつ)
- Where(どこで・どこに)
- How(どのように)
- How much/How many(いくら・どのくらい)
2W1H
2W1Hは5W2Hのなかでも、問題解決において特に重要な要素である3つの要素「Why(なぜ)」「What(何を)」「How(どうやって)」を取り出したものです。
- Why(なぜ)
- What(何を)
- How(どのように)
7W2H
7W2Hは5W2Hの「Who(誰が・誰に)」を「Who(誰が)」と「Whom(誰に)」に分け、比較や選択肢がある場合にどちらであるかを示す「Which(どちら)」を加え情報を整理します。
- Why(なぜ)
- What(何を)
- Who(誰が)
- Whom(誰に)
- When(いつ)
- Where(どこで・どこに)
- Which(どちら)
- How(どのように)
- How much/How many(いくら・どのくらい)
7W3H
7W3Hは7W2Hの「How much/How many(いくら・どのくらい)」を「How much(いくら)」と「How many(どのくらい)」に分けて情報を整理します。
- Why(なぜ)
- What(何を)
- Who(誰が)
- Whom(誰に)
- When(いつ)
- Where(どこで・どこに)
- Which(どちら)
- How(どのように)
- How much(いくら)
- How many(どのくらい)
5W2Hは多くのビジネスシーンで活用できる
5W2Hがどのようなシーンで活用できるのか、具体的な使い方や例を紹介します。
報連相(報告・連絡・相談)、情報伝達
報連相は社会人・ビジネスマンの基本といわれますが、相手に主旨を理解してもらえなかったり、間違った解釈をされてしまった経験はないでしょうか?「伝わらない」「理解してもらえない」を防ぐためのポイントは“具体性”と“網羅性”です。5W2Hを活用することで具体性がグッと高まりますし、伝達すべき事項の抜け漏れも防ぐことができます。
議事録・報告書
社会人・ビジネスマンであれば、議事録・報告書の書き方は必ず身につけておきたいビジネススキルのひとつです。ポイントは、後日見返すときや会議・打ち合わせに同席できなかった関係者への共有・展開を意識し、見やすく簡潔に作成することです。あらかじめ5W2Hの項目を含めたフォーマットやテンプレートを用意しておくことで、見やすく簡潔で抜け漏れのない議事録・報告書を作成できます。
目標設定
目標設定のポイントは「誰(Who)が何(What)をするのかがはっきりとわかる」「期日(When)や数字(How much/How many)を用いて具体化する」「進捗や状況・実績を管理できる」「達成できたか、できなかったかを客観的に評価できる」ことです。5W2Hには目標設定のポイントが網羅されています。
プレゼンテーションや新規事業の立案・企画書
5W2Hを活用することで、内容が具体的になり相手にも伝わりやすくなります。顧客へのプレゼンテーションや、新たな商品・サービスの開発、新規事業立案の際は、特に核となる2W1H「内容(What:何を)」「目的(Why:なぜ)」「手段(How:どうやって)」をしっかりと整理することで、資料の質も向上し採用される可能性が高まるでしょう。
ストーリー・構成は流れや論理展開がわかりやすい以下の順番がおすすめです。
- What(何を):この企画・提案はどういうものなのか(得られるメリット・デメリットなど)
- Why(なぜ):なぜ、この企画・提案が必要なのか(背景や仮説・将来予測など)
- How(どうやって):この企画・提案をどうやって実現するのか(具体的な手法など)
残りの要素は「手段(How:どうやって)」のなかに、実現・実行に必要な時間やスケジュール(When)、費用・コスト(How much/How many)、人(Who)、場所(Where)として追加しましょう。
マーケティング戦略の立案・市場調査
5W2Hはマーケティング戦略を立てる際も活用できます。4P(Product/Price/Place/Promotion)分析・4C(Customer value/Customer Cost/Convenience/Communication)分析やSTP分析・SWOT分析など、マーケティングフレームワークは多々ありますが、5W2Hには「目的(Why:なぜ・何のために)」と「ターゲット・ペルソナ・消費者(Who:誰のために・誰に向けて)」が含まれているため、他のマーケティングフレームワークよりも汎用性・網羅性が高く、より深い顧客ニーズの理解につながります。
マーケティング戦略から「目的(Why:なぜ)」と「ターゲット・ペルソナ・消費者(Who:誰に)」が抜けてしまうと、的外れなものに終わってしまうリスクが生じます。的を射た施策を立案できるよう、競合他社の戦略や施策とも比較しながら、ほかのマーケティングフレームワークと合わせて5W2Hを活用しましょう。
営業・商談時のヒアリング
良好な関係を築き提案に必要な情報を確認するためのヒアリング力は、営業職に求められる必須スキルといっても過言ではありません。5W2Hは「決裁権者・キーマンは誰か?(Who)」「何に悩んでいるのか、どのような商品・サービスを必要としているのか?(What)」「購入時期はいつか?(When)」「予算はいくらか?(How much)」など、ヒアリングすべき要素・項目の整理に活用できます。
ヒアリングが苦手という方は、あらかじめ5W2Hの項目を含めたヒアリングシートやテンプレートを用意しておくと良いでしょう。
まとめ
5W2Hを効果的に活用することは、「働きかけ力」「実行力」「課題発見力」「計画力」「想像力」「発信力」「傾聴力」「状況把握力」といった社会人基礎力の向上にもつながります。
「自分は伝えたと思ったことがうまく伝わっていなかった。」「考えをまとめるのが苦手。」「いろいろと考えはあるものの具体的な行動につながっていない。」「仕事や業務をスムーズに進めたい、効率を上げたい。」「難しいフレームワークや思考・発想法を学んだけど、うまく使いこなせていない。」という方は、ぜひ5W2Hの活用法・コツを覚え、繰り返し実践してみてください。
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