企業を大きく成長させるためには、社員を含めた従業員の存在が欠かせません。そして、従業員・社員とひとくちに言っても、一般社員や主任、課長、部長などさまざまな役職が存在することが一般的です。
さらにその中でも、部長クラス以上は社内で一定の決定権をもつ幹部社員・管理職であることも多く、従業員や取引の数が多くなる中小企業からは設置の重要性が高まります。しかし、役職が多いことからそれぞれどのような役割を果たすのか分からない企業経営者も多いでしょう。
そこで今回は、幹部社員の概要や社員・役員の定義、さらに部長と課長の役職の違いと特徴を詳しく解説します。最後に、幹部社員を育成するために読ませたい名著も紹介しているため、企業経営者の人はぜひ参考にしてください。
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目次
1.幹部社員とは?
幹部社員とは、社内で一定の決定権・執行権をもつ社員や役員を指します。主に、企業で行っている事業全体を把握し、成果をあげるためには何をすればよいかを考えながら、経営者やほかの幹部社員とともに意思決定を行ったり、経営者の決定をサポートしたりすることが役割です。
幹部社員は「経営幹部」とも呼ばれ、中小企業においては部長クラス以上が経営幹部として含まれる傾向にあります。また、役員クラスは厳密に言うと社員ではないため、幹部社員は部長や本部長・事業部長を指すとも考えられます。ただし、企業によってこのあたりの考え方は細かに異なることも覚えておきましょう。
では、社員と役員は厳密にどのような違いがあるのでしょうか。ここからは、社員と役員の定義をそれぞれ詳しく説明します。
1-1.社員の定義
社員とは、一般的に「企業に雇用された正規労働者」のことです。さまざまな雇用形態で働く従業員を指す総称で、正社員・契約社員は基本的に社員とみなされます。
しかし、厳密に「社員」は法律用語ではないため、企業によってはパート・アルバイトで働く人も社員として含む企業も存在します。パート・アルバイトは社員とみなさない企業の場合、正社員・契約社員などの正規雇用者を「社員」、正規雇用者に加えてパート・アルバイトなどの非正規雇用者をまとめて「従業員」と呼ぶことがほとんどです。
1-2.役員の定義
役員とは、一般的に「企業の中心的な役割をもち、責任をもって組織を動かしたり、管理・監督を行ったりする人材」のことです。役員の定義は、会社法第329条において「取締役、会計参与および監査役」となっています。また、会社法第423条では「“役員等”は取締役、会計参与および監査役に加え、執行役・会計監査人も含まれる」とされています。
役員は、厳密に言うと社員ではなく、「会社の機関」とされることも特徴です。会社の機関とは、企業や経営層・経営トップ層の意思決定をしたり、意思を代表したりする人材・組織のことで、株主総会なども会社の機関にあたります。正規雇用者でも非正規雇用者でもないため、企業から得られる報酬は「給料」ではなく「役員報酬」となります。
2.幹部社員の要となるのは「部長」
幹部社員とひとくちに言ってもさまざまな役職やクラスが存在しますが、その中でも特に要となる役職が「部長」です。部長とは、特定の部署・部門において経営者視点をもって働く役職であり、現場で従業員を指揮したり、責任者として意思決定や方針を現場に落としたりすることが主な役割となっています。
新規事業の立ち上げや事業改革において、人材を含む経営資源や限られた予算をバランスよくコントロールし、長期的な視野をもって意思決定を行う部長は、企業の成長に欠かせない人材と言えるでしょう。
また、部長とよく似た役職として「課長」が挙げられます。次に、部長と課長の違いを紹介します。
2-1.部長と課長の違いとは?
前述の通り、部長は「特定の部署・部門の責任者として、最終的な意思決定を担う人材」のことです。対して、課長は「現場の責任者として、戦略の実現に向けて具体的に何をすればよいかを検討し、現場の社員に直接働きかける人材」を指します。
部長と課長の大きな違いは、その視点です。部長は経営視点でマネジメントを行うことに対し、課長は現場視点でのミドルマネジメントを行います。課長は部下となる社員・従業員と最も近い位置にいて、部長は社員・従業員と直接的に関わる機会が少ないことが特徴です。
そのため、企業によっては部長を「経営幹部」として含めても、課長は経営幹部に含まないケースも多々あります。しかし役員会においては、部長・課長のいずれも出席することはほとんどないと言えるでしょう。
2-2.役員になれる部長の特徴は?
