先日、ある元経営者ご夫妻の『遺言書』作成に立ち会う機会がありました。
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遺言書と聞くと「うちには財産なんてないから関係ない。」と思われる方も多いかもしれません。
しかし、財産の多い少ないにかかわらず「遺した方の意思表示」がない場合、誰が何をもらうのかはご遺族自ら決定しなければなりません。
たとえば、ご遺族として3人のお子様がいるとします。
今まで兄弟姉妹3人で仲良くしてきたとしても、目の前に「財産」が出現すると、果たしてこれまでと同じ関係でいられるでしょうか?
目の前に現金が100万円あり、仲良く三等分できれば良いですが、3人の生活環境が同じとは限りませんし、ご両親の面倒を誰が見ていたのか?など関わり方の違いもあるでしょう。
実際の相続の現場は、本当に簡単にいきません。
各々の事情をぶつけあい、いつの間にか「相続」が「争族」に、そして「争続」に変わっていきます。
しかしながら、財産を遺した方はそのようなことを望まれていたのでしょうか?
誰しもがご遺族の幸せを願っているはずですが、残念ながら亡くなってしまってからではその想いを伝えることができません。
『遺言書』は、この“想い”をご遺族に伝えるためのものです。
単に財産を誰に遺すかではなく“想いそのもの”を遺すのが遺言書なのです。
実は、私の祖母も直筆の遺言書を遺していました。
(孫である私も複写したものをもらいました。)
いつ書かれたものなのかはわかりませんでしたが「兄弟は最後まで仲良く。」と締めくくられていました。
祖母は年金暮らしで財産はほとんどありませんでしたが、その“想い”が短い文章の中にたくさん込められていました。
冒頭の、私が遺言書作成に立ち会った方は元経営者だったため、一般の方とはまた少し状況が変わり、財産に「事業用財産(※)」が含まれます。
※会社の株式や不動産など会社を経営していくうえで必要となる資産
事業用財産をその会社の後継者以外の方が持ってしまえば、会社で絶対に必要な財産が売却されてしまうかもしれません。
そのようなことがあっては、会社を存続していくことができなくなってしまいます。
事業用財産を後継者に遺す際、ほかに(後継者ではない)兄弟姉妹がいる場合には、前経営者として、あるいは父親・母親として、なぜそのように財産を遺すことにしたのか、
遺言書にその想いを遺すことができます。
元経営者ご夫妻もしっかりとその“想い”を遺されていました。
短い文章でしたが、お二人の50年分の気持ちが込められたものです。拝見した時は心に大きく響くものがありました。
遺言書は公証役場に行けば、簡単に作成することができます。
何が起こるかわからない世の中ですから、大切な方たちに、ぜひその想いを遺していただければと思います。
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NBC税理士法人
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