内閣府の『高齢社会白書』によれば、「世界で最も高い」とされている日本の高齢化率……。
団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり、事業承継の課題が一段と深刻になるといわれる「2025年問題」まで残り数年、高齢化による問題が、日本社会に重くのしかかっています。
東京商工リサーチの「全国社長の年齢」調査によれば、2022年の社長の平均年齢は、63.02歳でした。調査を開始した2009年以降で最高となっています。
加えて「休廃業・解散」の平均年齢は3年連続で70代。後継者難倒産は422件で前年比10.7%増といった調査結果もあります。
事業承継が進まない一因に、税金負担の問題がよく挙げられますが、厳しい時代背景を受け、税制も改正が重ねられ、少しずつ活用しやすくなってきています。
今回は、事業承継時の税金負担を猶予、もしくは免除する『特例事業承継税制』について解説します。
目次
この制度は
- 中小企業の先代経営者が所有する自社株式を令和9年12月31日までに後継者に一括贈与(もしくは相続)した場合に、その贈与税(もしくは相続税)の納付を全額猶予する。
- 一定の要件を満たせば納付猶予されていた税額が全額免除される。
というものです。
事業承継時によく問題になるのがこの自社株式です。
「換金価値はないものの、いざ株価を算定してみるとかなりの金額になっていて、会社を次世代に承継しようにも多額の税金が発生するため、なかなか事業承継が進まない……」
といったケースがよくあります。
そこで、『特例事業承継税制』を活用することをオススメします。特例措置導入以前は年間400件程度に過ぎなかった申請件数も、ここ数年で年間約3,000件~4,000件と10倍にもなっています。
特例事業承継税制の適用を受けるには、事前に「特例承継計画」を作成し、令和5年3月31日までに都道府県へ提出しておく必要がありました。しかし、令和4年度の税制改正により、「令和6年3月31日」までと、提出期限が1年延長されました。
国としては、この機会に中小企業の事業承継を推し進めたいということでしょう。
「特例承継計画」の提出期限は延長されましたが、
「令和9年12月31日までに自社株式を一括贈与(もしくは相続)する期限については、今後とも延長を行わない」
と明記されていますので、令和10年以降は、通常の事業承継税制しか使えなくなります。
通常の事業承継税制は、全額納付猶予とはならず、さらに雇用確保要件も厳しく、特例事業承継税制よりも圧倒的に使い勝手が悪いものです。
特例事業承継税制では、仮に「特例承継計画」を期限内に提出した後に計画通りに事業承継が進まず、令和9年12月31日までに贈与が行われなかったとしても、今のところ特に罰則等はありません。
つまり、現時点で具体的な承継計画がなかったとしても、自分の代で会社を終わらせる予定がない社長や、今後5、6年の間に事業承継を考えている会社は「とりあえず」特例承継計画を出しておくことも選択肢の一つなのです。
このように、多くのメリットがある『特例事業承継税制』ですが、活用するにあたっては注意点もいくつかあります。
NBC税理士法人では、本税制についての具体的な内容の説明、またお悩み・ご相談も承っております。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。
活用すべきかどうか、一緒に検討しましょう。
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この記事の著者
NBC税理士法人
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