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従業員エンゲージメントとは?高めるメリットと測定法

2022.03.23

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NBCPlusオンライン編集部

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INDEX

エンゲージメントとは

エンゲージメント(engagement)とは、英語の「誓約・約束・契約」を意味する言葉から生まれた考え方です。エンゲージメントには大きく分けて、人事領域における従業員エンゲージメント(ワーク・エンゲージメント)と、マーケティング領域における顧客エンゲージメントの2つがあります。

なかでも、従業員エンゲージメントは、組織や仕事の役割への前向きな関係性をもとに企業と従業員がともに必要な存在として成長していく方策として注目されています。

この記事では、従業員エンゲージメントについて詳しく説明します。

従業員エンゲージメントとは

1990年、ボストン大学心理学教授であったウィリアム・カーン(William Kahn)は、発表した論文の中で従業員エンゲージメントを次のように定義しています。

「組織で働く人々が自らを仕事上の役割に活かすこと」。エンゲージメントすると人は役割遂行において身体的(physically)、認知的(cognitively)、感情的(emotionally)に自己を用いて表現すること」

従業員エンゲージメントとは、一般的に「組織や仕事上の役割への愛着・思い入れ」とされています。論文発表当時は、トップダウン型のマネジメントが一般的でしたが、カーンは、従業員の感情や仕事への愛着、思い入れがパフォーマンスに影響すると考えました。

ワークエンゲージメントとは

従業員エンゲージメントと似た言葉にワーク・エンゲージメントがあります。

ワーク・エンゲージメントは2002年、オランダ・ユトレヒト大学のウィルマー・シャウフェリ (Wilmar B. Schaufeli)教授らによって次のように定義されています。

「仕事に関する前向きで充実した精神状態で、活力(vigor)、献身(dedication)、没入(absorption)を特徴とする」。

ワーク・エンゲージメントは、厚生労働省が発表した「平成30年度版労働経済の分析」でも取り上げられています。その中で、ワーク・エンゲージメントとは、これを構成する次の3つの要素が揃った状態として定義されています。

  • 「仕事から活力を得ていきいきとしている」?活力
  • 「仕事に誇りとやりがいを感じている」?熱意
  • 「仕事に熱心に取り組んでいる」?没頭

顧客エンゲージメントとは

顧客エンゲージメントとは、マーケティングの領域で、顧客の興味や注意を引きつけ、企業と顧客の結びつきを強めることを指します。「企業・ブランドに対する顧客の思い入れ」とも言えるでしょう。企業やブランドに向けられる顧客の行動は、商品やサービス購入の動機づけ範囲を超えて現れるとされます。顧客の具体的な行動の例としては、次のようなものがあります。

  • 口コミ活動
  • 推奨
  • 顧客と顧客とのインタラクション
  • ブログ作成
  • ショッピングサイトへのレビュー記入

従業員エンゲージメントを高めるメリット

従業員と企業が得られる5つのメリット

従業員エンゲージメントを高めることで、従業員、企業双方にさまざまなメリットをもたらします。ここからは、その具体的な5つのメリットについて紹介します。

メリット1 優秀人材の定着・確保

人手不足が言われる昨今、人材の流出は企業にとって大変な損失です。従業員に「組織や仕事上の役割への愛着・思い入れ」があれば離職率を低下させ、定着率を向上させることが期待できます。

メリット2 仕事のパフォーマンス向上・生産性向上

従業員エンゲージメントが高いということは、職務に対する満足、前向きなモチベーションが強く現れた状態を指します。より良好な健康状態や積極的な勤務態度、組織への帰属意識が強まれば、仕事のパフォーマンス向上につながります。その結果として、生産性向上が期待できます。

メリット3 業績アップ

従業員エンゲージメントと企業の業績とに間には、密接な関係があるとされます。従業員エンゲージメントが高い優秀な人材が定着し、生産性が向上すれば、それにともなって業績が上向くことが期待できます。