部長は幹部社員・経営幹部にあたるケースが多いものの、役員ではありません。しかし、会社の中での役割や働き方によっては、「役員候補」として期待されるケースも多々あります。
単純に日々の業務を完璧にこなすだけでなく、さらなるマネジメントスキルや管理能力を着実に身につけてしっかりと成果を残すことができれば、部長から役員への昇格も決して珍しくありません。では、役員になれる部長はどのような特徴をもっているのでしょうか。
経営者から役員からよい評価を得られる部長は、現場での視点を超え、より俯瞰的な視点から物事を見れる人・常に向上心に満ち溢れている人であることが特徴です。部下の意見と経営者や役員の経営方針を把握したうえで、どちらか一方に偏った決定を行うのではなく、上手に橋渡しのできる部長はさらに上のクラスへと昇りつめるにふさわしい人材と言えるでしょう。加えて、常に向上心をもって仕事に臨む姿勢は、経営者からも評価されます。
部長クラスの人材を役員として活躍できる人材に伸ばしたいという経営者は、このような特徴をもつ人材を評価するという体制をしっかり整えたうえで、幹部社員の「昇格に対するモチベーションの維持・向上」を妨げないようにすることもポイントです。
3.幹部社員を育成するためにぜひ読ませたい名著
幹部社員が成長するためには、ロールモデルの存在も不可欠です。理想とする人物を見つけることは、視野が大きく広がったり、仕事に対する姿勢をよりよいものに変えたりしていく要因にもなるでしょう。また、読書をすることで洞察力が向上したり、読解力が身についたりする点もメリットです。
多くの経営者や役員、経営幹部の人は、ビジネス書を読んで、得た知識を日々の仕事に活かすことも少なくありません。幹部社員を育成するためには、日々の仕事に活かせる知識を学ばせるためにも、本を読ませるとよいでしょう。
ここからは、幹部社員を育成するためにぜひ読ませたい名著3選を紹介します。
3-1.ビジョナリー・カンパニー
『ビジョナリー・カンパニー』とは、アメリカのビジネスコンサルタントであるジェームズ・C・コリンズ氏と、アメリカの組織理論家であるジェリー・ポラス氏によって書かれたビジネス書です。1994年に出版されて以降、全米で5年連続ベストセラーという功績をたたえ、現在でも世界中で愛される本となっています。
『ビジョナリー・カンパニー』では、世界中で支持を受けるような永続する会社には、どのような特徴があるのか、なぜ時代の変化を乗り越えて優れた業績を残してきたのかといった内容を学ぶことができ、幹部社員が読むに適した一冊と言えるでしょう。
3-2.孫子の兵法
『孫子の兵法』とは、日本の中国文学者である守屋洋氏によって出版された書籍です。紀元前500年ごろに中国の思想家である「孫武」によって書かれたとされている兵法書が、原文とともにあらゆるエピソードに当てはめて分かりやすく解説されています。
『孫子の兵法』に書かれた孫子の言葉は、企業や組織のあり方、経営者や役員としての心構えのほか、日頃の生き方など現代社会を勝ち抜くために役立つ知識を学ぶことができます。
3-3.資本論
『資本論』とは、ドイツの社会主義者であるカール・マルクス氏によって書かれた経済学書です。「商品」「貨幣」「労働力」を深掘りしながら、「資本主義は世界経済を崩壊に導くシステムである」ということを経済学者の視点で伝えた内容となっています。
日頃の仕事に直接活かせるわけではないものの、現代社会の分析や資本主義・社会主義についてより詳しい知識を得ることができ、今後の社会問題や経済の価値について学べる一冊と言えるでしょう。
これらの本は、役員候補の幹部社員だけでなく、幹部候補者である一般社員にもおすすめとなっています。また、本を読ませるだけでなく一般職向け・経営幹部向けなど階層別研修を行ったり、適切な人事評価システムを整えたりして、キャリア形成に必要となるビジネススキルを身につけさせましょう。
まとめ
幹部社員とは、社内で一定の決定権・執行権をもつ社員や役員のことです。経営幹部とも呼ばれ、部長や主任、役員がこれにあたるものの、役員となると厳密には「社員」ではなくなることも覚えておきましょう。
また、部長はその役割や働き方によって、役員に昇格できるチャンスも十分にあります。企業の成長において役員の存在は欠かせないため、経営者は部長クラスが適切な経験・スキルを得たうえでしっかりと役員に昇格できるよう、評価制度や環境を整えることも大切です。ここまでの内容を参考に、企業をさらに大きく成長させるためにも、ぜひ幹部社員の設置・育成を行ってみてはいかがでしょうか。
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