緊急事態宣言が発令された4月ごろから税務監査をリモートで行うことが可能かという質問を頂いております。
帳簿や書類を電子化すれば可能ですが、なかなか電子化が進んでいません。
今回は、なぜ電子化が進まないのか、その原因になっている電子帳簿保存法の今後の展望についてお伝えいたします。
目次
税務監査をリモートで行うことは可能か?
緊急事態宣言が発令された4月頃から、お客様に「税務監査をリモートで行うことは可能でしょうか?」というご質問を多くいただきます。
答えは、半分「イエス」で半分「ノー」です。
弥生会計などの会計データや、その元となる「帳簿」「書類」を“電子化”し、メールなどで共有いただければ、Web会議システムや電話のやり取りでリモート監査を行うことは可能です。
しかし“電子化”に対応しているお客様はごく一部です。電子化がなかなか進まない理由は、大きく2つあります。
税務監査に必要な帳簿や書類の電子化が進まない理由
[1]『電子帳簿保存法』の適用要件が難しく、導入できない。
『電子帳簿保存法』とは、端的に言うと、税務署に事前(適用を受けようとする事業年度の3ヶ月前の日まで)に届出を提出することにより「帳簿」「書類」を電子データとして保存することを認める法律です。
電子帳簿保存法の概要や届け出の様式は国税庁の「電子帳簿保存関係」を参照してください。
「帳簿」とは、売上帳・仕入帳などを指し
「書類」とは、決算書類や納品書・請求書などのことを指します。
一見とてもわかりやすそうな制度ですが
- スキャンによる保存が認められない
- 原本の破棄が認められない
- 領収書などの保存に関して上限金額(3万円)が設定されている
など、実務に即した内容とは言い難かったため、これまであまり普及していませんでした。
しかし、度重なる改正により上記のような規制は緩和され、それに即した形でIT技術も進歩し、現在では、より取り組みやすいものとなってきています。
[2]結局は「紙」で保存しておく必要が生じ、電子保存(スキャンやPDF化)することが二度手間となる。
確かに『電子帳簿保存法』の適用がない場合、二度手間になってしまいます。
しかし、今回の持続化給付金の申請などに見られるように、未訪問型の手続きが推奨され、その動きは今後増々進んでいくことが予想されます。
「帳簿」「書類」を電子保存しておき、必要な時にすぐに取り出せるようにしておくことは、今後、経営を行う上で必要不可欠な情報管理の手段となります。
また、PDFデータにおける課題だった「検索がしづらい・できない」という点についても、最近ではPDFの文字を認識する機能が付いた高速スキャナーなどを比較的安価で購入できるようになってきています。
弊社でも試してみたところ、おおむね7割程度の文字が認識され、検索もできました。「紙の実物を確認した方が早い」という点も改善されてきていると感じます。
まとめ
「帳簿」「書類」の保存は、法律により7年(あるいは9年または10年)と定められており、そのスペースの確保に頭を悩まされている経営者の方は多いのではないでしょうか?
『電子帳簿保存法』および「帳簿」「書類」の電子保存は、導入を即決できるほどの環境が一般的に整っているとは現時点では言い難い側面もあります。
しかし、導入を検討すべき準備段階には入ってきており、今後の経理・事務業務においては重要なキーワードとなりますので、ぜひご留意いただければと思います。
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この記事の著者
NBC税理士法人
「縁のあったお客様は絶対に倒産させない。」という志のもと、税務面、経営の全般的なサポート業務を行っています。顧客訪問数1200社以上のノウハウをもとに、会計監査などの税務相談や、事業承継、新規開業、相続などさまざまなノウハウを配信しています。