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これからの社会で求められる人材を育成するには

2022.04.14

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NBCPlusオンライン編集部

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INDEX

自立・自律し、自走できる人材の育成が急務

企業と個人の新たな関係から見る、今求められる人材戦略

慢性的な人手不足の状況を受け、人材獲得競争が激化しています。企業が持続可能な形で成長をしていくためには、付加価値を創出できる人材の確保と、そして企業側、人材の多様なあり方を活用する仕組みが重要なカギとなります。

「付加価値を創出できる人材」とは、急速に進む世の中の仕組みや価値観の変化に適応できる自律的に行動できる人材。未来を担い、社会で求められ続ける人材像を、人材育成の方向性とともに考察します。

企業に求められる役割は、社員の成長や学びを育む多様な機会の創出、公平な評価制度、企業の成長と個人の成長の方向性のすり合わせなど、企業が推進すべきミッションは多岐にわたります。

経済産業省・中小企業庁が人生100年時代をにらんで立ち上げた「人材力強化に向けた研究会」の中でも、企業と個人の関係性が変化する今、企業は「人材戦略」を「経営戦略」として位置づけ、人材との関わり方について具体的な対応が求められていると訴えています。

真に必要な人材とは?ポジティブな成長マインドセットに着目

では、企業が求める人材、これからの未来に必要性が高まる人材とは、具体的にはどのような人のことを指すのでしょうか。

これまでは、高いスキルと豊かな経験を持つ人が求められる傾向がありました。しかし、技術の飛躍的な進歩により、知識やスキルの「賞味期限」は短期化していると指摘されています。

だからこそ、時代に応じて自ら随時アップデートしていくことができる人材が求められるようになっているのです。

2006年に経済産業省が主催した有識者による委員会では、あらゆる環境下で能力を発揮できる基礎的な力として「社会人基礎力」を定義づけています。

「社会人基礎力」とは「前に踏み出す力(アクション)」、「考え抜く力(シンキング)」、「チームで働く力(チームワーク)」の3つの能力から成り立ちます。

つまり、中小企業が今後求める人材像を考える上では、スキルや経験といった側面よりも、ポジティブな成長マインドセットにこそ着目すべきです。

企業が対応すべき個々の働き方に対する意識の変化

マインドセットだけではありません。社会のあり方とともに「働き方」に対する意識も変化しています。生きるため、生活するために働くという意識が主流だった「Work for Life」という従来の考え方に対し、近年注目を集めているのが「Work as Life」という考え方です。

仕事での苦しさ、辛さとのバランスを取るために、仕事とプライベートをきっちりと切り分けてどちらも充実させようという「Work life balance」ではなく、ワークもライフも一つのつながりとして融合させ、人生全体を豊かにするという思考です。

「Work as life」を実現するための具体的な構成要素としては、専門性の追求や自律的キャリアの形成、仕事と家庭の両立、生産性の向上などが挙げられます。

ITやインフラの発展なども追い風となり、多様化し続ける働き方に柔軟に適応できる環境を整えることも、人材育成の一環となります。

近年の働き方や生き方の変化

004人材育成_01※別紙図版指示書
出典:産業人材制作室『「人生100年時代」を踏まえた「社会人基礎力」の見直しについて』 平成29年10月

人材育成の基本的な3つの手法

企業が優秀な人材を確保するためには、一人ひとりが成長していきたいと意欲を持てるよう、企業として投資をして制度や体制を整えることが不可欠です。

人材育成の代表として、企業の現場で最も多く取り入れている「OJT(On the Job Training)」、OJTに対してOFF-JTと呼ばれることもある現場を離れた場で知識やスキルを身につける「研修・セミナー」、個々のマインドを変えるように努める「自己啓発」の3つの手法が挙げられます。

これら3つの手法はそれぞれを独立させて考えるのではなく、相乗的に機能させることでより高い効果が発揮されます。では、企業が成長を期し、経営戦略達成に向けて求める人材を育てるために核となる3つの手法についてそれぞれのメリット・デメリットもあわせて詳しくご紹介します。

3つの人材育成手法の相互作用

004人材育成_02※別紙図版指示書

実際の仕事を通して学ぶOJT

人材育成のための代表的な手法といえば、仕事を通して学びを深める「OJT(On the Job Training)」です。上司や先輩から仕事を通して学び取る方法で、日本の企業では重要視されてきました。

