2024年(令和6年)1月1日以降の贈与から、「生前贈与加算」が3年から7年に改正されました。
「贈与」という言葉はよく耳にする言葉ですが、「生前贈与加算」はあまり聞きなれない言葉かもしれません。
今回はその「生前贈与加算」について少しお話します。
目次
相続税法が「一税法二税目」と言われている理由
相続税法では『相続税』と『贈与税』の2種類の税目が扱われており、「一税法二税目」という他の税法にはない特徴を持っています。なぜ、このような特殊な形になったのでしょうか?
もともと相続税法ができたときは『相続税』しかありませんでした。しかし、亡くなる時まで財産を持っていると『相続税』がかかることから、「それなら先に財産を渡してしまおう」と今でいう贈与が頻繁に行われるようになりました。この時代はまだ『贈与税』がなかったため、無税で財産を渡すことができていたのです。
しかし、当然のことながらそんなことを国が放置するはずもなく、1947年(昭和22年)に『贈与税』が創設されました。
つまり、『贈与税』は『相続税』の回避を防止するために作られた税目であるため、『相続税』と同じ相続税法の中に取り入れられることとなりました。
『贈与税』は『相続税』を不当に免れないための“相続税のお手伝い”の役割を持ち「『贈与税』は『相続税』の【補完税】」と言われています。
「生前贈与加算」の規定が設けられた背景
「生前贈与加算」とは?相続人が被相続人(亡くなった方)から死亡前3年以内に受けた贈与については相続人の相続税課税価格に贈与額を加算する規定を指します。
なぜ、このような規定が設けられたのか――。答えは、上記でご説明した「相続税の補完」に関係してきます。
財産の所有者からの財産の移転については、財産の所有者が亡くなった日を境に、亡くなる前までは「贈与」、亡くなった日からは「相続」です。
生前贈与加算という規定が設けられた理由は、被相続人が死亡直前に駆け込みで贈与を行うことによる、『相続税』の負担回避を防止するためです。
※なお、3年以内の贈与により納付した贈与税額は、相続税額を限度として控除される規定がありますので、『贈与税』と『相続税』の二重課税という問題は起こりません。
(将来的に相続税がかかる場合に考慮する必要がある規定です。)
今回の改正は『贈与税』と『相続税』を一体化することが目的
冒頭の「2024年(令和6年)1月1日以降の贈与から、生前贈与加算が3年から7年に改正されました」というのは、生前贈与の対象期間が3年間から7年間に延びたということです。
国としては、財産を次世代に移すことによって消費を促したいということもあり、『贈与税』の基礎控除額(最低限贈与税がかからない金額)を増やすという議論も過去にはありました。
しかし、生前贈与加算を7年間にすることで、贈与を積極的に行っても『相続税』で精算されやすくなるため、『相続税』から派生した『贈与税』を『相続税』と一体化――すなわち、本来の形に戻していこうという目論見があるようです。
※『贈与税』の税率は『相続税』の税率より非常に高く設定されているため、『贈与税』で計算するよりも『相続税』で計算する方が税金自体は減少します。
『贈与税』がかからない基礎控除額(110万円)以下の贈与も7年以内のものであれば『相続税』の対象になることから、財産の移転を促す制度として機能するのか否かは疑わしいところです。
『相続税』と『贈与税』の関係はますますわかりにくいものとなり、贈与だけで有利不利の判定を行うことが難しい時代になってきました。
親族を想っての財産の移転となると、渡す方・受け取る方の意図を汲みたいもの、です。財産の移転で余計な税金を負担しないようにしたいものですね。
相続・贈与のご相談は、専門家にご相談いただければと思います。
相続関連記事
この記事の著者
NBC税理士法人
「縁のあったお客様は絶対に倒産させない。」という志のもと、税務面、経営の全般的なサポート業務を行っています。顧客訪問数1200社以上のノウハウをもとに、会計監査などの税務相談や、事業承継、新規開業、相続などさまざまなノウハウを配信しています。