企業の安定的な経営を実現するためには、資金繰りの管理と改善が欠かせません。資金繰りの改善を図る方法には、さまざまなものがありますが、いずれも計画的に実施する必要があります。また、資金の流れを常に把握できる管理体制の構築が、資金繰りの改善には欠かせません。
そこで当記事では、具体的な資金繰りの改善方法から、適切な管理を可能にするための体制構築の方法まで詳しく解説します。資金繰りの改善を図りたいと考えている中小企業経営者の方は、ぜひ参考にしてください。
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目次
1.資金繰りの改善に効果的な7つの施策
資金繰りとは、企業の資金の出入りを確認し、資金不足に陥らないよう調整することです。
企業の財務についての考え方として「黒字決算であれば資金不足の心配はない」というイメージを持つ方は多いでしょう。しかし、クレジットカード決済や掛取引による売上は、売上金の回収までにタイムラグが発生します。手元に資金がない状態で大きな支出があると、黒字であっても倒産の危機に追い込まれるケースもあります。
資金繰りが悪化する主な理由として挙げられるのは、キャッシュ・インの減少とキャッシュ・アウトの増加です。キャッシュ・インの減少に当てはまるのは、売上の減少や売掛債権の回収遅れなどです。また、キャッシュ・アウトの増加とは、前払金や貸付金の増加、仕入債務の早期支払いなどを指します。
資金繰りの基本的な意味については以下のリンク記事でさらに詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
資金繰りを改善する施策には、さまざまな方法があります。ここでは、資金繰り改善に効果的な施策の例を紹介します。
1-1.売掛債権を早期に回収する
基本的に、売掛債権が発生してから実際の回収までの期間が長ければ長いほど、資金繰りは悪化しやすい傾向にあります。
売掛債権を正確に把握して回収遅れ・請求漏れを防ぐには、売掛金台帳を作成するのがよいでしょう。取引先ごとに発生した売掛債権と回収予定日、実際の回収日を管理すれば、入金遅れを迅速に発見して顧客に連絡を取ることが可能です。
また、貸し倒れを防ぐための施策として、常に取引先の状況についての情報収集を怠らず、適切な売掛限度額を設定することが重要です。
1-2.余剰在庫を整理する
商品を仕入れる際は、売上代金の回収よりも仕入代金の支払いが先に発生します。余剰在庫が多ければ、その分資金繰りは悪化します。
資金繰り悪化を防ぐには、余剰在庫の圧縮が不可欠です。具体的な対策として、正確な棚卸し・商品ごとの回転期間の把握により、必要以上に在庫を抱えない仕組みを構築する必要があります。
棚卸しは取り扱い品目が多いと手間や時間がかかるため、在庫管理システムを導入するのも1つの手です。また、商品ごとの回転期間を把握できたら、仕入量の適正基準を定めることも必要となります。
1-3.不要な資産を売却する
使用していない設備などの不要な資産がある場合は、資金繰り改善のために売却・処分を検討するのが賢明です。
設備は保管スペースが必要であることや、管理・維持の人手がいることから、保有しているだけでコストがかかります。また「売却損を考えると売りたくない」という方もいますが、当期利益と相殺することで税金を減らすことも可能です。
管理・維持にかかるコストを削減するためにも、不要な資産は抱え込まないようにしましょう。
1-4.利益率を見直す
資金繰り悪化の代表的な要因として、売上の減少が挙げられます。しかし、売上が減少しても利益率を見直せば、企業に入る金額自体は変わらずキープすることが可能です。
具体的な対策には、原価を下げる、利益率の高い商品の販売に尽力する、などが挙げられます。自社で利益率の高い商品・サービスを把握できているのであれば、営業担当者に優先して販売するよう伝えましょう。
また、利益率が非常に低く、かつ改善の余地がない商品があれば、撤退を検討するのも1つの方法です。
1-5.リースを活用する
設備投資の際は、リースの活用も選択肢の1つとして検討するのがおすすめです。リースを活用すれば、投資時の大きな出費が不要となる上、リース料の金額が一定であることから、その後の資金計画が立てやすくなります。利息負担が必要となることを考えても、メリットは十分に享受できるでしょう。
