危機は「危険(ピンチ)」でもありますが、変革の「機会(チャンス)」にもなりえます。
新型コロナ危機の先行きが見えない中、企業は生き残りをかけて一生懸命です。
ただし、外的環境に対応すべく、内的環境をつくり変えるために一生懸命なのであればよいのですが、
今までと変わらないやり方を一生懸命続けるだけであれば、企業はこの危機で淘汰されてしまいます。
今こそ、外的環境を鋭敏に察知し、今までの常識を覆し、自社の内的環境をつくり変えることが求められます。
今までの常識のままでは、
- 自社の業界は変わらないのが当たり前。
- 自社の業種は変わらないのが当たり前。
- 自社の商品・サービスは変わらないのが当たり前。
今回は、今までの常識を覆し、市場消滅という大きな危機を乗り越えたある企業をご紹介します。
目次
コロナの救世主になるかもしれないアビガンとは?
ニュースなどでご存じかもしれませんが、
この新型コロナ危機の救世主になるかもしれない特効薬として
治験が始まったのが、富山化学の『アビガン』です。
『アビガン』とは……
他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分な新型、又は再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、本剤を当該インフルエンザウイルスへの対策に使用すると国が判断した場合にのみ、患者への投与が検討される医薬品。
出所:『アビガン錠に関する情報(2019年4月更新)』
富士フイルム富山化学株式会社ホームページより
このような画期的な薬を日本の企業が研究開発していたことに驚いた方も多いと思いますが、なんとこの企業は富士フイルムの完全子会社です。
「フィルム会社が薬を?」と思うかもしれませんが、この富士フイルムこそ、過去、市場消滅という危機を乗り越えて生まれ変わり、今回、新型コロナ危機の救世主になろうとしているのです。
今までの常識を捨て、見事に危機をチャンスに変えたこの企業から学んでみましょう。
富士フイルムの概要
今の時代、昔ながらのネガフィルムを買う一般消費者は極端に少なくなりました。富士フイルムの看板商品だった『写ルンです』の再ブレイクは記憶に新しいですが、デジカメの登場で、一時その市場は消滅しかけました。
それにともない、写真フィルム市場にこだわった米国のコダックが破産する一方で、市場衰退の前兆をつかんで市場撤退を決め、新事業立ち上げに全力で取り組んだ富士フイルムは危機を乗り越えました。
2000年代以降主力の写真フィルム事業の衰退
富士フイルムの写真フィルム事業は、2000年には全社売上の6割、利益の3分の2を稼ぐ主力事業でした。
しかし、写真フィルム市場は2003年以降、年に20~30%も縮小していき「数年で市場の95%が消滅する」という衝撃の調査結果も報告されました。
出所:『【企業特集】富士フイルムホールディングス写真フィルム軸に業態転換新事業を生んだ“技術の棚卸し”(2013年1月18日)』
株式会社ダイヤモンド社『ダイヤモンド・オンライン』
自社の強みを新規事業に
残された時間はありません。この危機をチャンスにするため、富士フイルムは「自社の強みは何か?」を考え始めました。
実は、世界でカラーフィルムを作ることができるのは、数社だけでした。微細粒子を扱うナノテクノロジーなどの高度な技術が必須だったからです。
そこで、自社が持つ10数個のコア技術を洗い出し、これらを組み合わせて新規事業を立ち上げることにしました。
アンチエイジング化粧品『アスタリフト』もその一つです。写真フィルムを作るために必要なコラーゲンは、肌の張りを保つために必須です。
写真の色あせを防ぐ抗酸化技術は、肌の老化防止に役立ちます。ナノテクノロジーで、成分を肌になじませることができます。『アスタリフト』はこの3つのコア技術を活かして生まれたものです。
そのほかにも、医療機器や『アビガン』を作り出した製薬・サプリメントなど写真フィルムとはかけ離れた市場で勝負し成長している企業が、富士フイルムなのです。
まとめ
このように、突発的な危機においてもリーダーシップを発揮し、
強みを組み替え、果敢に挑戦し、危機をチャンスに変えて成長した企業が、日本には多くあります。変わることを怖れなければ、日本企業はこの危機で大きく変化できます。
危機をチャンスに変える発想が、今こそリーダーに求められています。
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NBCコンサルタンツ株式会社
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