あまり気持ちのいい話ではありませんが、経営者の皆様に大切な情報・備えとして
「もし社長が認知症になったり、脳梗塞等で倒れたりして経営判断をする能力がなくなったら」
という事態を想定して、司法書士の観点からお話しいたします。
目次
■何も準備していなかったら・・・
もし軽度の認知症であれば、社長は自力で経営することができるかもしれませんが、重度の認知症の場合は、それも難しいでしょう。
その時の社長の判断能力に応じて異なりますが、一般的には、成年後見人等を裁判所で選任してもらうことになります。
成年後見人には、家族がなることもありますが、弁護士や司法書士がなることも珍しくありません。
成年後見人がつくことの影響
では、成年後見人がつくことで、経営にどういった影響があるのでしょうか?
現行の会社法(会社法第331条1項2号)では、成年後見人や保佐人がつくと取締役の欠格事由になり、社長(代表取締役)はおろか平取締役にもなれなくなります。
上場企業やそれに類する企業の場合
上場企業やそれに類する企業であれば、株主総会や取締役会を開いて社長に退任してもらい、別の役員を社長にすることができます。
オーナー企業で社長が過半数の株を持っている場合
しかし、オーナー企業で社長自身が自社株の過半数を持っている場合、法律に従うと株主総会が開けなくなり、後任者を選べなくなってしまうことがあります。
(社長自身が100%株を持っていると確実にそうなります)
社長自身が100%株を持っている一人株主でその社長が何らかの理由で認知症になってしまい「判断能力が乏しい」ということで成年後見人がついた場合、通常、取締役会がある会社であれば、任期満了まで別の取締役を社長とすることができますが、株主が2人以下ではそれができません。
(2人の場合は、可否同数だと否決となる可能性が生じ、1人の場合は、認知症である社長自身の判断が必要となるため)
そのため、NBC司法書士事務所では、取締役会を設置していない会社であれば、社長を株主総会で選定することを推奨しています。
取締役の決定書で行うと、役員改選の度に定款を添付しなければならず、登記費用も多少高くなってしまうからです。
一人株主の会社は要注意
しかし、一人株主の場合、その株主総会が開けなくなってしまいます。成年後見人に弁護士や司法書士がなったとしても、法に従うだけで会社運営などできません。そうなると事業自体がまわらなくなります。
認知症になる前に事業承継対策が必要
そうなる前に、やはり事前の事業承継対策が重要になってくるのです。後継者がいるのであれば、少しずつ株を後継者に移していき、株主総会を開けるようにする。
後継者がいてもまだ修行中だったり暴走する恐れがあれば、
以前紹介した民事信託(家族信託)の利用も考えられます。
あるいは、M&Aや信頼できる従業員に継いでもらうという選択肢も望ましいのかもしれません。
個人の遺言や相続に関する本はよく見かけますが、事業者向けの内容はなかなか書かれておらず、あってもかなりあっさりしています。
全体数が少ないことや、事業承継対策は専門用語が多くわかりづらいところがあるからだと私は見ていますが、今回のお話のように、事業者こそしっかりとした準備と対策が必要です。
NBC司法書士事務所では、皆様の会社それぞれにどの方法が望ましいのかを二人三脚で寄り添いながらアドバイスさせていただいています。
「うちの会社なら、どうするのが最適だろうか?」
「すぐには必要ないとは思うが、何かすべきだろうか?」など、
気になった方は、どのようなことでもお気軽にご相談ください。
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この記事の著者
NBC司法書士事務所
西東京市で相続と会社設立で実績のある司法書士です。相続と会社設立以外でも、ワンルームマンションを使った資産運用の提案、遺言・葬儀生前予約信託、保険を活用した相続トラブルの予防など、お金と法律に関することなら、何でも対応可能です。