メリット4 身体的健康とメンタルヘルスの維持・向上

従業員エンゲージメントが高まると、心身の健康、メンタルヘルスに良い効果があると言われています。「ワーク・エンゲージメントの高い従業員ほど心理的苦痛や身体愁訴が少ない」という研究結果も報告されています。

メリット5 採用コストの低減

企業経営にとって、人材採用にかかるコストは大きな負担です。優秀人材が定着・確保できれば、人材採用にかかるコストを低減させることができ、教育・訓練にかかった時間的・金銭的投資の回収見込みが高まることが期待できます。

メリットまとめ

このように、従業員エンゲージメントが低いと、企業が被る損失は計り知れないことがわかります。それだけ、従業員エンゲージメントを高めるメリットには大きなものがあるのです。

従業員エンゲージメントが注目されている背景

背景1 業績アップのため

従業員エンゲージメントが注目され始めたのは、1990年代のアメリカです。その背景には、好業績への飽くなき追求があったとされます。

好業績の実現は、アメリカの企業経営者はもちろん、同国の産業の国際競争力復活を目指した当時のアメリカ政府にとっても重要な課題だったとの研究報告もあります。

2000年代に入って以降、欧米企業で定着した従業員エンゲージメントの考え方は日本にも広がりはじめ、徐々に取り入れられるようになりました。

アメリカ最大の調査会社ギャラップ社が2021年に発表した、155カ国のビジネスパーソンを対象に行った従業員エンゲージメントについての調査では、「エンゲージしている人」の割合は、アメリカ・カナダが34%であるのに対し、日本を含む東アジア地域は14%と低い割合であることがわかりました。

また2017年に発表された同調査では、日本では「エンゲージしている人」の割合が6%と、調査対象の139カ国中132位という結果でした。

日本企業にとって、従業員エンゲージメントの向上は急務と言えるでしょう。

従業員エンゲージメントスコアの推移(%)

008_エンゲージメント_スコア出典:Gallup“State of the Global Workplace 2021 Report”をもとに作成

「エンゲージしている人」の割合(%)
(Gallup “State of the Global Workplace 2021 Report”) ※小数点第一位以下を四捨五入した数値

1位 アメリカ・カナダ 34%
2位 ラテンアメリカ・カリブ海諸国 24%
3位 南アジア 24%
4位 東南アジア 23%
5位 独立国家共同体(CIS) 23%
6位 東ヨーロッパ 21%
7位 オーストラリア・ニュージーランド 20%
8位 サハラ以南のアフリカ 16%
9位 中近東・北アフリカ 16%
10位 東アジア 14%
11位 西ヨーロッパ 11%

背景2 人手不足

日本では、少子高齢化による生産年齢人口の減少によって労働供給の制約という問題を抱えています。これによって人手不足が慢性化し、将来わたって人手不足が続く予測され、企業の間で優秀な人材の争奪戦がますます激しくなっていくと考えられます。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構が2019年9月に公表した「人手不足等をめぐる現状と働き方等に関する調査」によると、企業は雇用人員の過不足で、正社員の6割が不足と回答しています。

また同調査では、人手不足の会社経営への影響として「既存事業の運営への支障」「技術・ノウハウの伝承の困難化」「既存事業における新規需要増加への対応不可」などを挙げていることが分かりました。

このような課題を解決するためには、優秀な人材をいかに長期にわたり定着させるかが、大きなポイントとなるでしょう。

人手不足を緩和するための主な対策
(独立行政法人 労働政策研究・研修機構「人手不足等をめぐる現状と働き方等に関する調査」)
※複数回答(n=3,140)

1位 求人募集時の賃金を引き上げる 68.1%
2位 中途採用を強化する 66.6%
3位 定年の延長や再雇用等による雇用継続を行う 59.2%
4位 求人募集時の賃金以外の労働条件を改善する 49.5%
5位 新卒採用を強化する 46.8%
6位 非正社員から正社員への登用を進める 37.5%
7位 現従業員の配置転換 32.4%
8位 訓練・能力開発による現従業員の業務可能範囲の拡大 28.1%
9位 業務プロセスの見直しによる効率性の強化 27.7%
10位 離職率を低下させるための雇用管理の改善 27.2%

