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幹部候補育成の基本の7ステップ

2022.04.14

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右腕や参謀とも言われ、円滑な会社経営に欠かすことのできない存在である幹部役員。

後継者の育成などに追われ、幹部候補の育成はついつい後回しになっていることもあるかもしれません。

この記事では、育成や選定がうまくいかない原因を紹介するとともに、それらを挽回するための基本のステップ3つを紹介します。


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目次

「幹部」の言葉の意味を知る

幹部教育を行ううえで、そもそも「幹部」の定義があいまいになっている経営者も多いのではないでしょうか。当たり前のこととあまり気に留めてこなかった幹部の定義と業務を振り返り、教育内容を説明します。

幹部とは一般的に「組織の執行部門で、組織運営の意思決定と指揮・命令を担う人材」のこと。企業でいえば、経営者や役員、もしくは経営者や役員から直接指示を受ける上級管理職を指します。

ただし、ここで気をつけておきたいのが「幹部」ではなく、「経営幹部」という枠組みで人材をとらえる場合があることです。

経営幹部とは「業務執行権を持つ取締役・執行役などの人材」のことで、通常は「役員」を指すと解釈しておけばよいでしょう。

「経営幹部は会社の事業全体に目を配る」ことが求められるので、たとえ上級管理職であっても、自分が担当する部署の業務のみ統括しているような場合は経営幹部に含まれません。逆に会社によっては全社規模のマネジメントや目標達成にかかわっている管理職もいて、その場合は経営幹部の職責を担っていると考えます。

今回の記事では、この「経営幹部」となる候補の育成・教育方法について解説していきます。

幹部教育の一般的な内容

経営者が幹部候補に期待する心構えや能力として、

  • 幹部としての役割や責任の理解と自覚
  • 大局的・俯瞰的な視点
  • 主体的に考えて行動する実行力
  • PDCAをしっかり回せる管理力
  • 部下から信頼・尊敬される人間力

などが挙げられると思います。

これらを身につけさせる一般的な幹部教育は、一般に現場経験を主体にしたOJTと、テキストなどを利用したOFF-JTに分かれます。

幹部に求められる会社としてのマネジメント力は、各事業のマネジメント力があって初めて成り立ち、それぞれ現場での経験がないと身に付くものではありません。事業戦略、人材配置、商品・サービスの開発やマーケティングなど、事業全体をどうマネジメントしていくか、OJTを通して学ばせることが必要です。

また、OFF-JTとは、仕事を離れてのトレーニングのことを指します。OJTで学んだことを確認し、新たな気づきを持たせる過程、また、仕事を取り回す上で知っておいた方がよい新たな知識を学ぶ機会となります。

外部から専門の講師を招いて行うほか、会社の経営理念や経営計画をおさらいする場でもあることから、経営者自ら講師を務めることも必要でしょう。

自社の現状や将来像など、幹部候補と率直な意見を出し合って語り合い、共に会社をつくっていきたい意思を示すことで、幹部候補のモチベーションを上げる効果も期待できます。

幹部候補育成でつまずきやすいポイント

自社の将来を左右するほど重要性を持つ幹部候補育成。それはわかっているものの教育・育成がなかなか進まず、「この悩みってウチだけ?」と頭を抱えている経営者もいるようです。ここで、幹部候補育成があまりはかどっていない会社に共通するつまずきポイントをご紹介します。

後継者育成などで手が回らない

事業承継の時期を見据え、まずは後継者育成から始めたという経営者も多いでしょう。それでなくても会社のトップとして多忙な業務に追われ、幹部候補育成まで手が回らない状況になってしまうのはよくわかります。

また、幹部が学ぶべきテーマがマネジメントや経営知識など多岐にわたるため、身に着けるまでに時間がかかってしまいます。現場の人間から昇格させることが多く、幹部の育成期間中の周りへの負担もかかるため育成への取り組みが後回しにされがちになってしまいます。

しかし、後継者の右腕となる幹部は、身近な相談相手、良きパートナーとして後継者の孤立を防ぐ欠かせない存在です。

後継者育成と同等に扱い、並行してその育成に力を入れていくべきです。これは幹部育成の優先度を低く見積もっている状況ですから、急ぎ考えを改める必要があります。

幹部候補の選定基準がわからない

人柄、業績や能力など、幹部候補選定のための複数の物差しがあり、どの指針を優先すればよいかわからないという経営者も多いようです。

また、社員数が少なく、適性のありそうな社員が見つけられないといった、中小企業ならではの悩みもよく耳にします。

幹部候補には、これまで培ってきた専門分野のスペシャリストとしての能力のほかに、ゼネラリストとしての総合的な能力が求められます。その総合力を判断する基準には以下のようなものがあります。

