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『令和5年度 税制改正大綱』から読み解く資産税改正

2023.01.24

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日常生活や経済活動における行動制限も落ち着きを見せたこの年末年始、数年ぶりに帰省された方も多かったのではないでしょうか。また帰省の折に、親御様と老後の生活や相続などについて話された方もいらっしゃったのではないかと思います。

2022年12月16日、2023年度の税制改正の内容を提示する
『令和5年度税制改正大綱』が発表されました。

今回はこの『令和5年度税制改正大綱』のうち、経営者の方からよくお問い合わせをいただく「資産税」に関連する改正点について解説します。

現時点ではあくまで大綱であり(例年ほぼこの通り改正されますが)、確定のものではないことをご了承の上、ご一読いただければと思います。
なお、相続対策(節税・遺言書など)や相続手続きにお悩みの方はNBC税理士法人にお気軽にご相談ください。

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目次

資産税改正

生前贈与加算制度の見直し(加算期間の延長)

相続税の計算における、法定相続人への生前贈与に関して3年分を振り戻し計算に組み入れるという仕組みがあります。
その暦年贈与により生前に贈与を受けていた財産について、相続時に加算される贈与期間が相続前3年間から相続前7年間に延長されます。

ただし、延長された4年間の贈与について総額100万円までは相続財産に加算しない措置が取られます。2027年以降の相続から随時延長され、2031年に7年間に達します。

これは納税者側に不利な改正であり、多くの経営者の方が相続対策として行ってきた生前贈与に関して最も関心の高い改正点といえます。

2024年1月以降の贈与に関して適用となりますので留意が必要です。

相続時精算課税制度について、毎年110万円の基礎控除を創設

相続時精算課税制度により行われた贈与について、課税価格から毎年110万円の基礎控除ができるようになります。相続時精算課税制度を選択後も、毎年110万円(基礎控除)以下の贈与については贈与税申告が不要となります。

また、相続税の計算において加算される金額も贈与財産の価額から過去の基礎控除額を控除した後の金額となります。

相続時精算課税制度を選択した場合、いわゆる暦年課税非課税枠は使えなかったものが配慮されることとなり、これは納税者側には有利な改正といえます。

相続時精算課税制度による贈与財産が災害により被害を受けた場合の再計算

昨今の自然災害等を考慮し、本来は贈与時の価額で相続時の振り戻し計算を行う精算課税制度による贈与後に、贈与財産である土地や建物が災害によって一定の被害を受けた場合には、相続税の計算において加算される金額は贈与財産の価額から災害を受けた金額を控除した金額とします。

これも納税者側には有利な改正といえます。

実務上のポイント

暦年贈与による生前贈与加算制度では相続時に加算される際には基礎控除額が控除されない一方、相続時精算課税制度による贈与では基礎控除額が控除されることになったため、相続前7年間の贈与は暦年贈与より相続時精算課税制度の方が有利になります。

つまり、基礎控除額を利用して相続税対策を行う場合には、相続時精算課税制度の選択が以前よりもしやすくなったといえるでしょう。

相続前7年間はいずれの制度を利用した贈与財産であっても相続財産への加算が必要となるため、相続時の預金調査が以前よりも重要となります。

また、相続時の暦年生前贈与の振り戻し計算は法定相続人に限られることから、法定相続人以外への生前贈与は、引き続き有効な相続対策となります。

おわりに

12月16日に発表された令和5年度の税制改正大綱のうち、「資産税」に関連する改正点について解説しました。なお資産税を含めた税制の概要は以下のとおりです。

個人所得課税

  • NISAの抜本的拡充・恒久化
  • スタートアップへの再投資に係る非課税措置の創設
  • エンジェル税制の拡充及び要件緩和
  • ストックオプション税制の拡充
  • 極めて高い水準の所得に対する負担の適正化
  • 空き家に係る譲渡所得の特例の見直し・延長
  • 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除見直し・延長

資産課税

  • 相続時精算課税制度の見直し(贈与税・相続税)
  • 相続税の計算上加算する生前贈与の期間延長
  • 教育資金の一括贈与の非課税措置の見直し(課税強化し3年延長)
  • 結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置の見直し(課税強化し2年延長)
  • 医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の特例措置の延長・緩和
  • 一部の相続人から更正の請求があった場合の他の相続人に係る除斥期間の見直し
  • 長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに係る固定資産税の減額措置

法人課税

  • 暗号資産の期末時価評価等の課税に係る見直し
  • オープンイノベーション促進税制の拡充及び要件の見直し  
  • 研究開発税制の見直し
  • デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制の見直し及び延長
  • スピンオフの実施の円滑化のための税制措置の拡充 
  • 株式交付制度における所得計算の特例の見直し
  • 中小企業者等に対する軽減税率の延長 
  • 【設備投資減税】中小企業向け設備投資促進税制の見直し及び延長
  • 【設備投資減税】先端設備等導入計画に基づく固定資産税減免制度の見直し
  • 地域未来投資促進税制の拡充・延長(所得税・法人税)
  • 特定資産の買換えに係る期限延長と一部見直し

国際課税

  • 外国子会社合算税制の見直し
  • 各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)の創設

消費課税

  • 適格請求書等保存方式(インボイス制度)に係る見直し
  • 適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置
  • 中小事業者の少額取引に係る事務負担の軽減措置
  • 返還インボイスの交付義務の見直し
  • 適格請求書発行事業者登録制度の見直し

納税環境整備等

  • 電子帳簿等保存制度の見直し
  • 高額な無申告に対する無申告加算税の割合の引上げ
  • 繰り返し行われる無申告行為に対する無申告加算税等の加重措置の整備
  • 個人事業者の各種届出書の簡素化
  • 源泉徴収票の提出方法等の見直し
  • 防衛費の財源確保のための税制措置

税制改正の度に「有効な節税策とは何か?」という議論になりますが、一つだけ変わらないことがあります。それは事前準備が肝要だという点です。

皆様が近視眼的な対策に翻弄されず、本質を見誤らない対策を講じていただけることを願っています。

相続対策(節税・遺言書など)や相続手続きに関するお悩みはNBC税理士法人にお気軽にご相談ください。

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この記事の著者

NBC税理士法人

「縁のあったお客様は絶対に倒産させない。」という志のもと、税務面、経営の全般的なサポート業務を行っています。顧客訪問数1200社以上のノウハウをもとに、会計監査などの税務相談や、事業承継、新規開業、相続などさまざまなノウハウを配信しています。