“生きた知識”やノウハウなどを、仕事のなかで経験を積みながら習得できる点や、個々の能力に最適な内容や教え方で学びを促せられるといった点が主なメリットです。

また、教えられる側のみならず、教える側である上司や先輩にとっても、成長の機会になるという効果も期待できます。

一方で、教える側の上司や先輩の能力、教え方によって成長の幅に差が生じてしまいやすいというデメリットも。

実践的な知識や技能に重きが置かれ、仕事全体の流れや会社としての方向性など、広い視野を得にくいという懸念点もあります。

OJTを効果的に取り入れるための4ステップ

OJTは、主に4つのステップの繰り返しとして説明することができます。

  1. 計画=部下が特定の仕事を遂行するために必要な能力や知識・技術は何かを明確にし、育成計画を立てる
  2. 観察=仕事を細かく分解して、一つひとつの進捗管理をする
  3. 評価=①を発揮し続けるために日々の行動に対して適切に働きかける
  4. 約束=達成できなかった成果に対しては、振り返りを行い、再挑戦に向けて支援する

このサイクルは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)で表現される「PDCA」のフレームワークに当てはめることができます。

OJTで活用するPDCAのサイクル

004人材育成_03※別紙図版指示書
出典:松下直子「OJTで面白いほど自分で考えて動く部下が育つ本」 あさ出版

OJTの問題点

しかしながら、仕事の捉え方や産業構造が大きく変わり、テクノロジーが急激なスピードで進化する昨今。上司よりも部下の方が「ITスキルにおいては長けている」、「消費者や顧客心理に近く、実情を把握している」などといった逆転現象も少なからず生じています。

業務内容や業界の情報に対するアップデートが求められる中、これまでのように「上司が部下に教える」という一方的なOJTでは無理が生じます。

そのため、部下の良さを引き出すOJD (On the Job Development=職場内能力開発)への移行も見受けられます。

ただしOJT、OJDいずれにしても、その場に適した臨機応変な指導が必要であり、指導者となる上司の意欲や力量に効果が左右されたり、効果にばらつきが生じたりするという難しさは否めません。

また大前提として、指導者が業務に追われて忙しく、じっくりと指導にあたる余裕がないという課題も、なおざりにされがちです。

このように時代の変化やスピード感との不一致性を補い、さらに高い次元で人材育成の効果を高めるためには、外部の研修やセミナーを導入し、OJTと併用することも非常に有効的です。

外部研修・セミナーの活用

前述のOJTの補助的な意味合いとして、外部研修やセミナーを導入する企業も多く見られます。社歴や業務内容、役割などに応じて、特定の層に対して指導ができるため、効率的に人材育成が行えるというメリットが挙げられます。

また日常業務の中では習得できない理論や技法を体系的に学べる、特定の上下関係や部署の枠を超えて経験や情報の共有が図れるケースがあるなど、さまざまな利点が考えられるでしょう。

従来は受講者が集まる集合研修が一般的でしたが、昨今は通信教育やEラーニング、リモートなどスタイルの多様化が進んでいます。

外部研修・セミナーで得られる効果

外部のセミナーや研修を利用することで得られる代表的な効果としては、下記の4つが挙げられます。

  • 特定の層に共通して必要なことを一度に教えるため、効率的に人材開発ができる。
  • 入社や昇進など役割が変化した時に、意識的にリフレクションを行い、次の役割に向けた準備の機会となる。
  • 日常業務の中では習得できない理論や技法を体系的に学ぶことができ、多角的なものの見方を養うことができる。
  • 経験の共有や情報の交換ができ、同僚との人間関係が形成される。

このようにOJTでは得られない効果が得られ、不足している点を補うことができます。

政府などの補助金制度を活用する

外部の研修・セミナーのデメリットとしては、費用に関する懸念点が挙げられます。新人、若手・中堅、管理職など、各層に十分な研修・セミナーを実現しようと考えた時、企業によっては予算的に難しいケースもあるでしょう。

そうした不安に応えるため、人材育成を支援する法律や助成金制度が整備されています。各制度の趣旨や内容を把握し、最適な制度を活用することで、企業の負担を軽減することができます。下記に助成金制度の一部を紹介します。必要要件を満たすならぜひ活用してください。

  1. 人材開発助成金(厚生労働省):厚生労働省が行う助成金事業で、正社員への職業に関する訓練を行った際に発生した経費の一部を助成する制度。特定訓練コース、一般訓練コース、教育訓練休暇付与コース、特別育成訓練コースなどが設けれている。
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html

  2. キャリアアップ助成金(厚生労働省):派遣労働者やアルバイト・パートなど非正規労働者の処遇改善や正規労働者への転換などに関する取り組みについて助成。
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html

  3. その他、自治体ごと助成金・補助金
    ・社内型スキルアップ助成金・民間派遣型スキルアップ助成金(東京都 中小企業人材スキルアップ支援事業):都内の中小企業または中小企業の団体が実施する短時間の職業訓練に対し、助成金を支給。

    https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/jinzai/ikusei/kunren-josei/
    ・AI活用人材等育成支援補助金(京都府):AIを活用した生産性向上による社内改革に取り組む府内中小企業を支援する補助金
    https://www.pref.kyoto.jp/koyoshien/news/aikatuyouhojokin.html

