企業の目的は「永続させること」です。そのためにすべての企業が避けて通れないのが、事業承継です。
しかし、多くの企業でこの事業承継が思うように進んでいないことは、皆様もご存じかと思います。
今回は、私が事業承継を支援したある企業様(A社)の事例を紹介します。
目次
支援前開始前の会社の状況
A社は、某県で建設業(土木・建築)を営む、業歴60年超の会社です。
NBC支援開始前の会社の状況をまとめると以下の4つです。
- 売上は10億円前後をキープしているものの、収益性は毎期右肩下がりで、直近3期連続営業赤字と低迷している。
- 借入金は5億円。借入金月商倍率が6ヶ月にまで膨らんでいる。
- 業績の改善を期待して5年前には大手建築会社での経験がある方を常務取締役に、4年前にはメインバンクの支店長経験者を取締役に迎えたが、まったく業績改善の兆しが見えない。
- 57歳の4代目社長は、65歳までには息子へ承継したいと思ってはいるが、現在の収益性と借入金の状況では事業承継どころではなく、
どうしたものかと思い悩んでいる。
改革スタート
このような状況の中、65歳での事業承継をゴールとして大幅な経営改革が始まりました。
業績管理・原価管理の強化
改革のスタートと同時に始めたのは、業績管理・原価管理の強化です。
最初こそ数名のベテラン現場担当者から反発が出たものの、原価管理の意味合いを担当者が理解し、その効果が見えてくると、その反発もどこかへ消えてしまい、いつしか担当者全員が競争するかのように、利益アップに取り組むようになっていきました。
社内の会議も非常に活発になり、各担当者から
「目標利益までいくら不足しているのか。」
「対策はどうするのか。」
などの積極的な発言も出て、自ら考えて行動するようになっていきました。
しかも、営業利益や限界利益などの全社・部門の業績と給与・賞与を連動させることで、ますます社内のモチベーションが上がっていきました。
改革が進むにつれ、社内に計数を軸とした会話が多くなり「目標は達成することが当たり前」という社風に大きく変化し、毎年の目標営業利益も達成・超過するようになりました。
後継者を人事評価制度構築のための運営責任者に
そしてこの段階で、後継者に、上記の会議や、業績と給与・賞与が連動する人事評価制度を構築するための委員会の運営責任を担ってもらいました。
その役割を通じて後継者は社員からの意見聴取やアドバイス・指導の機会を増やし、社員との関わりを深めながら、関係を強化していきました。
また、これと並行して経営者として必要な計数知識やリーダーとしての考え方なども習得してもらいました。
8年後無事事業承継成功
このようなことを繰り返し繰り返し徹底し続けて、8年目――。
着実に成長し続ける後継者とそれを支えるがっちりと信頼関係で結ばれたリーダー達、という体制が見事に築かれ、営業利益は毎期黒字計上できるようになったA社。
経営のバトンは、当初の目標どおり4代目社長が65歳の年に、無事、承継されました。
承継後2年が経った今でも、後継者が自信を持って経営にあたっていることで、2年連続で過去最高益を更新しています。
5代目社長のもと、A社の経営は今も順調です。
まとめ
『事業承継においては、資産の承継よりも経営の承継が難しい。』と言われますが、
それは業績の維持・向上はもちろんのこと後継者への教育、社員との信頼関係構築、社内のモチベーションアップなどすべてを同時に行っていかなければならないためです。
現社長お一人では苦戦することも多々あるこの『事業承継』にもしお悩みでしたら、ぜひお声掛けください。
また、1~2月に全国各地で勉強会も行っておりますので「我が社の承継には、まず何をするべきか。」のヒントをつかむために、お気軽に足を運んでいただければ幸いです。
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この記事の著者
NBCコンサルタンツ株式会社
NBCコンサルタンツ株式会社は1986年の創業以来、会計事務所を母体とする日本最大級のコンサルティングファームとして数多くの企業を支援しております。4,290社の豊富な指導実績を持つプロの経営コンサルタント集団が、事業承継、業績改善、人材育成、人事評価制度など各分野でのノウハウをお届けします。