事業承継～「無形資産・人財」の承継

事業承継と聞くと、「社長交代」「自社株を後継者へ引き継ぐ」などと捉えがちですが、実際はそれだけではありません。

確かにこれらも承継手続き上、形式的には重要なことではありますが、これらと同等、あるいはそれ以上に大事なこと――、それが「無形財産・人財」の承継です。

以前、あるご支援先の社長が
【定年退職するその会社の拠点責任者】について次のように話されていました。

「彼らが羨ましい。定年になったら退職できるから。次を育てなくても定年という特権を持っている。彼らは定年で退職していくが、私はこの歳になってもまだ社長。社長は大変だとつくづく感じております。さあ、私も最後の仕上げ（事業承継）に向けて頑張ります。」

中小企業のオーナー社長に定年はありません。しかし幹部・管理者は、その時が来たら卒業「できる」のです。たとえまだ離れてはならない局面、会社の状況であったとしても……。

現在、１１・１２月に講師をさせていただく予定の事業承継をテーマとした経営セミナーのテキストを作成しているのですが、最新のデータを収集している中で、社長交代の年齢の高さに驚き、改めて事業承継問題の深刻さを感じています。

後継者がいないので、黒字でも廃業する、Ｍ＆Ａで会社を売りたい、（というより、社員への責任があるので、次の社長が来てほしい。）

後継者自身が自分で目覚め、発奮し、努力することが理想ですが、そううまく行かないのも現実です。

では、どうするか？「育てる」のです。「育てる」というより「育つ環境をつくる」と言った方が正しいような気がします。

私は現在、ＮＢＣグループに入社して３６年目になります。（綾小路きみまろさんの）「あれから３０年。」ではないですが、２０～３０年というモノサシでさまざまな会社を見てきた中で「社長交代によってさらに成長している会社と、そうでない会社には【ある決定的な違い】がある。」とつくづく感じています。

それは【組織力】です。

さらに成長している会社は、一人のスーパー社長がいなくても、組織力でそれをカバーし、それ以上のパフォーマンスを上げています。

現在は「人」がさらにクローズアップされ、場合によっては、利益以上の最優先事項です。

弊社の経営セミナーにもご登壇いただいた、『日本でいちばん大切にしたい会社シリーズ』で有名な坂本光司先生は、
「いまや社員を大切にできない会社は生き残れない。」とおっしゃいます。　

では、【社員を大切に】とはどのようなことなのでしょうか？
「決して社員に楽をさせることではありません。公務員並みの給与を払うために鍛えなさい。社長自身がもっと目一杯経営の努力をしなさい。」
と、坂本先生のお話から私は読み解いています。

例えば、社員の給与を「年齢×１０，０００円×１５ヶ月」と設定する。実現してなければそれを目指すこと。

読者の方には、もう超えている方がいるかと思いますが、自社の社員全員となるとなかなか厳しいものもあると思います。本人が希望しており、社長もそうしてあげたい、ところがそこまで到達してない……といった場合、これを解決するのが経営者のブレーンです。

専務・常務・支社長・所長・部長・課長……なのです。

専務には次の専務を、
常務には次の常務を、
支社長には次の支社長を、
所長には次の所長を、
部長には次の部長を、
課長には次の課長を、

あなたが現役のうちに、育つ環境をつくり、その役を担えるそれぞれの後輩を育てあげましょう。そのことが、創業者やすでに卒業された先輩に報いることにつながり、「無形財産・人財」の承継となると信じております。

今年も残すところあと２ヶ月。２０２３年のスタートは、新たな目標を持ってのぞみたいですね。事業承継に備えることは、まさに未来に向けた目標設定そのものです。

ぜひ、セミナーにもお越しいただき、その目標設定の指針を得ていただければと思っています。