ほかにも各自治体で様々な助成金制度を設けています。

外部研修・セミナーで得た学びを活かすために

外部の研修・セミナーで得た学びを有効に活用し、企業の発展へとつなげるためには、どのようなことに留意すべきなのでしょうか。

そこでヒントとなるのが「インストラクショナルデザイン(ID)」と呼ばれる科学手法です。「ID」は「学習理論(心理学)」、「コミュニケーション学」、「情報学」、「メディア技術」という科学的な考え方を基盤とした、研修の効果、効率、魅力を高める方法論です。

その方法は、分析、設計、開発、実装、評価、そして再分析と繰り返します。

IDによる研修効果を高める方法

004人材育成_04※別紙図版指示書

まず研修の必要性を考え「分析」することが重要になります。企業側の押し付けにならないよう、誰に、何の目的で、何を教えるのかをしっかり分析しましょう。その上で、どのような方法で行うのかという、研修の「設計」図を考え、設計図に基づいた研修内容を「開発」・作成し、実践つまり「実装」する。研修後は「評価」に基づいて「分析」をし、改善を図る。

このサイクルにより、研修の効力を最大限に反映することができます。

自己啓発

人材が育ち、成長するためには、本人が意思を持ってマインドを高める自己啓発も欠かせません。しかし厚生労働省の2016(平成28)年度「能力開発基本調査」によると、多くの人が「仕事が忙しい」という理由により、自己啓発の余裕がないと答えています。

そこで企業は、自己啓発を促す社内の風土を築くことが必要です。もともと学ぶ習慣のある人を多く採用することで、「自分もやろう」と周囲が刺激を受け、互いに高め合うということも手法の一つでしょう。また、影響力のある上司などのリーダーが率先して自己啓発に励む姿を見せ、促進することも有効です。

主体的に動くことができる人材育成を目指し、自己啓発を促す

人生100年時代といわれる社会を生き、求められる人材であり続けるためには、企業から与えられる役割やキャリアだけに甘んじることなく、常に自己研鑽を積み、志高く主体的に動くことができる人材であることが求められています。

企業としても、ビジョンを持って、自ら考え、行動に移すことができる人材に育てるために、社員に対して自己啓発を促す施策を講じる必要があります。

自己啓発で目標とするマインド

自己啓発を通して獲得を目指すのは、ものの見方や考え方の枠組みである「マインドセット」「主体性」「仕事観」です。AIの進化、デジタル化の普及などにより、ルーティン業務や定型業務は人の手を離れ、ルール通りにこなす業務は機械化などにより代替されていく可能性が高まっています。

今後、求められる人材像としては、考える力、課題を設定する力、やり切る力などを備えていることが挙げられます。この認知を社員にも広げ、企業としてはキャリア意識を醸成する機会を充実させていくことこそが、人材力強化につながるのです。

企業としていかに自己啓発を促すか

企業が個々人に自己啓発を促す方法としては、成長機会の提供や自律の支援などが挙げられます。また個々人に応じた最適なキャリア展開や育成施策を提供するためには、企業の成長(経営)の方向性と、個人の成長(キャリア)の方向性について、できる限り足並みを揃えることが重要でしょう。

そのために経営者やリーダーなど企業側の立場にある人は、従業員一人ひとりと密にコミュニケーションを取り、対話を重ねながら、意思の疎通を図ることが基盤となります。

そうしたすり合わせの上で、例えば出向やインターンシップ、外部の研修やセミナーへの参加を支援し、自己啓発を促すことにより、企業の成長にとってもメリットがある形で、効率的に理想の結果を生むことにつながるのです。

こうした社員の働く意欲・モチベーションを高めるための企業側の施策として、評価基準が明確な人事評価制度の導入なども並行して行う必要があります。

経営内容を公開し、利益をベースとした仕事観を社内に定着させるといったことも、意欲向上につながるでしょう。

あわせて、トップダウン型組織を複数の小集団組織へと転換し、小集団のリーダーには利益確保の責任と利益分配の権限を与えるなど、経営者感覚を持った人材を育成することが近道となります。

「人材育成」を経営戦略と捉え、効率的に推し進める

少子高齢化による数的な人材不足のみならず、社会の流れに対応できる未来型人材の不足など、今や人材確保は企業の将来を大きく左右する最重要課題とも言えるでしょう。

しかし、人材育成を進めるプロフェッショナルを自社内で育成し、全てを自社のみで完結させるためには、クオリティ的にも時間的にも非常にハードルが高い分野です。

個人が成長し、活躍できる企業であり続け、魅力的な企業として飛躍をするためには、採用や育成も含めた人材確保を経営戦略のひとつとして捉え、外部と連携しながら効率的に推し進めていきましょう。

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