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新卒社員の「3年後定着率」から考える『選ばれる企業』とは

2022.05.10

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ここ数年、経営者様から

「『いい人』が全く採用できない。どうしたものか。」

という相談を持ち掛けられることが非常に増えています。その『いい人』の定義はおおむね、

  • 20~40代前半くらいの男性
  • 前職での経験もあり即戦力

といったところが多いようです。

生産年齢人口(15~64歳)は1995年の8,716万人をピークに、現在は7,500万人前後にまで減少しています。

つまり、母数が大きく減少している中での採用競争となり、『いい人』から選ばれる企業でなければ、採用することはかなり厳しくなっていることは明白です。

また、この2年はコロナ禍もあり人材の流動性がいくつかの業種に偏っている可能性も高いでしょう。

そこで今回は、『いい人』から選ばれる企業について考えてみたいと思います。

目次

新卒社員の定着率100%企業の事例

選ばれる企業かどうか、そのバロメーターの1つが「新卒社員」の採用と定着です。

一般的に、新卒社員は入社3年までに3割は退職すると言われていますが、新卒社員の定着率が非常に高い企業も存在しています。それらの企業の傾向や特徴を見ていきたいと思います。

2022年4月に発売された東洋経済新報社『CSR企業白書 2022年版』の「新卒社員の3年後定着率」最新データ(1,631社)を見ると、定着率100%の企業が98社あります。その中からいくつかの企業の例を紹介します。

出所:『CSR企業白書 2022年版』東洋経済新報社
   https://amzn.to/3yr8bgM

【ツムラ(医療用漢方薬等)】

入社3年目までの社員を対象に、推奨資格取得のための受験料・教材費を会社が負担する「ベーススキル習得支援制度」、語学学習費用の一部を支給する「語学支援制度」を導入するなど、人材育成に力を入れています。

また、フレックスタイム制度や勤務間インターバル制度の導入を進めており、年間総労働時間も1,816時間、月平均残業時間は12.7時間と極めて短いです。

つまり人材育成への手厚い支援とワークライフバランスの充実が新卒社員の定着につながっています。

【三井不動産(総合不動産)】

海外MBA取得のための派遣留学制度や、大学院等への修学・資格取得などに利用可能な休職制度を設けています。

実際に、社員1人当たりの年間教育研修費用は19万3,000円とトップクラスで、人材育成に取り組む姿勢は数値にも表れています。

【メタウォーター(上下水処理設備の施工管理等)】

コアタイムなしのフレックスタイム制度や、週休3日制度(毎月の所定労働時間を週4日間働くことで満たす)を導入するなど、柔軟な働き方の拡充を進めています。

【ブラザー工業(プリンター・ミシン等の機械製造)】

若手社員を海外グループ会社へ派遣して研修を行うトレーニー制度を導入するほか、育児や介護との両立などについては定期的な社内情報交換会等を開催しています。

【SCREENホールディングス(半導体・液晶製造装置等製造)】

一斉退社日や勤務間インターバル制度を導入し、2023年3月期までに年間総労働時間を1,800時間に削減する、という数値目標に取り組んでいます。

【トヨタ自動車(自動車製造)】

「トヨタ生産方式」を応用した業務の効率化に取り組んでおり、休暇に関しては2020年度の有給休暇取得率は87.9%と高水準です。

また社会貢献活動にも積極的で、ポイント制度を組み合わせたボランティア活動「恩返し活動」などを実施しています。

事例からわかる『選ばれる企業』とは

社会経験の少ない新卒社員にとって、入社後の待遇面・福利厚生面での充実は勿論のこと、育成制度の充実も、定着率を左右する大きなポイントと言えます。

また制度面の充実度合いとともに、充実させようという企業(=経営者)の姿勢が、新卒社員だけでなく若手・中堅社員の定着率に大きく影響していると言えるのではないでしょうか。

当たり前ですが、企業はお客様から選ばれる存在でなければ、永続することはできません。同様に、社員や応募者・転職希望者などからも選ばれる、魅力ある存在でなければ永続することはできません。

しかし
「これらは大企業だからできることで、我々中小企業ではできないことばかりだ。」との声も聞こえてきそうです。

確かに、これら大企業で導入している各種制度と同じ制度を今すぐ自社で導入することは極めて困難だと思います。

ただ、今できることだけでも導入に向けて動いていく、もしくは数年後の導入などに向けて社内の意思統一やビジョンの共有を行う、などは今すぐにでもできるのではないでしょうか。

また、福利厚生など制度の充実は難しくても、育成制度などは企業(=経営者)の考え方を示せるのではないでしょうか。

育てようと本気で思っているかどうか、そのための制度を確立しているか(確立しようとしているか)が見られている、と言っても過言ではありません。

弊社の創業者がいつも言っていました。
「人の育成というのは、流れる川に文字を書くように虚しいものだ。
 書いては流され、書いては流され、その繰り返し。
 しかし岸壁に文字を刻むようにやり続けなければ人は育たない。」と。

ぜひ、皆様の企業が『いい人』から「選ばれる企業」となれますように。

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この記事の著者

NBCコンサルタンツ株式会社

NBCコンサルタンツ株式会社は1986年の創業以来、会計事務所を母体とする日本最大級のコンサルティングファームとして数多くの企業を支援しております。4,290社の豊富な指導実績を持つプロの経営コンサルタント集団が、事業承継、業績改善、人材育成、人事評価制度など各分野でのノウハウをお届けします。