幅広い知識

経営やビジネス全般の知識のほか、社会・経済・文化など、ジャンルを問わない知識

胆力

対立や競争などによって予期せぬ壁にぶつかることも想定されるため、情報を集め一元的ではなく総合的な視点からくじけず業務を推進できる能力能力

柔軟力

企業を取り巻く環境の変化が激しく多様化も進んでいるため固定観念にとらわれることなく柔軟に適切な判断を下す能力

マインド

ちょっとした失敗でもくよくよしないメンタルが強い能力

論理的思考力

物事や状況を論理的にとらえ、対応すべき施策を具体的に構築できる能力

統率力

部下を取りまとめ、組織を率いるためのリーダーシップ。誰からも信頼される人間性

コミュニケーション力

部下だけでなく、社外の人たちと良好な関係を構築し、ビジネス環境を整えられる能力

調整力

利害の異なる関係者同士の意見に耳を傾けて調整し、問題点を解決に導く能力

行動力

自ら行動して、周囲を巻き込みながら目標達成に向かって進む実行力

自社の教育方法が適切なのか自信が持てない

経営者はビジネスのプロではあるものの、教育・育成のプロとまではなかなか言い切れないようです。そのため、自社の教育方法が適切なのか自信が持てないという話をよく聞きます。

原因としては、教育方法の疑問や不安を相談できる相手が身近にいないことや、教育というものを難しく考え過ぎてしまっていることが挙げられます。

お伝えしたように、教育は一般に現場経験を主体にしたOJTと、テキストなどを利用したOFF-JTの大きく2つに分かれます。

中でも現場経験を通して育成していく方法が最も重要であり、効果も上がるでしょう。自社の業務ですから、それぞれの担当者が自信を持って教えることができるはずですし、OFF-JTで外部講師に依頼する場合は、客観的な視点でOJTのフォローを担ってもらうことが可能か確認してみることも大切です。

以上、幹部候補育成の代表的なつまずきポイントを確認しましたが、次が本題です。幹部候補育成を軌道に乗せるために大切な3つのステップを紹介します。

これらのステップのいずれかがあいまいになっていたり、手を付けられていなかったりすることで、つまずきの原因となっている場合もあるのです。

幹部候補育成を軌道に乗せるための7ステップ

会社の中枢を担う幹部候補。その育成は今の時代に求められている会社のあり方と大きく関係してきます。ひとつずつステップを踏んでいくことで、育成のコツが見えてくるはずです。

ステップ1 育成・選定の方針を明確にするためビジョン再確認

まずは自社の現在のビジョンと、幹部候補がそれを認識しているか、またご自身が認識しているかを再確認することから始めましょう。ビジョンは会社経営のコアになるものであり、それに応じて幹部候補の選定方針や育成プログラムが変わるからです。

また、次期後継者の代でビジョンが変わる可能性もあるでしょう。変える必要があるのか、変えるのであればどこをどう変えるのか。会社の目指すべき将来像について、次期後継者候補だけでなく、現場を知る幹部候補も交えて話し合います。

そのビジョンに応じて選定される人材や育成内容があらためて絞られてくるはずです。そして選定された幹部候補に当事者意識を抱かせ、教育・育成に対するモチベーションアップを図るのです。

なお、ビジョン変更について検討する際

  • ①会社をどうしたいか
  • ②会社はどうあるべきか
  • ③そのビジョンに無理はないか

この3つを念頭に置いて考えることが必要です。

会社をどうしたいか

「①会社をどうしたいか」というのは、次期後継者の率直な考えを整理していけばよいでしょう。これまで以上に社会に貢献できる会社にしたい、社員が働きがいを感じられる会社にしたい、不正のない透明性の高い会社にしたいなど、いろいろな考えがあると思います。

そして、これらを実現するために次に考えるのが「②会社はどうあるべきか」になります。

会社はどうあるべきか

企業は「利益を追求するための組織」と考えられます。しかし、それだけが前面に出てしまうと、社内外を問わず人心掌握はできません。

では、会社はどうあるべきか? 江戸時代の近江商人の教えに「買い手よし、売り手よし、世間よし」の「三方よし」というものがありましたが、これは現代にも通じるものがあると思います。社員と家族、協力会社の社員とその家族、お客さま、地域社会、そして株主と、幅広く会社にかかわる人たちの幸せを追求することが、企業としてのあるべき姿といえるのです。

売上などの計数ではなく、ステークホルダーの幸せを中長期的に実現するための目標。こういった考えを基に自社らしいビジョンを策定するのがよいでしょう。

そのビジョンに無理はないか

そして最後に「③そのビジョンに無理はないか」について、検証を行わねばなりません。時代背景や会社の総合力を考えて、あまりにも現実離れした夢のまた夢のようなビジョンでは、実際に働く社員が息切れしてしまい、モチベーションも上がりません。

逆に簡単に到達できるようなビジョンでは、会社や社員の成長が止まってしまいます。ビジョン設定は「少し背伸びすれば到達可能である」ところを目安とすれば達成感を得やすく、次のモチベーションにもつながっていくはずです。

こうして自社のコアとなる新たなビジョンが決まれば、育成・選定の方針も明確になります。

OJT、Off-JTのどこを強化すべきか、ビジョンにより幹部候補に最適と考えられる人材の強み・弱みはどこか、論理的思考力はどうか、コミュニケーション力はどうかなど、こうしてひとつずつチェックしていくことで、幹部候補育成のノウハウがより具体的になってくるでしょう。