背景3 働きがいの向上がますます重要な企業課題に

人手不足が進み、優秀な人材の確保の重要性が増すなか、働きがいの向上がいままで以上に企業の重要課題となっています。この課題を解決するためには、企業は就労を望む人に対し、「働きがい」をもって働くことができる環境を整備することが求められています。

「働きがい」をもって働くことは、従業員エンゲージメントは高まります。仕事に対する愛着や思い入れが高まるほど生産性向上の好循環が生まれ、企業の持続的な成長も可能になるでしょう。

背景4 グローバル化・デジタル化

いま、日本企業にとってグローバルな成長を牽引できる経営人材をはじめ、優秀なで多様な人材の確保が課題となっています。

また、デジタル化はGAFAに代表されるような「勝者独り占め=winner takes all」のビジネスモデルを出現させ、日本企業にとっても、イノベーション創出をリードする人材の確保がますます重要になっています。

背景5 新型コロナウイルス感染症拡大への対応

働き方改革やコロナ禍の影響によって、時間・場所にとらわれない就業環境の整備が課題としてクローズアップされました。リモートワークの環境にあっても、コミュニケーションやアイデアの創出など、従業員個人や組織の活性化が求められるようになったのです。

企業と従業員との直接的なコミュニケーションの機会が減る中、従業員エンゲージメントをいかに保つかが課題となっています。

従業員エンゲージメントを高める方法

エンゲージメントを高めるには、「働きがい=働きやすさ×やりがい」を高めていくことが重要です。目に見えやすい「働きやすさ」に加え、目に見えにくい動機付け要因である「やりがい」も併せて高めていく必要がある、ということです。そのような従業員エンゲージメントを高める方法を紹介します。

施策1 公正な評価制度

公正で納得感のある人事評価制度は、従業員エンゲージメントに必要不可欠です。「昇進・昇給などで正当に評価されている」と従業員が感じることができれば、従業員エンゲージメントは高まります。

これによって「雇用主に抱く満足感」「必要最小限度を上回る努力」「雇用主の下にとどまろうとする意図」が高まることが期待されます。

施策2 教育・訓練機会の充実

企業は従業員に対して公正な教育や訓練機会を提供し、それを強化することが求められます。
これによって、「雇用主に抱く満足感」「雇用主の下にとどまろうとする意図」の促進と向上が期待できます。

施策3 経営戦略・ビジョンの明確化と共有

従業員エンゲージメントは、企業の経営戦略やビジョンに対する共感がなければ生まれないとされています。

企業が経営戦略・ビジョンを策定・明確化し、その目指す方向性を従業員と共有することで、従業員は企業の将来に対して安心感と有望視することが可能になります。その結果、従業員エンゲージメントの強化が期待できます。

施策4 リーダーシップの発揮・育成

リーダーシップは指導的立場にある従業員すべてに発揮することが求められるとされます。また、従業員エンゲージメントの観点からも、リーダーへの信頼感は不可欠な要素と考えられています。

上司にとっても、従業員エンゲージメントを高めるための部下のリーダーシップ育成は、とても重要な役割となっています。

リーダーシップの発揮と育成によって「雇用主に抱く誇り」を強化することが期待できます。

施策5 従業員エンゲージメントを維持強化していく恒常的な組織文化の構築

従業員エンゲージメントを高めるためには、一時的な施策では十分な効果は期待できません。求められるのは、従業員エンゲージメントを長期的に維持強化していく恒常的な組織文化の構築です。

これを実現するためには、従業員の経営者・上司に対する信頼感が不可欠です。この信頼感を得るために、経営者・上司は従業員との良好なコミュニケーションを日常的に保つことが求められます。