また、自社で所有する設備をリース業者に売却し、売却した設備についてリース契約を結ぶ「セール・アンド・リースバック」という方法もあります。セール・アンド・リースバックを活用すれば、設備の売却代金を得ることで資金繰りの改善が見込めます。設備はリースによって継続して使用できるため、選択肢の1つとして頭に入れておくのがよいでしょう。
1-6.資金調達を実行する
資金繰りを安定させる方法として、資金調達を実行するのも有効です。資金調達方法には、金融機関からの借入や補助金・助成金の利用、新株の発行などがあります。
金融機関で受けられる主な融資は、金融機関がリスクを負って融資する「プロパー融資」と、自治体の保証協会がリスクを負って融資する「制度融資」です。また、その他にも手形割引や私募債などのさまざまな選択肢があるため、まずは金融機関の担当者に相談してみましょう。調達したい資金額や自社の状況、担保の有無などから、最適な選択肢を提案してもらえます。
1-7.投資は営業キャッシュフローの範囲内に抑える
企業活動に投資は不可欠です。新しい設備の導入やプロモーションなど、事業拡大に向けて投資すべきタイミングは数多くあるでしょう。
しかし、投資額が大きくなれば、その分資金繰りは苦しくなります。理想的な方法は、フリーキャッシュフローをプラスに保つため、営業キャッシュフローの範囲内に抑えられるよう投資することです。投資額が営業キャッシュフローを上回る場合、手元資金の利用や融資を受ける必要があります。
また、投資の際は、その投資が本当に必要かどうか、投資によりどの程度利益が見込めるかを慎重に検討することが重要です。
2.資金繰りの改善に欠かせない管理体制の構築
資金繰りを改善するためには、具体的な改善施策を実施することに加え、資金繰りの状況を随時モニタリングできる体制を構築することも必要となります。具体的な方法として、以下のような取り組みが有効です。
(1)資金繰り表を作成する
資金繰り表とは、企業の資金の出入りについてまとめた計画表を指します。売上の回収金額や仕入・経費の支出金額、借入金返済額などの予定を月ごとにまとめておくことで、資金不足を防ぐことが可能です。
資金繰り表の詳細については、以下のリンク記事でさらに詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
(2)会計ソフトを活用する
近年の会計ソフトは機能性が高く、クレジットカードや銀行口座の情報と結び付けておくことで、利用履歴・入出金明細などが自動でソフトに反映されます。月ごとの売掛金の入金予定額や顧客別の売掛金合計額、資金繰りレポートなども確認できるため、経理に時間を割けない経営者の方でも簡単に財務状況をチェックできます。
(3)税理士と連携する
税理士は税務のプロであると同時に、財務会計の専門家でもあります。資金繰り表の作成から投資・資金調達のタイミングの見極めまで、経営判断に迷った際のアドバイザーとしてサポートを依頼することがおすすめです。
まとめ
資金繰りの改善には、キャッシュ・インの増加とキャッシュ・アウトの減少が必要となります。そのためには、余剰在庫・不要な固定資産の処分や利益率の見直しなどが効果的です。また「入金は早く・出金は遅く」も資金繰りの改善に役立ちます。売掛債権の早期回収は、入金を早くするための方法の1つです。
資金の流れを常に把握できるように、社内で資金繰りの管理体制を構築することも経営の安定化には欠かせません。管理体制を構築するためには、資金繰り表を作成したり、会計ソフトを活用したりする方法があります。また、管理体制構築について不安を感じる場合は、企業会計の専門家である税理士などに相談してみてはいかがでしょうか。
- なぜ資金が増えないのかわからない。
- 追加融資・借り換えを繰り返しており、借入金が一向に減らない、むしろ増えている。
- ゼロゼロ融資の返済目途が立たない。
(令和2年度第3次補正事業再構築補助金により作成)
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