ステップ2 社内周知と幹部育成のゴールを設定

幹部育成に必要なのは、社内全体の理解と協力です。幹部候補に選出された人は、教育期間中実務を離れることも想定されます。そのため、他社員の協力が不可欠になってくるため、なぜ幹部を育成するのかという理由を明確にし、社内の混乱を防ぎましょう。

さらに、幹部育成に携わる人物に対しては、前述のビジョンによって決まった幹部の条件を提示し、目指すゴールを明確にしておきます。

ステップ3 幹部の条件・要件の定義

具体的にどのような人材になってほしいのか、幹部の条件や要件を整理します。幹部の要件は様々ですが、一般的にはリーダーシップ力、マネジメント力、経営管理の知識です。

それぞれの要件は

  • リーダーシップ力:経営判断力、信頼力、先見力、ビジョン設定・浸透力 など
  • マネジメント力:課題解決力、実行力、戦略 など
  • 経営管理の知識:組織運営力、財務、労務、コンプライアンス、法律 など

ステップ4 次の世代の組織図を描き候補者の選抜

次に後継者候補を含めて幹部候補を複数選出し、それぞれの将来のポストを仮で決めてみましょう。完璧な候補として決めなくても大丈夫です。

幹部の選抜方法は、顕在化した能力で判断しないように、幹部候補を全員リストアップし徐々に絞ったり、自薦で募ることをお勧めします。

後継者候補をトップに置き、組織図内の各部署にどんな人材を配置すれば自社がうまく機能するかが見えてくるはずです。人材配置は今の能力だけでなく、伸びしろも見据え、総合的なバランス配置にしてください。候補者の数だけ将来の会社の顔が見え、新しいビジョン、そして教育・育成方法とのマッチングも考えやすくなります。

将来の組織図の見える化

003_組織図イメージ (1)後継者候補、幹部候補それぞれに考えられる組織図を描くと、将来の自社が“見える化”でき、育成内容と方法が明確になります。

前述のように、後継者の右腕となる幹部は身近な相談相手であり、後継者の孤立を防ぐ欠かせない存在です。経営陣と現場が乖離しないよう、現場を熟知した人材から幹部候補を選び、しかも目上の後継者にも率直に、遠慮せずに意見を言える人材が適任でしょう。組織図を利用して、その人材を選定していくのです。

ステップ5 トレーニング計画の設計と伝達

候補者が決まったら、本人の弱みや強みを踏まえどのような育成を行うのか育成の計画を立てます。なお、育成計画には、以下の2つを盛り込むとよいです。

知識を身につけるトレーニング

幹部に必要な決断力や実行力を磨くような研修や同じ立場で悩みを抱える人たちと交流をできる異業種交流会などできるだけ現状では習得できない知識や経験を取得する機会がある。

実戦経験を積ませるトレーニング

幹部は知識だけでは育成できません。そのため新規事業の立ち上げなど困難が待ち受けているであろうポジションや役職にあえて任命(=ストレッチアサイメント)して幹部としての実践経験を積ませる。

さらに、上記計画を実行する前に「なぜこれをやるのか」「なぜはあなたなのか」を伝える必要があります。なぜなら幹部候補者が厳しい環境の中でも意欲的に学び続けるには、動機づけと期待の伝達が欠かせないからです。

ステップ6 トレーニング実施とモニタリング

ステップ5で計画したトレーニングを実施します。幹部育成は長期間になる場合が多いため、根気よく実施し続ける必要があります。また実施していく上で社内では経験が不足している場合もあります。その場合には社外への協力を積極的に求めましょう。

またトレーニングはやりっぱなしではいけません。最初に設定したゴールに近づいているかの定期的なモニタリング、実施者本人の負担になりすぎていないかなど確認しフォローする体制を整えます。場合によっては定期的なストレスチェックやカウンセリングも必要になってきます。

ステップ7 フィードバックと改善案の検討

モニタリングの結果、問題や課題が発生した場合は改善策を検討します。育成の仕組み自体を見直したり、本人への動機づけを行ったり、仕組みと個人の両方の視点を持って改善策を検討します。

幹部を育てることは、組織全体を育てること

これまでの話でおわかりのように、右腕になる幹部を育てるには、会社の組織全体を育て、しかも時代に求められている姿に変貌を遂げていく中で育成が行われなければなりません。幹部候補育成のために特殊な教育といったことはあまり必要ありません。

丁寧にビジョンを見直し、共有する。そして、会社のあるべき姿に向かってOJTに取り組むなど、シンプルに考えればよいのです。逆に言えば、時代が企業に何を求めているかについて敏感に感じ取る力がなければ、幹部候補育成も間違った方向へ進んでしまいます。

現経営者、次期後継者、幹部候補間で対話を繰り返して「学習する組織」づくりを行い、その柔軟な体制の中で、会社も、幹部候補も成長していくことが理想でしょう。

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この記事の著者

NBCPlusオンライン編集部

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