俺のフレンチ、俺のイタリアン、俺のやきとり、俺の割烹……。
私もよく利用させていただいております『俺の』シリーズの店舗ですが、
業界の“あたりまえ”を壊して、新たなスタンダードを作り出しているこの会社の強みはどこにあるのか?
年末にある書籍を読むことがあり、大変感銘を受けましたので紹介させていただきます。
目次
『俺の~』ブランドの競争優位性“安く売っても儲かる!
『俺の~』ブランドが優位性として打ち出すのは、
一流の料理人がつくる一流の料理(かつてないおいしさ)を、
他社では真似できない価格で提供すること。
それにより、お客様に驚くほどに
「おいしい!」「安い!」と感じていただくこと。
つまり、安く売っても儲かる(コスト優位性)
企業づくりを実現することにあります。
★フード原価率88%でも赤字にならない!?★
店が4回転すれば、フード原価率を80%にしてもチャラになる!~
「席数(形式)×回転数×客単価」⇔「経常利益」
『俺のイタリアン』では580円が最多価格帯です。
商品の価格構成の中で一番多く打ち出している価格帯にどれだけの価値を感じていただくか、それが企業戦略そのものになっています。
現場の料理人に戦略を理解・浸透させる!
肝心なことは回転数であり、原価については
「驚かれる食材をふんだんに使用して原価率を高め、そのボリュームを見せることが一番大切だ」
という『俺の~』ブランドの戦略。
当初、限られた原価の中に“収める”を常としてきた料理人たちにとって、この考え方は半信半疑でした。
緻密なシミュレーションに基づくとはいえ、可能な限り全て材料費につぎ込んでいくことは、企業側に相応の資金余裕がなければ難しいことですが、この取り組みは、現場の料理人に
「これまで原価率・味・労働時間など、妥協しなくてはならないことがままあった。だからこそ『俺の~』ブランドでは、妥協のない本物を提供しよう!」
という戦略に沿った共通認識・心意気をも醸成することにつながりました。
繁盛店ゆえの課題は「組織力」で解決
同じ面積の一般的な店舗の座席数と比較すると、『俺の~』ブランドの店舗は倍に相当する約50席。
お客様からのオーダーが集中し、かつその収容力で3回転以上するわけですから、材料が底をつき料理がどんどん売り切れてしまいます。
対策として仕入れを増やそうとしても、店内は16坪、厨房はわずか3坪となると材料の置き場所が確保できません。
「組織力(ケイパビリティ)」で課題解決★
仕込み時間の前倒し昼12時スタート⇒朝9時~開店時間の午後4時までみっちり!
たった3坪の厨房だからこそ、調理機器の置き場所など動線を工夫!
強いられた成長の中で、全員が知恵を絞り、狭い厨房を「使いやすい厨房」に変えていきました。
店は劇場、裁量権を持った料理人はアーティスト
店は料理でお客様を感動させる「劇場」であり、料理人はその劇場の「アーティスト」。
劇場での感動づくりのためには、開店前には準備を終えている必要があり、今日が終わっても明日のステージに備える必要もあります。
『俺の~』ブランドのアーティストたる料理人は、経営における重要な一員として裁量権を有しています(チーミング)。
例えば、良い料理人というのはおいしい料理をつくるだけでなく、信用のある業者との付き合いがあって、きちんとした良い材料を仕入れる価格交渉力を持っています。
料理人に裁量権を与えることで、自立した組織づくり、良いものをより安く提供できる「劇場」づくりが叶うのです。
まとめ
現場の料理人に裁量権を与えて、知恵を引き出し課題解決をしていくこの仕組みこそが、
他社がマネできない組織力(ケイパビリティ)となり、一流の料理を他社よりも圧倒的に安い価格で提供できるという競争優位性を築くことにつながっています。
- 計数での緻密なシミュレーションと大胆な経営判断
- 会社方針の浸透度の高さ(価値観の統一)
- 課題を学習・解決できる組織力(自立した組織風土
まさに我々が目指している『各人が自立した組織』の上に
今のサービスが成り立っているのだとわかりました。
■参考図書
『俺のイタリアン、俺のフレンチぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方』
坂本孝著商業界
http://amzn.to/2FGC0vX
本書を読み、さらに『俺の~』ブランドが好きになりました。
皆さんもぜひ読んでみてください。
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この記事の著者
NBCコンサルタンツ株式会社
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