目次
3月10日、アメリカのシリコンバレーバンク(SVB)が経営破綻しました。アメリカの銀行破綻としては2008年のリーマン危機で破綻したワシントン・ミューチュアルに次ぐ資産規模です。
続いて3月12日には、ニューヨーク州を拠点とするシグネチャーバンクも経営破綻。世界経済の先行きがより不安定になり、今後の動向が注視されています。
国内に目を向けると約3年ぶりにマスク着用が、屋内外を問わず「個人の判断」に委ねられることになりました。業界によって受け止め方は異なるでしょうが、コロナ禍で沈んだ経済の回復が期待されるところです。
一方、労働人口減少下における好況期は人の流動化が進むため、とりわけ中小企業は厳しい時期を迎えることになります。
さらに物価高、エネルギー価格の高騰、賃金アップ……等社会動向により、その収益性も一層苦しさを増しています。
「余力のある会社」とそうでない会社、「選ばれる会社」とそうでない会社の差は、より開いていくでしょう。
『御社の「採用」状況はいかがですか?』
さて「選ばれる会社」であるか否かは、その「採用」状況に顕著となります。
「採用」=「募集」と捉え、それ単体を課題と捉える企業も少なくありませんが、多くの企業において「採用」の課題は、人材の「定着」の課題と表裏一体です。
「採用」と一口に言いますが、【人材の確保と定着】と捉えなおすべきなのです。
その上で【採用】【教育】【評価】【定着】の4つの視点で状況を整理し課題を明確にすべきと考えています。
【採用】の視点から
そもそも「人事方針=どういう人材を求めていくか」は、「事業方針=どういう事業を行っていくか」と合わせて考える必要があります。
また、人事方針に基づいて獲得したい人材と、応募条件にミスマッチが生じていないかという視点も重要です。
中小企業の王道の採用方法は「給与・条件」より「やりがい」で集める方法です。昨今、応募者の求める給与待遇・労働条件が急激にあがってきています。
そのため、従来の「給与・条件」のままで「やりがい」を訴求しても、応募者に検討すらしてもらえないでしょう。
【教育】の視点から
労働人口が減少する業界や地域によっては、売り手市場が加速し、企業側と労働者側のパワーバランスがかわってきています。
例えば「仕事は厳しいものだ。」と価値観を押し付ける教育や、「管理者には負荷と責任が増していくものだ。」という観点の元に行われる教育やマネジメントスタイルは限界をむかえているように思います。
「一人ひとりの特性を理解しその集合体としていかに最適化がはかれるか。」という組織マネジメントに移行できるかどうかにかかっています。これまでのスタイルから変革する分岐点にあると言えるでしょう。
言葉では多くの経営者が知っていることではあると思いますが、実行できている企業はほとんどないように思います。
【評価】の視点から
事業方針・人事方針・組織方針が一貫しているでしょうか。「評価システムを見れば会社方針が分かる。」と言われるように、各段階での評価が最終的には経営者の意思につながるような評価のあり方でなければなりません。
経営者が常日頃から社員に説いている内容と、それが果たされた際の評価が言行一致していることが重要です。
【定着】の視点から
まず【定着】の視点における階層別・部門別の現状把握が重要ですが、これができている企業は少ないと感じます。
定着を考える際は、階層別(3年以内/中堅層/ベテラン層)および、部門ごとの傾向を見ることで、打ち手が見えやすくなってきます。
しかし、離職にはそれぞれの社員の複雑な思いが絡み合っており、ひとつの理由や動機で離職にいたることはありません。
ここは相手の心を慮ることとひたすら謙虚にPDCAを繰り返すしかありません。
自身の部署で万が一部門メンバーに離職者が出た際は「“主因は内にあり”と考えなければ。」と時には諌めることも必要です。
まとめ
中小企業の永遠のテーマである【人材の確保・定着】について、この経済変化のタイミングで、一度足をとめて見つめ直してみてはいかがでしょうか。
経営コラム関連記事
この記事の著者
NBCコンサルタンツ株式会社
NBCコンサルタンツ株式会社は1986年の創業以来、会計事務所を母体とする日本最大級のコンサルティングファームとして数多くの企業を支援しております。4,290社の豊富な指導実績を持つプロの経営コンサルタント集団が、事業承継、業績改善、人材育成、人事評価制度など各分野でのノウハウをお届けします。