公正で納得感のある人事評価制度や教育訓練機会の提供を、将来にわたって継続することが、企業に求められています。

施策6 ワーク・ライフ・バランスの推進

ワーク・ライフ・バランスの推進は、従業員エンゲージメントを高める重要な要素とされます従業員が組織や仕事上の役割に対し、愛着・思い入れをもって取り組むためには、心身とも健康であることが前提です。

コロナ禍の影響などによりリモートワークが普及したことで、ワーク・ライフ・バランスの推進はますます従業員エンゲージメントにとって重要となっています。ワーク・ライフ・バランスの推進によって、「雇用主に抱く満足感」「雇用主の下にとどまろうとする意図」が強まることが期待できます。

従業員エンゲージメントの2つの測定方法

エンゲージメントスコア測定

従業員エンゲージメントを測定する手段として、多く用いられるのがアンケート調査です。

質問項目による回答(yes/no)を5?10段階評価してスコアリングするのが一般的なようです。アンケート調査は一定の頻度で行い、部署間や時系列で比較し分析します。実施にあたっては、HRテックツールを活用する企業が増えてきました。

エンゲージメントスコアの高い企業では業績が良いだけでなく、離職率や製品やサービス品質上の欠陥について低い傾向がある、という報告もあります

ギャラップ社のエンゲージメントスコア測定のための12の質問項目

経済産業省が2019年3月に公表した「経営競争力強化に向けた人材マネジメント」では、ギャラップ社のエンゲージメントスコア測定のための12の質問項目が紹介されています。

その質問項目は以下の通りです。

Q1:仕事の上で、自分が何を期待されているかがわかっている
Q2. :自分の仕事を正確に推敲するために必要な設備や資源をもっている
Q3:仕事をする上で、自分の最も得意とすることを行う機会を毎日もっている
Q4:最近1週間で、よい仕事をしていることを褒められたり、認められたりした
Q5:上司または職場の誰かが、自分を一人の人間として気遣ってくれている
Q6:仕事上で、自分の成長を励ましてくれる人がいる
Q7:仕事上で、自分の意見が考慮されているように思われる
Q8:自分の会社の使命/目標は、自分の仕事を重要なものと感じさせてくれる
Q9:自分の同僚は、質の高い仕事をすることに専念している
Q10:仕事上で、誰か最高の友人と呼べる人がいる
Q11:この半年のあいだに、職場の誰かが自分の進歩について、自分に話してくれた
Q12:この1年の間に、仕事上で学び、成長する機会をもった

※この12の質問項目は、以下のように分類されています。
Q1~2:仕事をするための動機や環境が整っているかどうか
Q3~6:仕事に貢献しているか、どんな貢献をしているか
Q7~10:この「職場」で働く目的とチームの一員かどうか
Q11~12:この「職場」で働くことに伴う自身の成長性

これら12個の質問に対し、当てはまるかどうかを1点?5点の5段階評価で答え、集計します。

従業員エンゲージメント向上は優秀人材確保や生産性向上をもたらす。公正な評価制度創設、教育機会の充実を

従業員エンゲージメント(ワーク・エンゲージメント)とは組織・仕事の役割への前向きな関係性のこと。日本での取り組みは遅れており、エンゲージメント低下は企業に計り知れない損失をもたらす可能性があります。

逆に従業員エンゲージメントを高めることができれば、優秀人材の定着・確保、仕事のパフォーマンス向上・生産性向上、ひいては業績アップ、身体的健康とメンタルヘルスの維持・向上や採用コストの低減を期待することができます。

従業員エンゲージメント向上には「働きがい=働きやすさ×やりがい」のうち、目に見えやすい「働きやすさ」に加え、目に見えにくい「やりがい」も醸成する必要があります。

そのためには、公正な評価制度の創設、教育・訓練機会の充実、経営戦略・ビジョンの明確化と共有、リーダーシップの発揮・育成、ならびに従業員エンゲージメントを維持強化していく恒常的な組織文化の構築やワーク・ライフ・バランスの推進などが有効です。

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